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息子のケンカ : #「平和とは」
平和とは? …なにぃ?
私はタケルとヨシの間に入った。
「取っ組み合いは良いけど、物を壊すのはやめて頂戴。」
「だってヨシったら、ミサイル打たれたら打ち返せばいいとか、言うんだぜバカだよねぇ。」
「確かにバカだけど、冷静に話し合うとかならないの?」
「ならないからこうなってんじゃん。」
と、ヨシは語気が荒い。
「はぁ。そうみたいね。
じゃあ、おばあちゃんの家の話しをしましょうか。」
二人を床に座らせた。
3.11。
あなた達が生まれる少し前、大きな震災があったのよ。
その時、原発事故が起こったの。
おばあちゃんの家は、避難区域のすぐ側だったから、原発側の道路はバリケードで封鎖されたの。
でも、放射能が20キロ圏内だけしか降らないなんてないでしょ?
どこまでが安全なんて誰にも分からない。
だからね、おばあちゃんの町は、自主避難して人が殆ど居なくなって、病院もお店もみんな閉まってしまったのよ。
建物だけはそのままで、人のいなくなったゴーストタウン。
景色はそのままなのに、全てが変わってしまって、それは本当に不安で怖かったわ。
自衛隊の深緑の大きな車があちらこちらに居て、行き場のなくなった自主避難の車の赤いテールランプがどこまでも続いていたのよ。
それはもう、戦争みたいだった。
放射線と言う見えない敵と、同国民の見えない敵対者。
何かと戦い続けてるみたいだったわ。
でも、その事以上にそれを癒してくれたのも人。
だから、人を信じて良いと思ったの。
撃ち合いだけが戦争ではないのよね。
原発は、震災以前からトラブルが続いていたの。
テレビで、「改善します」と謝罪するニュースを何度も見たもの。
「改善されてなかったの?」
恐らくね。
庶民にはどうしようもない大きな力が働いているって、見えたようだった。
世界はお金で動かされてるって感じたわ。
真実が知りたかったら、お金の足跡を辿りなさい。
「お金の足跡?」
と、タケルが言う。
そう。
隠れているものが見えてくるし、その先、進んで良いかも見えてくるから。
だから、お金は大切だけど、お金のために生きてはだめよ。大事なものが見えなくなってしまう。
要はね。
一つ一つ、その時、何を選んできたかなのよ。
撃たれたから、実害もないのに撃ち返すでは、世界は滅んでしまう。
何が目的で、何で撃ってきたのかを知るべきだし、弱腰とか、言うけど、ヨシもタケルも、戦場に出たらチビっちゃうわよ。
「そんな事ない。」
と、ヨシはムキになるけど、タケルより絶対チビルのはヨシだろう。
そんなでいいのよ。
戦場なんか行かなくていい。
だって、誰も戦わなければ、戦争になんかならないんだもの。
「誰も戦わない?」
そう。
だって、誰のために戦うの?
母のため?
国のため?
母でも、国のためでもないでしょう?
見えない、権力やお金が欲しい人のために戦うだけでしょ?
戦国時代から、ずっと、戦争をしたからって平和になったりしていないじゃない。
負の連鎖が続くだけ。
平和は、助け合う事でしか成り立たないと思わない?
「母、難しくて分かんない。」
と、二人は声を揃える。
呆れて
「そうかぁ〜。」
と、脱力する。
「取っ組み合いは良いけど、致命傷や物を壊すのはダメってことよ。」
「なら、そう言ってよ。」
と、ヨシは全く分かってなさそうだ。
「もう一つ。何故それを選ぶか考えなさい。」
「あー、はい。はい。」
ヨシは面倒くさそうに返事する。
君たちは今、平和ってことだね…と、心の中で笑ってしまう。
母は、平和が続くことを願うとするよ。
するとタケルが、
「おばあちゃんのお家はどうなったの?」
と、聞いてきた。
「いつも、遊びに行ってるじゃない。
おばあちゃんの地区は放射能が降らなかったのよ。むこーの山が遮ったんだって。ふしぎよね。」
説教くさくならないように考えたけれど、思いっきり、そうなりました。
とりあえず、
世界が平和でありますように。
寛容な世界になりますように。
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