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今日の絵本13:『じめんのうえとじめんのした』アーマ E.ウェバー
**いろんな生き物たちとつながりをもちながら、
それぞれの命を生きている**
地面の上には、いろいろな種類の動物が住んでいます。地面の下に住む動物もいます。けれども植物には、地面の上に出ているところと地面の下にもぐっているところとがあり、その形は植物の種類によってさまざまです。動物も植物も、太陽、空気、水、土、そしてほかのいろんな生き物たちとつながりを持ちながら、さまざまな場所でそれぞれの命を生きているのです。
* * *
はじめてこの本を手に取った時、全32ページの、文章も絵も至ってシンプルなこの絵本を通して、これほどさまざまなことが描かれているとは思いもよりませんでした。
わたしたちは普段、地面の下の様子を目にすることはありません。そこで暮らす生き物たちのことも、地面の上で青々とした葉を茂らせる植物たちが、その見えない場所でどのような姿をしているのかということも、ありのままを見られる機会はほとんどないと言ってもいいかもしれない。しかし目に見えている地面の上のことにしても、知っているつもりで知らないことだらけなのですよね。
地面の上には、いろいろな種類の動物が住んでいます。地面の下にも、いろいろな動物が住んでいます。虫や、目に見えない微生物もいます。そして、植物たち。地面の下で根を横に広げているものもいれば、深く深くひたすら下に伸びているものもある。人参のように地面の下で栄養を蓄えた太い根を生らしているものもあれば、短くてもじゃもじゃした根が生えているものもある。まずはそうした「生き物のさまざまな形」が、簡略的な絵とやさしい文章とで提示され、やがてそれらの動物と植物が密接な関わりを持っていることが淡々と解き明かされていくのです。
この絵本のすごいところは、これだけの内容を伝えているというのに、文章も絵もごく少なく実にシンプルで、必要最小限の、けれども一番大事なことだけを表現しているということ。使われている色は黒、緑、山吹色の3つだけ。簡略化された絵は卓抜なデザインセンスを感じさせ、その画面構成の美しさにも見とれるばかり。手描きのタイトル文字も、いい雰囲気。
わたしが絵本の美しさに感動する傍らで、大喜びしていた息子。彼にとって何がうれしいって、地面の下に小さな虫がひょっこり描かれていたりすることがたまらないんです。植物の根のなかには芋虫に見えるものもあり、虫好きな息子はそのたびに「うわあ〜」「へええ〜」と大げさに驚いては喜んでいるのでした。
生き物同士のつながりを知る第一歩として、おすすめの一冊。優れた科学絵本であり、物語絵本としても素晴らしい。読み聞かせは5歳前後からどうぞ。
※「今日の絵本」は、家で過ごす時間のために、ずいぶん昔に書いていた絵本ブログから、おすすめ絵本のレビューをランダムに紹介する記事です。リアルタイムに執筆した文章ではありません。ほんのちょっとでも、なにかのお役に立てれば幸いです。
▼オススメ度(読み聞かせ当時の記録です)
母------------------> ★★★
4歳7カ月男児---> ★★☆
▼『じめんのうえとじめんのした』
▽ アーマ E.ウェバー(文・絵) 藤枝澪子(訳)/福音館書店(1968/03/01 原著“UP ABOVE AND DOWN BELLOW”は1943米)/印刷:精興社/製本:多田製本
▽かな/32ページ/22×18cm
▽アーマ E. ウェバー(Irma E. Webber)プロフィール:アメリカのカリフォルニア大学で植物学を専攻し、博士号をうけた。のち同大学で植物学を教え、誇大植物学、植物病理学を研究した。子どもの本は、本書や『たねのりょこう』(福音館書店)のほか2〜3冊、植物をテーマにしたものを書いている。どれも自分でさし絵を描いている。夫も植物学者で、ふたりの子どもがいる。