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木の子みのむし神社 参拝記 【感想がわりの路地裏二次創作】

祝祭期間がすぎても路地裏には賑わいが続いていた。
祝祭とはラ・フォル・シャンピニヨンのこと。(シャンピニヨンとは?
あの頃は「キ・ノ・コ!」「キ・ノ・コ!」という喝采が日に日に熱を帯び、路地裏にキノコを御神体とする神輿が毎日のように練り歩いたものだ。

そんな路地裏を活写した蒔倉みのむし氏による『なんのはなしですか。【長編小説】』
「どうでもいい課」報告書と並行して書かれたこの壮大な物語は、路地裏への愛と木の子大将への並々ならぬリスペクトに溢れていた。

小説の完結以降も様々なタグや企画が立ち上がり、人々は熱に浮かされたように今日も書いて飲んで歌う。タグにも季節や流行トレンドが生まれているようだ。
ここは本当に裏通りなのだろうか。


🦑

「だいぶ遅くなっちゃったな……」

橙色のゆるっとしたTシャツにメガネのひっつめ髪の女が路地裏を急いでいる。
片手にはずっしりしたエコバッグ。女は夏バテと愛犬の誕生日にかこつけお礼参りを怠っていた。

路地裏の最奥、清浄な空気に包まれた一角に神社がある。
「木の子みのむし神社」
路地裏の発展とともに創建された由緒ある神社だ。
創作大将&流行語大将の授与式もここで行われたという。

石造りの鳥居のてっぺんに昨日の台風で飛ばされたのだろうか、黄色いパンティらしきものが引っかかっている。鳥居の足元には神社名の入ったのぼりが数本並ぶ。よく見るとどの幟も寿司柄の布が使われていた。

ひっつめ髪女は一礼して鳥居をくぐる。
参道の木立には意匠を凝らした賑やかな帯が何種類も飾られていた。「なんのはなしですか」や「どうでもいいか」と書かれてある。

神社の参道を彩ります


参道の途中には大きな茅の輪ちのわが置かれていた。置かれているというよりホノグラムで投影されているようだ。

なんとホログラムの茅の輪

ひっつめ髪女は恐る恐るホログラムに足を踏み入れる。抵抗なくするんと通り抜けた。少しはケガレが取れただろうか。

女は左側に見える社務所に向かった。
持参した品をお供えして奉納したいと告げる。

受付で対応してくれたのは、フードの付いた神官装束に首元にヘッドホンをかけた人物だった。ひっつめ髪女はフード付き装束に違和感を抱きすぐに気づいた。

「あの、蒔倉みのむしさんですか?」

「あ、はい」

「小説完成おめでとうございます。おすぬです。その節はお世話になりました。お礼参りが遅くなってすみません。今日は春キャベツをお供えさせてください」

「あ、はい」

「(ん?クールな対応?)あの、玉串料はおいくらで」

「うーん、1枚でも2枚でもいいっすよ」

奥から怒鳴り声が聞こえた。

「なーんば言うか!お前はなーんも分かっとらん。1万円と2万円ば、お前は同じって言うとか!?
(訳:なんて事を言うんだ。お前は何も分かってない。1万円と2万円を、お前は同じと言うのか!?)

「すいません。父です」

蒔倉は頭をかいた。お父上が先代の神主らしい。ひっつめ髪女は財布をのぞき、申し訳なさそうに真新しい渋沢栄一を1枚取り出した。

「ではお呼びするまで本殿脇でお待ちください」


🦑

境内はジュワンジュワンとセミの鳴き声が充満している。
本殿から巫女さんが手招きした。「こちらへどうぞ」

ひっつめ髪女は本殿に上がり見回した。祭壇には御簾みすがかかっている。その奥に巨大なキノコ型の御神体と、わらでできたマントのような大きなミノムシが透けて見えた。

祭壇手前には三宝さんぽう(供物台)がいくつも並んでいる。
キノコやイカが載った台もあれば、なんとも形容しがたい色合いのバナナやナスが積まれたもの、外車マクラーレンのハンドルが載っかった台もあった。

巫女は何も載っていない供物台を女に示す。ひっつめ髪女はエコバッグから小さないびつなキャベツを取り出した。
巫女は女を一瞥して言う。
「お礼参りが遅れたくせにそれっぽっちですか」

「えっ?」ひっつめ髪女はまじまじと巫女を見た。
古墳から出土したような金色に鈍く光る冠をかぶっている。神官のティアラか?プリンセスなのか?

