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【書評掲載】デビッド・アレン『全面改訂版 はじめてのGTD―ストレスフリーの整理術』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1142号

今年度4月より、産労総合研究所が発行している専門誌『企業と人材』の書評コーナーの連載を担当することとなりました。

人と組織の力を高める人材開発情報誌』である本誌にて、『人を活かす組織づくりのヒント』と題して毎月、関連する書籍を紹介しております。

人を活かす組織づくりのヒント』を提供する書籍として今回、取り上げたのはデビッド・アレン著『全面改訂版 はじめてのGTD―ストレスフリーの整理術』(二見書房)です。

書評コーナー『人を活かす組織づくりのヒント』

2001年の初めての書籍化以来、時代を重ねる中でもその実用性を失わず、今なお通じる普遍的な仕事術であるGTD(Getting Things Done)について紹介している本書を連載第9回目に紹介いたしました。

『企業と人材』と『全面改訂版 はじめてのGTD』

企業と人材』は毎月5日に発行予定ですので、書評コーナー以外もぜひ手に取ってご覧ください。

以下、今回取り上げた『答えを急がない勇気』の書評記事を読み進める上での補足情報として、ネガティブ・ケイパビリティ(Negative Capability)とはどういった概念であるかを簡単に紹介できればと思います。


GTD(Getting Things Done)とは?

GTD(Getting Things Done)とは、デビッド・アレン氏(David Allen)が開発した個人と組織の生産性の向上を助けるメソッドです。

書籍化以前にも主に企業研修やセミナーの中でGTDの手法を紹介してきたデビッド・アレン氏は、2001年に『Getting Things Done』初版を出版しました。

初版版は30カ国語以上に翻訳出版されるベストセラーとなり、2015年には改訂版が出版されています。

今回、紹介した『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』は、この2015年版の邦訳書に当たります。

『全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』

GTDについて詳しくは、こちらのサイトや書籍もご覧ください。

また、GTDは海外発祥の組織運営法にも組み込まれており、個人と組織の生産性向上にとどまらず、組織運営やマネジメント、プロジェクト推進などの場面においても効果を発揮する手法として活用できる可能性を秘めています。

以下、GTDを取り入れた組織運営法であるホラクラシー(Holacracy)について紹介します。

GTDを応用した組織運営法ホラクラシー(Holacracy)

ホラクラシー(Holacracy) とは、既存の権力・役職型の組織ヒエラルキー(Hierarchy:階層構造)から権力を分散し、組織の目的(Purpose)のために組織の一人ひとりが自律的に仕事を行うことを可能にする組織運営法です。

2007年、Holacracy One(ホラクラシー・ワン社)のブライアン・J・ロバートソン(Brian J Robertson)トム・トミソン(Tom Thomison)によって開発されたホラクラシーは、フレデリック・ラルー『ティール組織』にて事例に取り上げられたことで、国内においても実践事例が増えつつあります。

ホラクラシーを導入した組織では、組織の全員がホラクラシー憲章(Holacracy Constitution)にサインして批准することで、現実に行なわれている仕事を役割(Role)と、役割として優先的に使用するドメイン(Domain)、継続的に行なわれている活動(Accountability)として整理し、 仕事上の課題と人の課題を分けて考えることを可能にします。

ホラクラシーを実践する組織において仕事上、何らかの不具合が生じた場合・より良くなるための気づきや閃きがあった場合は、それをテンション(tension)として扱います。テンション(tension)は、日々の仕事の中で各ロールが感じる「現状と望ましい状態とのギャップ、歪み」です。

このテンションを、ホラクラシーにおいてはガバナンス・ミーティング(Governance Meeting)、タクティカル・ミーティング(Tactical Meeting)という、主に2種類のミーティング・プロセスを通じて、および日々の不断の活動の中で随時、不具合を解消していきます。

さらに詳しくは、日本人初のホラクラシー認定コーチであり新訳版書籍の監訳者である吉原史郎さんの記事や、新訳版出版に際してホラクラシーのエッセンスについて語られた動画、全文公開されている新訳版書籍のまえがきもご覧ください。

