穂音(ほのん)

白いお犬は創作のヴィーナス。ちょっとおかしな世界を書きます。犬猫鴉のすむお屋敷「ミズ・ミステリオーザ」、侘び寂び「長夜の長兵衛」など。剽窃・盗用は、おやめになってくださいましね。 オリジナル曲「夢の香り」「hermosa - a piece of harmony」各社より配信中

穂音(ほのん)

白いお犬は創作のヴィーナス。ちょっとおかしな世界を書きます。犬猫鴉のすむお屋敷「ミズ・ミステリオーザ」、侘び寂び「長夜の長兵衛」など。剽窃・盗用は、おやめになってくださいましね。 オリジナル曲「夢の香り」「hermosa - a piece of harmony」各社より配信中

ウィジェット

マガジン

  • ほのんのおと

    取り上げてくださってありがとう、心にグッときましたありがとう、のおと

  • こびと図書館

    • 137本

    「見えなくてもいい、いまそこにいる。信じて感じるのだ!」をスローガンに活動するこびと部が運営する図書館です。 こびと部はゆっくりのんびり各自のびのびをモットーに活動しております。

  • 長夜の長兵衛 七十二候シリーズ <短編小説>

    長夜の長兵衛 二十四節気シリーズに続き、七十二候のシリーズです。 短編の連作です。読み切りですので、どこからでも、お読みいただけます。全部地の文で出来ているこの世界は、一体いつ、どこなのか、どうぞお好きなところへトリップしていただけましたら。

  • お犬まみれ

    うちのお犬についての親バカ的なアレです。 ヘッダー画像は橘鶫さんが描いてくださった白いお犬です。

  • 穂音のお好み焼きー掌編

    【短編小説】シリーズ化していない、独立した掌編を入れています。お好みのものがあったら嬉しいです。

  • 花びら道
  • moon river presented by …
  • ウミネコ制作委員会2024東京
  • かわらないきぼうのいろ みんながボーカリストバー…
  • I love us

最近の記事

  • 固定された記事

長夜の長兵衛 金盞香(きんせんかさく)

  小春日  幹にくるり、銀兵衛は慣れた手つきで菰を巻き、縄をかける。長兵衛がもう一本縄を結ぶ。金兵衛が縄目を整え、余りを切り落とす。半日ほどすると、街道の松並木には冬支度が整った。  お疲れさん。あとは旅籠でゆるりとしようではないか。金兵衛が二人に労いの言葉をかけてくれる。  本日は堅苦しい客人もありませんし、どうぞこちらへ。宿の主人は、十二畳はあろうかという部屋へ三人を通してくれる。湯殿も準備させております、ごゆっくり。  金兵衛は湯殿へ、長兵衛は饅頭屋へ。  銀兵

    • 手ぶらで遊びに来てね! #文学フリマ東京39 ウミネコ制作委員会 「さ-39・40」

       みなさまごめんくださいまし。  急に冬らしくなりまして、お犬のベッドも冬用に変えたところなんでございます。  この季節が、やってまいりました。 店頭では、 編集長 marmaladeさん さわきゆりさん 穂音 青音色メンバーの 海人さん 吉穂みらいさん 渡邉有さん が、交代で店番している予定です。  ご注意ください!会場 東京ビッグサイト 入場料 1000円 (18歳以下は無料) チケット購入方法はこちら。前売りや、デジタルチケット(eプラス)もあるそうです。

      • 淡麗でも、ぶっとんでる

         みなさまごめんくださいまし。    先日、「長夜の長兵衛」を完走いたしました。詳細はこちらに記したのですが、あとがき、のようなつもりで気合いを入れすぎてカッチコッチの固い記事になっております。    あらためまして、長らくご愛読いただきましてありがとうございました。  皆さまのスキとかコメントなしに、ここまでくることは出来ませんでした。これは掛け値なしの本音です。読んでいただけるって、本当に有難いことですのね、you gave me a lot of energy!  こ

