思考から感情へ 導かれる行動
第39週 12月29日〜1月4日の記憶。 それを探る試みです。
一年間のルドルフ・シュタイナー超訳に挑戦中です。
今週は、年末年始をまたぎます。今年一年、あなたは非常に成長しました。そして、自分自身に与えられているものも分かってきました。そして、“来年の計画”、なども立てられてるのではないでしょうか。そのときにあなたの感情をベースに動けるようにヒントが届いています。
では、読み解いてまいりましょう。
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大いなる啓示に身をゆだね
わたしは、大いなるものの光を得た
思考のチカラ、それは成長し
自分自身を明らかにする
そして、わたしの自意識は
考るチカラから感情を呼び覚す。
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行動の前に感情がある
感情の役割を考察すると、感情は単なる生理的な反応以上のものであり、あなたの価値観や存在意義に深く関わっていることがわかります。哲学や心理学でも、感情がどのように倫理観や意思決定に影響を与えるかについて多くの示唆があります。感情による健康的な表現や受容が幸福に寄与するものとされているのです。
たとえば、ストア哲学では感情をコントロールすることが重要視され、単に“感情を抑え込む”という表層的な認識ではなく、感情がどのようにして生まれるかを深く洞察し、それらをうまくコントロールすることで、より良い行動が導かれると考察しています。今回は、この考えをベースに掘り下げてゆきます。
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ストア哲学では、感情は外部の出来事そのものではなく、それをどう解釈するかによって変容するのだと教えられます。失敗は、“恐怖”や“悲しみ”を引き起こしますが、その解釈次第では、“成長機会へのワクワク”、として捉え直すことも可能ですよね。
試験に落ちてしまった場合、自分には価値がない。と考えれば悲しみや不安が生じます。一方で失敗から学び、次回は成功すると捉えれば、諦めではなくチャレンジする行動への動機づけになるのです。
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ストア哲学は理性を最も重要な能力とみなし、誤った“解釈”を修正する訓練がなされることで、感情が暴走し行動に影響を与えるのを防ぎます。自分の感情を冷静に観察し、次のように問いかけてみましょう。
この感情は私に何を伝えようとしているのか?
この感情は現実に基づいているのか?
この状況を別の視点で見ることは可能か?
このように、感情を解釈力によってコントロールすることで、外部のノイズに流されることなく、あなたが定めた価値観や目的に沿った姿勢を揺らぐことなく取り続けることができます。これにより、ユーダイモニア(短期的な満足ではなく、より本質的な幸福の概念)を得ることができるというわけなのです。
では、あなたにとって行動に移せる感情とは
どのようなものが、あるでしょうか。
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感情の分類
心理学者のポール・エクマンは感情と表情の研究で、感情リストを喜び 、悲しみ 、怒り、恐れ、驚き、嫌悪 に分類してみせました。これらは、人間の普遍的な反応を示しています。これらの感情は進化的に重要な役割を果たしているのと同時に、それぞれが行動を促す導火線の役割を担っています。
たとえば、悲しみ ・怒り・恐れ ・嫌悪 などのネガティブ感情は、打ちひしがれたり、相手を非難したり、攻撃的な姿勢を生み出すますよね。しかしそれは、危険や損害を回避し、生存率を向上させる防衛的なものでもあるのです。社会的不公正や内部的な葛藤を解消する課題解決の動機となったり。本質的に行動や価値観を見直す機会が与えられているわけです。
喜び・驚き(ポジティブな文脈で)などの感情は、単なる快楽だけではなく、幸福感や心の健康維持に寄与します。新しい経験や学びへの意欲を高める成長への効果などもありそうです。そして、愛すべき他者との絆を強め、協力を促進ような社会的な活動にもつながりますよね。
その他にも、おもしろさ、軽蔑、満足、困惑、興奮、罪悪感、功績に基づく自負、安心、納得感、恥、などの表情もあるとしています。
あなたの今日の感情はいかがなものでしょうか。
鏡の表情から察してみるのも良いかもしれませんね。
ネガティブな感情は危機管理や課題解決に寄与します。ポジティブな感情は成長と社会的つながりを促進します。両者の役割をきちんと理解し、意識的に活用することで、より豊かで適応力がある暮らしを送れるようになるのではないでしょうか。
