雪 朱里
家で過ごす時間のために、ずいぶん昔に書いていた絵本ブログから、おすすめ絵本のレビューをランダムに紹介します。なにかのお役に立てれば幸いです。
ぼくは、なにものなんだろう――。 ぴっちは、いつも一人で 考えごとをしていたのです。 リゼットおばあさんの家にはお父さんねこのマリとお母さんねこのルリ、そして5匹の子猫たちがいます。そのなかで一番小さくて一番かわいい子猫のぴっちは、ほかの子猫のように遊びません。いつもかごのなかで一人考えごとをしているのです。ぴっちは一人で家から出て行きました。ほかの子猫たちがしているような遊びではなく、なにかもっとほかのことがしたかったのです。 庭でおんどりを見たぴっちは「ぼくも、りっぱ
わたしも「いもらす」になりたい 待ちに待った「いもほり遠足」の朝、外は雨……。遠足が1週間延期になってしまってガッカリした子どもたちは、土の中のおいもに思いを馳せて、画用紙に絵を描き始めます。描き上がったのは画用紙を何枚使っても入りきらないほどの大きなおいも。子どもたちの想像はぐんぐん広がって、しまいには「おならロケット・いもらす号」となって宇宙に飛んでいってしまうのです。 * * * 食いしん坊のわたしが、子どものころ大好きだった絵本。 初めて見る人にはかなりインパ
女の子とぬいぐるみの、小さな冒険物語 きつねのぬいぐるみの「こん」は、おばあちゃんに赤ちゃんのお守を頼まれて、砂丘町から来ました。赤ちゃんの名前は「あき」。こんは、あきと遊ぶのが大好きでした。2人はいつも一緒に遊び、あきはだんだん大きくなりました。ところが、こんはだんだん古くなり、ある日とうとう腕がほころびてしまったのです。こんとあきは、おばあちゃんに腕を直してもらうため、電車に乗って砂丘町へと旅をすることにしたのでした。 * * * 黒くまあるいつぶらな瞳、ふんわりふ
**いろんな生き物たちとつながりをもちながら、それぞれの命を生きている** 地面の上には、いろいろな種類の動物が住んでいます。地面の下に住む動物もいます。けれども植物には、地面の上に出ているところと地面の下にもぐっているところとがあり、その形は植物の種類によってさまざまです。動物も植物も、太陽、空気、水、土、そしてほかのいろんな生き物たちとつながりを持ちながら、さまざまな場所でそれぞれの命を生きているのです。 * * * はじめてこの本を手に取った時、全32ページの
荒ぶる魂が求めている 昔、三匹の雄やぎがいました。名前はどれも「がらがらどん」。 三匹はある時、山の草場で太ろうと山へ上っていきました。すると、途中の谷川に渡された橋の下に、気味の悪い大きなトロルが住んでいたのです――。 * * * アメリカでは1957年、日本では1965年に出版されたこの絵本は、傑作として長年読み継がれてきました。2004年2月15日時点で第118刷。どれほどの子どもたちがこの作品に親しんできたのかを物語る、ものすごい数字です。 行動をともにする三
かえるの暮らしもわるくない 水の中にゼリーのようなタマゴ。やがてタマゴはおたまじゃくしに、後足前足がはえてきて、しっぽが縮んでかえるになった。4匹のかえるは気ままに暮らす。潜ったり、泳いだり、遊んだり……。時には食べられそうになるけれど、のらりくらりとかわして笑う。夏中歌って遊んで過ごす、ゆかいなかえるの物語。 * * * 「かえるの暮らしもいいもんだな」 つい、そんな風に思ってしまうこの絵本。 内容は淡々とかえるの1年間の生活を描くのみ。鳥獣戯画を思わせる飄々とした
愉快な人生を送るコツ おおかみは もう いないと みんな おもっていますが ほんとうは いっぴきだけ いきのこって いたのです。 こどもの おおかみでした。 ひとりぽっちの おおかみは なかまを さがして まいにち うろついています。 どこかに だれか いないかな * * * 衝撃でした。 すごい絵本でした。 『やっぱりおおかみ』は佐々木マキさんの絵本代表作。「おすすめ絵本ガイド」みたいな企画では必ずと言っていいほど見かける作品です。……がしかし、なぜでしょう。なんと
雨粒が小川になり、湖になり、大河になり、 そして海に流れ込む自然の進行が リズミカルな文章と愛らしい絵で語られる ぽとり ぽっとん すぷらっしゅ ぽとり ぽっとん すぷらっしゅ ぽとり ぽっとん すぷらっしゅ あめは ふる ふる あさ ひる ばん 一粒の雨が山あいの細い川を下っていく。川は次第に幅を増し、やがて雨粒は広大な海に繰り出していく――。雨粒がたどる壮大な旅を「ぽとり ぽっとん すぷらっしゅ」というリズミカルな言葉を繰り返し用いながら淡々と描く美しい自然科学絵本。
