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読書サイト「シミルボン」のサービス終了に寄せて
シミルボン閉鎖
シミルボンというサイトをご存知でしょうか? そのホームページには、
シミルボンとは、ユーザーの皆さまが “いい本”を互いに教えあったり、好みの“読書人”に出会ったりすることのできるプラットフォームです。
という説明が載っています。運営しているのはブックリスタで、これはソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社が共同で設立した電子書籍事業会社です。
そのシミルボンが 2023年10月1日(日)24:00 を以て閉鎖し、サービスを終了するとの発表がありました(当初はその発表を掲載してあったページに、ここからリンクを張っていたのですが、当然のことながらそのページも消えています)。
今この文章を読んでいただいている方でもシミルボンなんて全く知らなかったと言う人が多いのかもしれませんが、僕はこのサイトに 2016年以来ずっと書評を投稿してきました。いずれも自分のブログに書いた書評をほとんど丸ごとコピーしたものです。
honto の悪行三昧
僕は自分のホームページ(現在は閉鎖)のために書いた書評を、当初はオンライン書店 bk1 にダブルで投稿して掲載してもらっていたのですが、このサイトが大日本印刷の資本によるマルチプラットフォーム型電子書籍配信・販売サイト honto に再編され、それを機会に僕の投稿した記事のリンクが、何の予告もなく突然ぐちゃぐちゃにされていました。
僕が自分の記事に張っていた bk1 = honto 内の投稿へのリンクが、多分何百という単位で存在していたはずですが、そのリンクが全部切られて、クリックしても honto内のその本のページには繋がらなくなってしまったのです。honto が何も考えずに各ページの構成を変え、URL を書き換え、元々のページに張ってあったリンクは全て自動的にトップページにリダイレクトされるという、とんでもなく手抜きな対応をしたからです。
僕のホームページから bk1 にリンクを張ることについては、そもそも bk1 の担当者の依頼を受けて始めたことなので、随分ひどいことをするなとかなり憤りました(そのことはここに書きました)。
そんなことをするのならいっそのことそれまでの書評は全部捨ててくれたほうが、リンクを張っていたほうとしてはありがたいくらいなのに、投稿された書評自体はいまだにのうのうと掲載しています。
シミルボンからの連絡
しかし憤ってもどうしようもないので(とは言うものの切れたリンクをそのままにするわけには行かないので)、それ以来、書評は全て自分の HP から自分のブログに移動した上で、リンクは Amazon に張りなおして(この一連の作業がどんだけ大変だったか!)、書評を書くことはずっと続けてきました(まあ、あの時の怨みがあるので、それ以降は何があっても honto では本を買わないようにしていますが)。
すると、2016年の1月にオープン前のシミルボンの担当者から突然メールをいただき、サイト・オープン時に載せる書評を書いてくれないかとの依頼を受けました。
僕はその依頼を受けて初めて、「せっかくサイトをオープンして、これから広く書評の投稿を募るとしても、オープン時に全く書評が掲載されていないようでは人が集まらないのか!」と気づき、「なるほど、こういう風にサイトの開設を準備するのか!」と感心し、そして、「僕が自分のホームページに書いていた書評の少なくともいくつかをこの人は読んでくれて、評価もしてくれたんだ!」と浮足立って(笑)依頼を受けました。
言わば合法的サクラですね(笑)
僕がいた放送業界なんかだと、ラジオの新番組の初回なのにちゃんとリスナーからハガキが来ていて、これは一体どうしているのかと思ったら実は構成作家やディレクターが書いていたなんてひどい話がありましたが、そんな話とは根本的に違います。運営会社とは無関係な一般の人間が、そして後に間違いなくそのサイトのコアなファンになる読書人が書いた書評なのですから。
で、すでに自分のブログで発表済みのものでも良いということだったので、過去に書いたものから自分で出来が良いと思えるものを選び、新しく2~3編の書評も書き加えて 10編の書評を送りました。
シミルボンへの併載開始
最初に載せてもらったのは保坂和志の『プレーンソング』
2冊目がドン・デリーロの『アンダーワールド』でした。
今改めてシミルボンのページを調べてみると、「いいね!」はほとんどついていません(笑)
でも、それ以来ずっと、自分のブログに書いた書評は(場合によっては少し手を入れた上で)必ずシミルボンにも併載してきました。ひょっとしたら1つか2つはシミルボンのために書いたオリジナルのコラムがあったかもしれません。
居心地の良いサイト
それから7年。 bk1 と言うか honto と違って、シミルボンとは本当に良好な関係を保ってきたと思います。
そして、このサイトは本好きの書評家が集まる非常に快適な空間でもありました。僕らは互いに自分以外の人の書評を読み比べて、自分と他人との捉え方や感じ方の違いを学び、今までは決して手を伸ばさなかった新しい本に興味を持ち、自分の読書体験を広げて行きました。
「諸般の事情により」閉鎖するとのこと。下衆の勘ぐりですが、やっぱり経済的な事情が大きいのかな、と思います。
本を売っているわけではないので、オンライン書店へのアフィリエイト・リンクだけでは収入に限界があるだろうし、ひょっとしたらソニーの Reader Store と KDDI の ブックパス という2つの電子書籍フォーマットの伸び悩みみたいなものも関係しているのかもしれません。
いずれにしても、この7年半大変お世話になりました。気持ちの良いサイトでした。感謝の気持ちでいっぱいです。あと1か月半ほどで閉鎖されますが、この文章を読んでもしも興味が湧きましたら、一度覗いてみてあげてください。
この文章はこのサイトが記録として少しでも残ることを願って書きました。
(この文章は最初に自分のブログに上げたものに少し手を入れてシミルボンにも投稿し、さらにそれに書き足し、添削したものです)
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