昼寝

昼寝。ひるね。HI・RU・NE。なんと甘美な響きだろう……。

僕は毎日6時間ほど眠る。この睡眠時間に関して、僕自身は何の不満も抱いてはいないが、僕の身体はそうはいかないらしい。昼食を済ましてのんびりしている時の僕が、午前10時と同等の覚醒状態を維持しているとはとても言い切れない。
眠気というのは恐ろしいもので、一度目があったら最後、用が済むまで徹底的に付きまとう。「えぇい!!今は忙しいんじゃ!!夜に出直してくれぃ!!」と抵抗してみるが、彼は僕が心の奥底から拒んでいないということを、見透かしているのだろう。「まぁまぁ、いいじゃないか。」などと言って肩に手を伸ばし、巧みなトークスキルで僕を誑かす。気づいたら予定の時刻を過ぎている、なんてことは一度や二度ではない。

「昼寝なんてしてる時間無いのに!!」と抗ってみても、『昼寝』という単語を頭の中で唱えた時点で既に敗北は決している。恐らく、最初に触れたように『昼寝』という単語の緩やかな語感に眠気を誘う秘密があるのだろう。
『ひるね』という音韻から悪意を見出すのは困難だ。特に『ね』の部分。子供の頃、本を読み聞かせてくれた親の気配がする(気がする)。この世の全ての単語、特に人の悪意によって紡ぎ出された最低な言葉達ですら、『ね』を付けると少しばかり角が取れる。『ウザいね』『キモイね』『あっちいけね』
……当然、その言葉を放った本人の醜い心性までは浄化できないが。

『ひるね』という文字列にも何か秘密があるに違いない。
こうして文字にしてみると分かるが、『ひるね』という文字自体が、適度に柔らかい。そこがいい。『あさ』だと少しばかりキリッとし過ぎている。(特に『さ』の部分。)逆に『よる』は柔らかすぎる。(渦巻が過剰だから。)『ひる』が丁度いい。(『ひ』の何とか形を保っている感じがマッチしているから。)
先人達が知性と理性を総動員して創り出した『文字』というものが、理性と知性を侵食してしまう『睡眠の世界』へと誘うとは、何たる皮肉であろうか。
さっきから何を言っているのか良く分からない、と思った人は、きっと人生のゆとりが足りていない。今すぐ寝て休息をとったほうがいい。

以上のように、『昼寝』という言葉には、まるで、毛布のような、柔らかさと、優しさが、内包されている。
なるほど、抗えないわけだ……。
……なんだか、ねむたくなってきた……。
…………、……。

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ハンモックとかいいよね。

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