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珠玉集

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心の琴線が震えた記事
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2023年8月の記事一覧

「掌編小説」僕の喪失#2023年のいっぽん

ガタガタ…ズカズカ… ガタガタ…ズカズカ… ガタガタ…ズカズカ… 朝から知らない男の人が家の中に三人も入って来た。色んな質問をボクのパパにして、それからパパを三人掛かりで抱き抱えて連れて行っちゃった。 ママは 「〇〇ちゃん、いい子にしててね」 って何度もボクに言ったけど、ボクは襖の陰に隠れて、プルプル震えて座っているしか出来なかったんだ。 バァバもジィジも 「大人しくしてて、本当にいい子ね~」 って言ってくれたけど、ボクはそれがいい子なのか、どうか分からなかったよ。 ママ

読書サイト「シミルボン」のサービス終了に寄せて

シミルボン閉鎖シミルボンというサイトをご存知でしょうか? そのホームページには、 という説明が載っています。運営しているのはブックリスタで、これはソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社が共同で設立した電子書籍事業会社です。 そのシミルボンが 2023年10月1日(日)24:00 を以て閉鎖し、サービスを終了するとの発表がありました(当初はその発表を掲載してあったページに、ここからリンクを張っていたのですが、当然のことながらそのページも消えています)。 今この文章を読ん

緊急避難先としての本、そして本屋

真夏の空に、城のようにそびえる入道雲を見るたび、私は一人の老人のことを思う。 その人は、たったひとりで大海原へ出てゆき、カジキマグロと戦った。 彼の名はサンチャゴ。 『老人と海』(ヘミングウェイ)の主人公だ。 私にとって、彼は「生きること」を教えてくれた人生の師である。 こういう風に生きたい。 そう思った初めての人でもある。 本の中には、魅力的な人物がわんさかいる。 学生時代は、太宰の描くダメ男が心中したいくらい好きだった。 社会人になってからは、開高健のウィット溢れるエ

自分の中のイライラと甘えについて考える

「っだーー!ここまで計算してたのに今話しかけるからどこまでやってたかわかんなくなっちゃったよー!」 「うん...いや、確かに何も話してなかったけど私電話持ってるよね?今自動音声の案内聞いてたのよ...そのタイミングで話しかけられちゃったもんだから、ガイダンス聞き逃してまたもう一度最初から聞くハメになってもうたやん...」 なーんてこと、仕事をしているとないだろうか。 私はたまにある。 自宅でリモートワークなどの場合は1人静かに仕事ができるが、自分だけがいる空間ではないと

わたしが書きました、というのが精一杯だった小6の夏。

春はあけぼの。 夏は夜。 秋は夕暮れ。 そんなことが枕草子では書かれているけれど。 夏は夜もいいけど。 夏はこどもだと思ってる。 夏になると、じぶんが幼かった頃のことを 思い出すそんなしくみにあふれていて。 わたしは夫も子供ももたなかったせいか いまだに、子供視線でものを追ってしまう。 作文きらいだったなって思いながら今も noteを書いている。 わたしは小学校を三度転校しているけれど。 三度目は小6だった。 突然クリスチャン系の学校の編入試験を受ける こと

#210 草間彌生という生き方【後編】~昼も夜も死に物狂いで戦っている~

みなさんの素晴らしい投稿頻度に比べ、いつも忘れたような頃に次を持ってくる、キレのなさをごめんなさい。 今回は【後編】として、マンチェスターで観た草間彌生氏の生き様のドキュメンタリー『草間彌生∞INFINITY』をもとに、年時などを調べて書き足しています。 壮絶な子ども時代 1929年草間彌生は長野県松本市で種苗業を営む裕福な家庭に4人兄弟の末っ子として生まれた。 幼いころから植物が話しかけてくるという幻聴や幻覚があり、絵を描くことはその恐怖からの逃避だったといわれる。