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保育士目線からの、ハミガキ習慣

こども園で働く保育士です。

過ごす時間の長い園生活。
学校よりも朝は早く・帰りは遅い未就学児。働く親を持つ子どもは、大半を集団生活の中で過ごし、平日は寝ている時間を除けば自分の家に居る時間よりもずっと長い。

給食もおやつも食べる、お昼寝もする、ということは。
生活習慣の中に「歯を磨く」ことも入っています。
園では歯科検診も行うし、保健指導としてのハミガキもある。毎日、給食後には歯を磨く。

この記事では、あくまでイチ保育士としての、歯磨き指導に対する私見を書きます。
私は歯の専門家でもなんでもありません。理想の教育論でもなければ、半分ボヤキの個人的な考えです。あしからず。




①未就学児の歯磨き指導(現実問題)

私の働くこども園では、30人クラスの部屋に手洗いの蛇口は3個しかありません。
単純計算で10人でひとつの水道を共有で使います。ここで、外から戻ったあとや食べる前の手洗いをする。給食後のハミガキももちろんここで。

ハイ、想像してみてください。
幼児がそこで、ハミガキする光景を。

3~5歳ぐらいを想定してみてね。

カオスな状況が浮かんだ方、正解です。

保育士である私も、こんな環境で皆んながみんな、しっかり奥歯や裏側までキレイに歯を磨けているなんて思っておりません。
歯を磨くという「習慣」さえ身に付いていれば、それでいいと思ってます。

現実には、
水をコップに落として水遊びをしている子
歯ブラシを舐めナメ or 噛みカミして終わりの子
ぐちゅぐちゅぺの水を鏡や蛇口に吹きつけて遊ぶ子
自分の歯ブラシで何故かシンクをお掃除する子
水の出口を指で押さえて飛び散る水を浴び楽しむ子
等々。
(ちゃんと磨いている子もいます。中には、の事例。)

30人対1人の先生で、仕上げ磨きなんてできるはずもない。食べる方を見るだけでも大変なのに。しかも掃除と片付けも並行しながら、だ。

食べる早さや食べ終わる時間が子どもによって違うので、そこまで水道に行列ができて並ぶ程ではないが、後ろに待っている子が複数いれば、交代を急かさないといけない場合もある。
すべての子がゆっくり丁寧に、隅々まで歯を磨くのは至難の業だ。

水は子どもにとって魅力的な遊びのひとつだからね

歯の正しい磨き方や仕上げ磨きは、朝晩に家庭でやってもらうもの。だと、少なくとも私はそう考えている。
園では、ハミガキの「習慣づけ」だけで精一杯なんです。

未就学児なので、食べ終わったらコップと歯ブラシを持って水道の前に行き、「ハミガキっぽい行為をしようとする」だけで合格点。それぐらいで勘弁願いたい。

朝の登園時、口の周りにチョコパンだかクリームパンだか、ベッタベタに付いたまま来る子だっているのにさ。
求められすぎても、現実問題として無理なものは無理。
中高生だって、お昼に歯磨きなんてしないわけだし。



②コロナ禍での歯磨きの位置付け

コロナの時代、3年近く園生活から歯磨き習慣は完全に消え去っていました。
子どもも、大人も、原則禁止。理由は、飛沫感染防止のため。
ぐちゅぐちゅぺの水が、シンクに広がること・水道の蛇口まで飛び散ることで次に使う人が感染する恐れがあるから。

虫歯予防とコロナの感染防止、天秤にかけたらそりゃあ無くなりますよね。

個人の虫歯を誰かに移すことはほぼないけれど、保菌しているコロナは人に移すかもしれない。虫歯では死なないけれど、コロナなら死ぬかもしれない。
そういう理由で、ハミガキは給食当番とともにこども園から排除されていました。

今では復活しています

当時、トイレも手洗い場も・机もおもちゃも共有している集団生活で、目に見えない菌との闘いは本当に大変だった。消毒・消毒・消毒、の日々。
手が荒れまくってボロボロになった。

年齢的に、おもちゃを口に入れて舐める子、咳やくしゃみで口を覆えない子、おもらしする子、鼻をほじる子、パンツに手を突っ込んでお尻を掻く子、たちがわんさかいる現場ですから。

あー。あの時代にはもう戻りたくない。(ボヤキ終了)


③すべき理由を伝えることが教育だと思う

先生という立場である以上、毎日給食後には「○○ちゃん、歯磨きした?」と促したり・確認したりは、もちろんします。

でも、中にはやってないのに「やった」と嘘をつく子や(歯ブラシ全然濡れてない!)、「やりたくない」「嫌だ」と言う子もいます。

そんな時、私はいつも
「歯磨きなんて、別にやらなくても先生は全然困らないからいいんだけど。でも、虫歯になって歯医者さんで痛いことされたり抜かれたりして困るのは○○ちゃんだよ。歯がなくなったら、美味しいごはんも好きなお菓子も食べられなくなるけど、それでもいいならしなくてもいいんじゃない?」
と言います。

そしたら、大抵の子はやりますね。(笑)
冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、自分のための大切な習慣であることを分かってもらうためです。

虫歯なんて、困るのは本人だけですから。
(と、その親ぐらい?)

「やりなさい」「やらなきゃダメ」と言うだけじゃ、教育にはならないと私は思う。
何故それをすべきなのか、その意味や理由をきちんと伝えることが大事。

嫌だとしても・メンドクサくても、それをやる意味は何なのかやらなければ誰にどんな困り事が起こるのか、幼い子どもでも自分で納得すれば習慣化できるようになります。(ちゃんと正しい方法で行えているかは別として)

トイレのスリッパは、なぜ揃えて脱ぐべきなのか?
脱いだ靴は、どうして靴箱に入れなきゃいけないのか?
食べたあとは、なぜ着替えなきゃいけないのか?
外遊びから帰ったら、手を洗う理由は何なのか?
遊んだおもちゃは、なぜ元の場所に片付けないとダメなのか?

保育士が教えることは、こんなことばかりです。

しかも、相手はこの世に生まれてたった数年の、幼い子どもたち。数回言っただけで簡単に身に付くはずもない。毎日、毎日。何度も、何度も。
だから、きちんとできた時には、思いっきり褒める。
なんで?と聞かれれば、その理由をちゃんと分かるように説明する。

歯磨きだってなんだって、同じこと。
何かを習慣にすることは、子どもも大人も容易いことではないからね。日々の積み重ね、それに尽きる。
だから私は、今日もまた、子どもたちとしっかり根気強く向き合うのだ。

よーっしゃ、お仕事がんばるか! おしまい!

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