巫女プリンセスは「ま、どうでもいいか。大事なことは空っぽになって循環することですよ」と言い放つ。

ほどなく神官装束の蒔倉が現れた。
蒔倉が白い紙がわさわさ付いたお祓いの棒(大麻おおぬさと言うらしい)を手に、ひっつめ髪女の頭上で左右に振り始めた。祈祷が始まる。

「ヴェイ゙エ゙〜イ゙エ゙ヴェ〜エ゙エ゙イ゙エ゙〜」

いきなり巫女が異様な声を発した。
どうやらこれが祝詞のりとの奏上のようだ。
空気を振動させる独特のダミ声。
本殿の柱がビリビリ共鳴している。

ひっつめ髪女はあっけに取られたが、慣れてくるとなんとなく言葉が聞き取れた。
「菓子こみ菓子こみ〜」と唱えているようだ。


🦑

祈祷が終わった。
ひっつめ髪女が本殿を出ると、賽銭箱の前に小学校低学年の子どもくらいの背丈の二足歩行のパンダとネコがいる。ガランガランと鳴る鈴の紐をかわりばんこに一生懸命引っ張って手を合わせている。何とも愛らしい仕草にひっつめ髪女はくすりと笑った。

「あ、みにょ〜!」
本殿から蒔倉が姿を表すと二人(二匹)が口々に呼びかける。

(みにょ!?みのむしだから?)ひっつめ女は考える。

蒔倉は満面の笑顔で「ぱにゃにゃんだ〜」と応えた。
巫女プリンセスが言う。
「今日は上がりにしてください。あとはどんとこいです」

「じゃそうさせてもらいます。失礼します」
蒔倉は巫女とひっつめ女にぺこりと頭を下げた。

「今日も路地裏タンケン行こ行こ〜」
二匹が蒔倉にまとわりつく。
蒔倉は両側からパンダとネコに挟まれて手をつないで参道を遠ざかっていった。


「これから路地裏に集う人たちを観察しに行くんですよ」
一人と二匹の後ろ姿を見送りながら巫女プリンセスが言う。
プリンセスは続ける。

私たちはいつも「なんのはなし」かわからないものに夢中になったり悩んだりしてる。それもいつかは「どうでもいいか」となっていく。空っぽになるからまた旅に出る。循環であり円環。旅はまだ終わらない。


二匹がくるっと振り向いてウインクした。
二匹の尻尾にポっと灯りがともった。
「そっか、テールライト
ひっつめ女は納得したようにつぶやいた。

(おわり)


【あとがき】
創作大賞のお祭り期間が終わると分かっていても私は動けずにいた。長編小説に登場させてもらったのにお礼(感想文)ひとつ書けずにいる。
蒔倉さんに本当に申し訳ないと思っていました。

そうこうするうちに路地裏関係者(難民)の新たな企画やタグが盛んに始まり完全に乗り遅れてしまった。路地裏はまるでトレンディドラマ。キノコ栄作だ。(わからない方読み飛ばしてください)

こうなったら感想文じゃなくて二次創作にしよう。
最初はごんぎつねのように「どうでもいい課」の前にキャベツを置いてくるストーリーを考えたが、ミルコさんの感想文を読んではたと気づいた。
そうだ、お礼参りにしちゃえばいいじゃないか。参道の行き帰りも死と生だとどこかで読んだ記憶がある。

蒔倉さんの小説を読み返し、リンク先の記事を拝見しながら今更ながら蒔倉さんの凄さを思った。小説に登場させたnoterさんの記事を読み込み、エピソードを配置して関連付けストーリーを展開させていく。しかも「どうでもいい課」の回収とレポートも同時にやってのけていた。

蒔倉さんは木の子課長から「コニシキノコイズム」を受け継ぎ、この小説を書いたとおっしゃっている。

大好きな皆に感謝の気持ちが届いて、喜んでもらえたらいいなと思って書いた。

大将の感想文にもあるが、この小説はかなりの
身内ネタ、内輪ノリである。

でも、私はそれでもいいと思った。
まずは自分の周りから大切にしていく。
エゴだろうと贔屓だろうと何でもいい。
私を大切にしてくれた人を大切にしたい。

【なんのはなしですか】デザート35 蒔倉みのむしさん

ヘッドライトが未来を照らす光だとしたら、テールライトは越し方の象徴だと思う。自分を大切にしてれた人、他者から受けてきた恩、それらすべてに感謝の光を当てるテールライト

そして「楽しむことを諦めない」のがヘッドライト。(最終話のラスト)

そっか人生ってそういうことだ。過去からもらった力で未来に進んでいく。

中島みゆきの『ヘッドライト・テールライト』の歌詞を思うと、やがて私を含め多くの人が、無名の英雄として別の誰かのテールライトに照らされる日が来るかもしれない。(あーこれ失礼な表現だったらすみません。自分が「英雄」って言っちゃってる部分はウヌボレですな)

木の子課長の葛藤と飛躍をすぐそばで見てきた吉穂みらいさんの、蒔倉小説の感想に大変感銘を受けました。僭越ながらリンクを貼らせていただきます。


みのむしさん、とっても遅くなりましたが小説完成おめでとうございます。
路地裏で、タグで、いつも遊んでくださってありがとうございます。
吉穂さんがコメントでおっしゃるように、あの小説は路地裏の記念碑的な作品だと思います。そして新しい遊び方、新しい表現方法のお手本のひとつになるんじゃないでしょうか。


🐼さいごに😺

木の子課長が言う「書く裾野が広がった」おかげで拙い二次創作でも投稿の勇気が出ました。メルシー🍄ル・グラン・シャンピニヨン。

文章内で勝手にリンクを貼らせていただいた方々、ありがとうございます。
不適切な表現がありましたらご指摘ください。善処いたします。

画像をお借りした方々
サムネ画像 ねんねんさん
賑やかし帯 いつき@暮らしが趣味さん
茅の輪にさせてもらった判子 3.7さん
いつもありがとうございます。

それではこれにて!


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おすぬさん
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