        • 二年間は旅のようなものだった

           短編の連作を終えた。  タイトルを、「長夜の長兵衛」という。時代劇、ではない。どうか、色眼鏡なしでのぞいてみていただけると、嬉しい。お話の舞台がいつで、どこにあるのか、作中で具体的に明かしたことはない。ついでに言うなら、長兵衛が人間であると書いたこともない。舞台設定を超えたところに、ただ淡々とした日常と非日常とを、主人公たちの力を借りて切り取っていきたいと思った。  とは言え、江戸時代の人情ものであるかのように描いてしまったことは否めない。風景とか、細やかな情とか、どこかに

        • 固定された記事

        長夜の長兵衛 金盞香(きんせんかさく)

        マガジン

        • ほのんのおと
          116本
        • こびと図書館
          137本
        • 長夜の長兵衛 七十二候シリーズ <短編小説>
          73本
        • お犬まみれ
          59本
        • 穂音のお好み焼きー掌編
          29本
        • 俳句を詠みたくなりまして
          17本

        記事

          +3

          抱えきれないほどのありがとうを

          抱えきれないほどのありがとうを

          +2

          長夜の長兵衛 楓蔦黄(もみじつたきばむ)

           秋遍路  白い。   雨模様のてっぺんの空。この色はどう染めたものかと源兵衛は考える。  白い。  手水舎の周りを鶺鴒が歩く。光が跳ねるようだと、久兵衛は思う。  白い。  しめなわの真ん中で紙垂がはためく。安兵衛は頭を垂れる。  白い。  主の消えたがらんどうの住まい。銀兵衛は入口を掃き、戸を閉め、お社さんへ向かう。  白い。  はじめて見る鴉であった。漆黒でないだけで白いと思うてしまうものだ、と金兵衛はあの日に思いを馳せる。  出逢うたか、長兵衛。  金兵衛の

          長夜の長兵衛 楓蔦黄(もみじつたきばむ)

          長夜の長兵衛 霎時施 (こさめときどきふる)

          刈田  雨が上がり空が青に戻ると、山肌の緑が澄みわたる。  水をはらんだ土が枯茶を濃くしたようになった。畦道を銅十郎は一目散に駆ける。目の奥には、過ぎた日のあどけなさと、明日へ向かうたくましさとが息づいておる。  長兵衛さん。  おお、銅十郎。  どうなさったのです。長いこと、じっと動かずにおいでだものだから。  大事ない。  長兵衛は、それ以上なにも言うてくれぬ。目線はじっと、刈ったあとの田にある。    長兵衛さん。  返事はない。    長兵衛と、向こうに立つ案山子。

          長夜の長兵衛 霎時施 (こさめときどきふる)

          長夜の長兵衛 霜始降 (しもはじめてふる)

          吾亦紅  日は少しずつ高く、雲はいろが抜けて白くなる。  霜は露となり、草葉は光を透かす。小さな穂は、すっかり紅い姿を現した。  これは、これは。  吾亦紅の方へ、安兵衛は手を伸ばす。  菓子屋の暖簾はとうに息子に譲り、隠居の身である。道楽で梅林を設え、菊や牡丹、芍薬などを育て、野にあって草花を愛でる。  濃い紫を帯びたようなこの紅。てっぺんは花がひらき、下の方はまだすぼまっておる。こちらはもう、ひらききって随分と経つものか、赤黒い。  うむ、これをつくるとなれば色合いは一

          長夜の長兵衛 霜始降 (しもはじめてふる)

          長夜の長兵衛 蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)

          蟋蟀  黄色味を増した葉が、そろそろと降りて土に添う。  ちらこらりらりら。迎えるように蟋蟀が鳴く。  銀杏より何やら話しかけられているように思うて、久兵衛は梢を仰ぐ。  きらり、お天道様の筋が伸びる中をまた一枚、たどたどしく落ちてこようとしている。随分と茶色い、ようよう見れば。  蝶である。  片方の羽根が破れたまま飛んでおるのだ。ななめ下へと思えば少し上へ、そしてまた下へ。少しずつ銀杏から離れ、あちらのよもぎについ、と留まった。    いい声にございますな。後ろに付いて