正直言って、ぶたぶたくんは可愛くない。……が。 ある日、ぶたぶたくんはお母さんに一人でお買い物に行くよう頼まれました。 「ぼく ひとりで いけるよね。なんども おかあさんと いって しってるものね」 お買い物ができたら、お菓子屋さんに寄って好きな物を買っていいと言われ、ぶたぶたくんは大喜び。お母さんはぶたぶたくんの首に黄色いリボンを結んでくれました。お買い物かごを持って、さあ出発です。 * * * 正直言って、ぶたぶたくんは可愛くない。それどころか、買い物の途中で出会っ
こずるくて弱っちい、愛すべきねこたちの愉快な絵本 11ぴきの野良ねこは、いつもおなかがペコペコでした。ある日ねこたちのところに、じいさんねこがやって来て言いました。「あの山のずうっと向こうの広い広い湖に、怪物みたいな大きな魚が住んでるわい」。「そんな大きな魚なら、おなかいっぱい食べられるぞ」11ぴきの猫はさっそく湖に向かい、怪物のようなその魚をつかまえようとしますが――。 * * * 作者の馬場のぼるさん(1927-2001)は、日経新聞に連載していたこともある漫画家(
かわいいくまの子がやってきた ある夜、ぼくのおうちにとってもかわいいくまの子がやってきたんだ。名前は「よるくま」。おかあさんがいないって泣くから、ぼくも一緒にさがしに出かけたんだけど、なかなか見つからない。「おかあさんは? おかあさんは?」って泣くよるくまの涙で、あたりが真っ暗になったその時、ながれぼしが飛んできて──。 * * * なんといっても、よるくまがかわいい。開けたドアにちょこんと立っている姿にまず胸がキュン。おかあさんをやっと見つけた時の涙でクシャクシャにな
楽しいお話を通して「水の循環」が見える ある日、村のおばさんのバケツから飛び出した一滴の水が、一人ぼっちで旅に出た。水たまりから蒸発して雲の上、雲の上から雨となってまた地面へ。岩の間で氷になったと思ったら、ころころ転がり小川のなかへ。そしてとうとう、しずくは水道取水管につかまった――。さまざまなものに姿を変えて旅をしていく、しずくの冒険の物語。 * * * 水は、地球をめぐっている。空にもくもく浮かぶ雲も、降りしきる雨も、海や川の水も、そして蛇口をひねれば出てくる水道の
ちびっこだからできることがある じぷたは、ある町の消防署にいる小さな消防自動車。ジープを改造して作られました。小さなポンプも、ぷーぷーと鳴るサイレンもついていて、ちびっこでも働き者でしたが、だあれも気にかけてくれません。町の子どもたちも、ほかの消防自動車のことは大騒ぎするくせに、じぷたのことは「なあんだ、ジープをなおしたのか」なんて言うだけでした。そんなある日、隣村の山小屋で火事が起きました。署長さんは顔色を変え、じぷたにこう言ったのです。「よし、じぷただ。頼むぞ。出動だ!
ある日あらわれた、ちっぽけな赤いライオン 少年ラチは、世界中で一番の弱虫。友だちに仲間はずれにされて、いつも泣いてばかりいました。 「ぼくにライオンがいたら、なんにもこわくないんだけどなあ」 ある朝目を覚ましてみると、ベッドのそばに小さな赤いライオンがいるではありませんか! かわいらしくてちっとも迫力のない、そのライオンは言いました。 「ぼくがきみを強くしてやるよ」 * * * 泣いてばかりいたラチ少年が、弱虫を克服して夢をかなえるお話。 なんといっても、この絵です。
どんぐりパンを食べてみたい「おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、そしてきょうだい10ぴき。」森に暮らす14ひきのねずみの家族の1日は、朝ごはんの支度から始まります。おとうさんが薪を割り、おばあさんとおかあさん、おねえさんたちはどんぐりの粉でパンを焼く。兄弟たちは野いちごつみに出かけます。滝を越え、森の虫たちにあいさつをし、たくさんの野いちごを摘んで帰るころには、「きのこもはいって、とくべつおいしいおとうさんのスープ」も出来上がり。あたたかでおいしい食卓を囲んで
モノクロームの世界に鮮やかに咲いた春 暗く寒い冬です。深い雪に閉ざされた山のなか、動物たちは静かな眠りについています。のねずみも、くまも、ちっちゃなかたつむりも、りすも、やまねずみも――寒さをしのぐように、あるものは地面のなかで、あるものは木のうろで、息をひそめて眠っています。 おや? みんなが目を覚ましました。鼻をくんくんさせながら、一斉に駆け出します。そしてみんなが集まったところで見つけたものは――。 * * * 物語は静かに幕を開けます。 コンテのあたたかなタッ