言葉の宝箱 0504【どれだけ頑張っても報われないことがある。――頭でわかっていても、つらいよな】
目黒区柿の木坂の空き家で放火が発生し、東京消防庁の火災調査官・東は現場に向かう。消火活動にあたったのは東の高校時代の先輩であり、現在は目黒消防署八雲出張所のポンプ車小隊長を務める白木だった。そこで東は犯人の遺留物と思しき、ダ・ヴィンチ『岩窟の聖母』の一部を模写した笑う天使の絵を見せられる。そしてその事件を皮切りに、都内で同じ手口の放火事件が頻発。現場にはなぜか同じ絵が残されていた。有能だが本心では炎の美しさに執着している火災調査官と正義感あふれるポンプ車小隊長が事件を追うミステリ。消防官、火災調査官のお仕事小説でもある。
・燃焼という現象には、単なる化学変化の域を超えた何かがあるようだ。
化学変化としての燃焼とはつまり、
発熱と発光を伴う、短時間に起きる急激な酸化反応(略)
木片の燃焼とは、
炭素と酸素が化合して二酸化炭素や一酸化炭素になったり、
水素と酸素が化合して水になったりすることだ。
その際に放出されるエネルギーが、あの輝かしい炎を生む。
――あの、見る者の心を吸いつくすような、彩りも様々に語りかける炎を。火は時に誰かの大切なものを奪い、生活を瓦解させ、
愛する家族や友達、隣人などを奪っていく。
しかし、太古の昔から、人間は火を恐れつつ愛してもきた。
火を使いこなすことができたからこそ、
人類の文明はここまで発展することができたのだ P19
・普通に暮らしたいのなら、他人と他人の感情に敬意を払え。
でなきゃ、そのうち居づらくなるぞ P33
・末端神経に刺激を与え続ければ、
脳が活性化して目を覚ますのではないか P37
・誰でも、自分を心底恨んでいる人間なんていないと信じていたい P49
・人間というのは、日差しの中に住むタイプと、
ひんやりとした日陰に住むタイプとに、それぞれ生まれつくらしい P74
・自分が知らない間に、他人が自分をひそかに断罪している。
そんな状況が、なんと多いことだろう P100
・あまりに大きな衝撃を受けると、
人間はまともな感情表現を失うのかもしれない P158
・ひとりのほうが気楽だったから(略)
自分勝手で、他人に合わせるのが苦手だっただけ P228
・どれだけ頑張っても報われないことがある。
――頭でわかっていても、つらいよな P321
・正しいことが、常に報われるとは限らない(略)
時には報われたと感じることもあるから、
俺たちは正しいことをするために頑張るんだ P326