          長夜の長兵衛 蟋蟀在戸 (きりぎりすとにあり)

          +4

          ナデナデしてもよろしくってよ

          ナデナデしてもよろしくってよ

          +3

          長夜の長兵衛 菊花開 (きくのはなひらく)

           菊酒  夜半に目が覚めてみれば隣に長兵衛が寝ておる。  そうだ、夕べ金兵衛の屋敷で馳走になり、千鳥足になったを送ってきてくれたのであった。  はて、布団を出したのは自分であろうか。  目が冴えてしまい、源兵衛は床を抜け出して表へ出ると、庵の脇にしつらえた木の台に腰を下ろす。  安兵衛のこさえた栗ご飯に、金兵衛の捌いた魚。酒は久兵衛が手に入れてくれた。菊の節句を共に過ごす酒は、この上なく旨く、ついつい。  南中に、高くまるまると月。あの色を染められるであろうか。隠居して、

          長夜の長兵衛 菊花開 (きくのはなひらく)

          長夜の長兵衛 鴻雁来 (こうがんきたる)

          青北風  つう、と赤とんぼが横切った。  銀兵衛は立ち止まり、腰の手拭いを外して顔を拭う。  風は澄んでいる。  つう。  翅は光に運ばれ、赤い竹のようなからだはやがて点になり、消える。  雲一つない、ただ青いだけの空。まるで時が止まってしまったようだ。  息をすることも忘れて、銀兵衛は吸われてゆく。ずっとこの青を辿っていったなら、くにへ、繋がるのか。  つう。  とんぼの残像だけが動く。  どのくらい、そうしていたのであろうか。  ひゅう、と北風に頬を打ち据えられ我にか

          長夜の長兵衛 鴻雁来 (こうがんきたる)

          ウニを煮ていたトド

           ウニ漁、解禁日。俺は張り切って船を出した。ついに、一人で出漁が許されたのだ。脱サラしてここまで頑張ってきたけれど、本当に一人前になれるだろうか、という不安は、今日は陸に置いてきた。 「三浦御崎神社に備えた一升瓶が無くなっている。と言うことは、狙いはイルカ岩のあたりかな」  そういう仲間内のジンクスは情報戦、心理戦の類だろう。どこに漁場を定めるか、先輩のコウジさんのアドバイスも聞いて決めた。  待ってろ、ウニ。  船の上で箱メガネを取り出すと、海底を睨みつける。いた! 竿を繰

          ウニを煮ていたトド

          長夜の長兵衛 水始涸 (みずはじめてかるる)

          秋簾  左が主で、右が従。  いや、竹刀のように握ったのでは水気が残ってしまう。己の手に浮き上がる筋を見ながら長兵衛は苦笑する。  雑巾を広げて一振りし、四つに畳むと、簾の目に沿って手を動かす。汚れは落としても、決して傷をつけぬよう。そのあと乾いた布で拭きあげる。最後に軒下へ吊るし陰干しする。  兄さん、世話をかけますなあ。婆さまが番茶を入れてくださった。  からりとした風が通ると、細い竹の編まれた簾の色が濃くなったり、境目がわからぬほどに光ってみたりなどする。揺らぐ裾の向

          長夜の長兵衛 水始涸 (みずはじめてかるる)

          100均で「マグネットキット」なるものを見つけました! うほほーい🐶

          100均で「マグネットキット」なるものを見つけました! うほほーい🐶

          長夜の長兵衛 蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)

          穴惑い  見慣れぬ顔だ、と思うたのである。  知っておる誰とも、違う。はじめて逢うた者なれば、至極当然のことであるが、それだけでない、深いところから震えを呼び起こすはなにゆえか。  銅十郎の心持ちを知ってか知らずか、その者は話しかけてくる。お山は、どちらの方角になりましょうか。  高めの声音に、俺より若い、と銅十郎は悟る。顔の作りが小さく、しきりに舌を出しては上唇を舐めている。  このまま真っ直ぐ進まれたなら、辻に地蔵さんがおわします。その向こうへ登り坂を行かれれば山になり

          長夜の長兵衛 蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)