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迷子のおっさん : 「#ヒマワリへ」


「ヒマワリへ向かって右です。」

風は涼しくなったが、昼間の日差しはとても強くて、その人は麦わら帽子を目深に被り、汗をタオルで拭いながら答えた。

田舎道だから、特に目印も無くて、一つだけ咲くヒマワリが目印とは。

こんな目印さえない田舎道は非日常で、溜まったモヤモヤを解放してくれる。
日常が続く事こそ平和なのだろうが、変わり映えのない日常が続く事が何故か疲れさせる。
全てを捨てて、「わーーー」っと、走り出したくなるのだ。
見えない透明な膜が、自分を締め付け続けるような気がするのだ。


ヒマワリに向かって車を走らせ、右に折れてしばらくすると、一面ヒマワリ畑が広がり、その奥に海が見えた。

「ここかぁ。」

それは、真実が描いた絵の世界そのものだった。

ただ、絵は朝日が登り始めたヒマワリ畑と海だった。
ヒマワリに刺す光と対の影。
海を明るくし始める光。
今は、ヒマワリも海も明るく光っている。夕立を連れて来そうな入道雲。

真実とは、まだ娘が小さい時分に別れた。
ニューヨークでデザインの勉強がしたいと、別れを切り出し、離婚することに決めた。
別れる必要があったのかは、今だによく分からない。その答えを出そうとも思ってはいない。
娘も育ち県外で暮らしている。年に一度、孫を連れて遊びに来る。

さて、俺はこの先、どうするか…。
たった今俺は、人生の迷子なのだ。
これと言ってしたい事がある訳でもない。
かと言って何が出来る訳でも無く。
ただ続いているだけの日々を持て余している。
だからと言って、真美や娘に会いたいと言う訳でもない。会ったからと言って、特に何を話すと言うのか…。
いや。
会ったからと言って、知りたい答えを二人は持ってはいないだけだ。
二人に会って出した答えは、誤魔化しの気がする。

人生の半分を生きた。
それでも、まだ、知りたい答えがある。
多分それは、生きてみないと分からない…そんな答えだろう。

ヒマワリは、太陽を捉え、黄色く輝いていた。
枯れてもなお、種を残す。
海は捉えきれないほどの光を放ち続ける。

「世界はパワーあふれてるなぁ。」
と、間の抜けた独り言が口から出た。
その独り言は、知らない他人が呟いたようで笑ってしまった。

「ヒマワリに向かって右です」
そう教えてもらったから、
俺はもう、迷子も終わったな…。




今回は、時間内😊

「ヒマワリへ」から始まる小説・詩歌・エッセイを書いてみませんか? みんなで読み合うお遊び企画です。締切は8/27(日)21:00。ハッシュタグ「#シロクマ文芸部」をつけてください。他の参加作品1つ以上にコメントするのがご参 @komaki_kousuke #note

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