そして私は行列に並んだ。
行列に久しぶりに並んだ。待ち時間は一時間以上だという。三列にキレイに整列して並び、誰一人文句も言わずに指示に従っている。知らない人と横に並ぶ不自然さを隠すために、私は先日購入した短編集を鞄から取り出した。
この本の作者は、書くことが好きなのだと伝わってくる。どの短編もとても物語に誠実だ。真っ直ぐに文体に表現される誠実さは、私が書こうにも書けるものではない。ひん曲がった性根の私には、キレイな文章に憧憬しか感じない。それを羨む時期もあったのだが、出来ないことを認めてからは、それ