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シロクマ文芸部参加

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シロクマ文芸部参加のショートストーリーです。
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2023年8月の記事一覧

迷子のおっさん  :  「#ヒマワリへ」

迷子のおっさん : 「#ヒマワリへ」

「ヒマワリへ向かって右です。」

風は涼しくなったが、昼間の日差しはとても強くて、その人は麦わら帽子を目深に被り、汗をタオルで拭いながら答えた。

田舎道だから、特に目印も無くて、一つだけ咲くヒマワリが目印とは。

こんな目印さえない田舎道は非日常で、溜まったモヤモヤを解放してくれる。
日常が続く事こそ平和なのだろうが、変わり映えのない日常が続く事が何故か疲れさせる。
全てを捨てて、「わーーー」っ

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絵を描く : #「文芸部」

絵を描く : #「文芸部」

「文芸部でした。」

やっぱりそうかと思った。

ヒョロリと細くて、色白で、カメラを重そうにぶら下げるその姿から、そんな感じがした。

「私もですよ。
でも、本当は落語研究会だったんですけど、部員が少なくて部活に入れてもらえなくて、落研部員はみんな文芸部に席を置いていただけなんです。
ほら、詩とか書くなんて小っ恥ずかしいから、席があっても、な〜んにもしてなかったんですけどね。」

「絵をお描きなら

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息子のケンカ  :  #「平和とは」

息子のケンカ : #「平和とは」

平和とは? …なにぃ?

私はタケルとヨシの間に入った。

「取っ組み合いは良いけど、物を壊すのはやめて頂戴。」

「だってヨシったら、ミサイル打たれたら打ち返せばいいとか、言うんだぜバカだよねぇ。」

「確かにバカだけど、冷静に話し合うとかならないの?」

「ならないからこうなってんじゃん。」
と、ヨシは語気が荒い。

「はぁ。そうみたいね。
じゃあ、おばあちゃんの家の話しをしましょうか。」

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