さらに、この組織運営法に関して、開発者であるブライアン・J・ロバートソン氏はホラクラシーの開発史を振り返る記事の中で以下のように紹介しています。

2009年、ホラクラシー(Holacracy)ver1.0と憲章(Constitution)が誕生してから、ホラクラシーの発展が加速しました。その後、数年間で、ver2.0、2.1、3.0、4.0をリリースし、それぞれのバージョンでコアルールが大幅に進化しました。これらを後押ししていたのは、現場でのテンション(tentions)に基づく私たち組織とクライアント企業での経験でした。

(中略)

ver3.0で達成したもう一つの大きなマイルストーンは、ホラクラシーの権限体系とデビッド・アレン(David Allen)のGTD(Getting Things Done)メソッドのコアな運用コンセプトと洞察を深いレベルで統合したことです。

その時点で、私自身がGTDの実践者であり、デビッドがどのようにこの方法を捉えて伝えていたか、という絶妙な明瞭さと純粋さは、ずっと以前から私自身の仕事において大きなインスピレーションと道標となっていました。

GTD はとても奥深く(profoundly)、「自然(natural)」であるように思えました。人間に与えられた心(mind)と意識(consciousness)の本性(nature)から必然的に生じる、世界に反応し、物事を処理し、組織化するための、最も効果的な方法の発見のように思えたのです。

それは経験的に発見されたシステムと有用な識別システムのセットであり、特定のメンタルモデルや価値体系からくる思考上の創造物ではありませんでした。

それこそ、私がホラクラシーに求めていたものです。GTDの実践は、ホラクラシーという方法がどんな感じなのか、そしてホラクラシーの発展を評価する基準を最初に与えてくれたものだと考えています。そして、憲章ver3.0でついにホラクラシーとGTDを完全に結びつけたとき、私はかなり恍惚としました。

History of Holacracy The discovery of an evolutionary algorithm.より

なお、『[新訳]HOLACRACY(ホラクラシー)―人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン』について私は、『企業と人材』第1136号にて紹介させていただきました。

さらなる情報については、『企業と人材』バックナンバーも合わせてご覧ください。

人材開発情報誌『企業と人材』とは?

『企業と人材』は、株式会社産労総合研究所が発行している『人と組織の力を高める人材開発情報誌』です。

『企業と人材』第1142号(2024年12月5日発行)

発行元である産労総合研究所は、1938年(昭和13年)に創設された労働問題の民間調査機関『産業労働調査所』を前身とする出版社・民間シンクタンクです。

企業と人材』は1968年(昭和43年)に『社内報新聞』として創刊され、その後『社員教育』、『企業と人材』へと改題を重ねながら、2013年2月に第1000号が発行されました。

産労総合研究所は企業と人材の他、賃金事情』『労働判例』『労務事情』『人事の地図といった人事労務分野だけではなく、病院経営羅針盤』『医事業務など医療介護経営分野における出版を中心に、同分野での調査研究・提言を行っています。

各誌の定期購読・試読・web見本誌の申し込み、見積書ダウンロード、バックナンバーの確認等は、各誌のリンク先のページをご覧ください。

さらなる探求のための参考リンク

The Art of Stress-Free Productivity: David Allen at TEDxClaremontColleges|TEDx Talks

提唱者デビッド・アレンさんに聞く、GTD実践法|ITmedia

History of Holacracy-The discovery of an evolutionary algorithm.

第1回レポート:進化型組織の最前線!欧州の進化型企業を訪ねて 〜欧州7社の実践知から組織の未来を探求〜

書評掲載バックナンバー

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鈴木規夫『インテグラル・シンキング―統合的思考のためのフレームワーク』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1135号

ブライアン・J・ロバートソン『[新訳]ホラクラシー―人と組織の創造性がめぐりだすチームデザイン』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1136号

ウィリアム・ブリッジズ『トランジション マネジメント─組織の転機を活かすために』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1138号

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池田めぐみ、安斎勇樹『チームレジリエンス―困難と不確実性に強いチームのつくり方』:人と組織の力を高める人材開発情報誌『企業と人材』第1139号

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大森 雄貴 / Yuki Omori
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