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雪山 : 「#十二月」
十二月一日 朝。
冷気に覆われた街を高台の住宅地まで行くと、遠くに高く聳える山の頂上が真っ白な雪で覆われていた。三角の頂上は風が強いらしく、雪煙がひっきりなしに上がっている。
あの山が白くなるとこの街にも雪がやって来る。
空は晴れているのに、僅かに粉雪が飛んでいた。
「山が真っ白。」
「キレイだなぁ。」
夫は雪道の運転はそれ程苦ではないから、あの山をキレイと素直に思える。
私はアイスバー
浄化 : 「#珈琲と」
珈琲と飛行機雲。
テーブルに頬杖をついて、
はぁ〜と、ため息をついた。
人って、みんな違う。
そんなの当たり前だけど、
それが許されないことって沢山ある。
「同じ事をしても、それの目線の先が誰かの幸せか、お金かで、考え方は全然違うじゃない?
私さぁー、どうしてもお金を目線の先に置けないんだよね。」
と、栞に愚痴ると、
「知ってる。紗織は優しいもん。」
と、栞が言った。
ん? そこに優し
りんご箱を探して : 「#りんご箱」
「りんご箱。
昔はりんご箱を机にしてたのよ。」
そう母さんが言う。
母さんは昭和初期のものが好き。
引き出しにくい桐の箪笥とか、
木の木目が浮き出た椅子やテーブル。
今回は、木箱のりんご箱が欲しいと言う。
「でもね、昔はりんご箱が簡単に手に入ったかもしれないけど、今はかえって割高でしょ。」
「そうねぇ。
りんご箱が売られてるのなんか見た事ないわ。」
「じゃあ無理じゃない。」
「だけどさ
生き方の正解 : 「#走らない」
走らない。
…よね〜。
「急いで。」
と、私が言うと余計にゆったりと景色を眺めだした。
「日光は何回も来たことある。」
と言って、連れてこられた感が強くて興味なさそうだから、山葡萄の蔓籠バックを作っている人がいるから、そちらに行こうと言うと、興味を示したものの、だからと言って、動きは緩慢だ。
時間が遅くなると、見学出来なくなると言っても、のんびりと参道を歩く。
そんな母を、母の友達の知子さん
人間以外の生物 : 「#読む時間」
読む時間だ。
じっと、目を凝らし、見つめ続ける。
お互いが、お互いを読み続ける。
ふと、思う。
私はともかく、あなたは、私をどのように読んでいるのだろう?
離れた丸い目で見続けている。
敵
…と、思うのだろうか?
巨大な獲物
…と、思うのだろうか?
私の憶測は単純で、同種でなければ「敵」か「餌」と言う、貧困な発想しか浮かばない。
果たして、彼らは人間をどんな風に見ているのか?