そして、一方的な状況に支配されるのではなく、
自らの“考るチカラ”から、どのような感情が呼び覚まされているのか。
それらを観察するだけで
自然と行動に移ってゆけるはずです。
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大いなるものの光
年末年始の頃に求められることは、静寂に身を委ね、啓示を受け入れ、覚悟を持つことなのでしょう。
大いなる存在からの光を感じとることにより、思考を超越した感覚的な認識が、あなたの内界にある眠れるチカラを目覚めさせてくれるでしょう。
成長とともに自己を明確にしていく。成長しているものに意識を向けることは、思索の果てに広がる地平であり、想念のエネルギーを深化させるプロセスなのです。
そして、あなたが、“できること”に集中できるように、この時期に、心や身の周りを整えてみる時間をつくっても良いかもしれませんね。
そのときに必要になるのが、
“自然に従う”ことです。
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ストア哲学において、“自然に従う”とは、単に自然環境に順応することを指すのではなく、人間の本質や宇宙に適った生き方の実践を意味します。
宇宙全体は、ロゴスと呼ばれる理性や秩序によって統治されています。自然に従うとは、この宇宙の秩序や法則を理解し、それに調和して生きることなのです。たとえば、 四季が巡る自然の摂理を受け入れるように、人生における成功や失敗、喜びや苦しみといった変化も自然の一部として受け入れるのですね。
人間的な視点での自然に従う意味は、あなたには理性と社会性が備わっており、自らの理性を使って徳を追求し、他者と協調しながら生きることです。私利私欲にとらわれず、他者の幸福や共通善を考慮して行動することがあげられます。
そして、自然に従った行動を選択するためには、まず、人間の理性は自然の一部であり、理性を用いることで、直情的に振り回されずに適切な行動を選択できるのです。ある状況に直面した際、動物的に反応する前に、思考のチカラで、“何が理性的か”を問い直し、感情のコントロールができるのです。
その理性の基準となるものは、徳が最も重要な価値とされます。徳とは、勇気、正義、節制、知恵といった倫理的な資質を指し、これらを基準に行動を選択することをストア哲学は求めます。目先の利益や快楽ではなく、徳に基づいて行動することなのですね。
しかし、だれしもが聖人君子のように振る舞えないところが、悩みどころです。それに、ついつい自分では手に負えないことに不満をかかえてしまう結果になりがちです。
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そこで重要になるのは、コントロール可能なものに焦点を当てることです。ここが行動していく上での、非常に大切なポイントになってきます。
エピクテトスの『コントロールの二分法』に基づけば、あなたは、コントロールできること(考え方、選択、行動)に集中し、それ以外のコントロールできないこと(他人の意見、運命、外的状況)は無理に抗おうとはせずに、まずは、“受け入れる”のです。
天気が悪いという状況は変えられません。その状況を受け入れ、それに対して“落ち込む”のか、“工夫して楽しむ”のか、の選択は、あなたにあるのです。それは、天候の悪さを憎むのではなく、ただ、“そういうこともある”、と受け入れたほうが行動への悪い影響を防げますよね。
近い考え方に、『7つの習慣』の影響の輪と関心の輪というものや、『ニーバーの祈り』などの思潮があります。
あなたは常に、多くの事象を抱え込んでいるはずです。健康、家族、仕事の問題、経済、世界の平和など。関心を寄せている事柄が多くあるはずです。それらは、あなた自身では実質的にコントロールできないものと、コントロールできるものに分けられます。
そして、大きく関わり、影響できるものがあるとすれば、おそらく、あなた自身の身近にある事柄の中に発見できると思います。そして、それに集中すればいいのだ。ということにすぐに気づけると思うのです。
あなたは、すでに“大いなるものの光”を得ているのです、
そして、自分で考えています、
そして行動しています。
そして、何に目覚めてゆくのでしょうか。
年末年始の静寂をお祈り申し上げます。
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シュタイナーさん
ありがとう
では、また
Yuki KATANO(ユキ・カタノ)
2024/12/29