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「NieR:Automata」を見て、「生命」の本質を考えてみよう

2024年夏クールが終わり、今月から秋クール。
こういう時期によく出る話題は、
結局、夏クールの覇権アニメは何だったの?
ということである。
結論をいうと、その答えが出るのはもう少し先のことである。
まぁ、私としては正直どうでもいいことなんだけど。
他人の指標など気にせず、自分の指標で評価すりゃ十分だと思うし・・。
とはいえ、それを言っちゃオシマイなので、一応「覇権」を測る2つの指標をここで出しておきます。

<2024年夏アニメ Xフォロワー数>


【1位】推しの子2期(86.2万人)

【2位】時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん(61万人)

【3位】NieR:Automata(22万人)

<2024年夏アニメ Filmarks満足度>


【1位】ラーメン赤猫(スコア3.89)

【2位】負けヒロインが多すぎる!(スコア3.79)

【3位】推しの子2期(スコア3.76)

上記2つの指標で両方の上位に入ってる、「推しの子」2期が覇権って結論で別にいいんじゃない?
異論は認めるけどさ。
何が良かったか悪かったかなんて、そんなの個人の価値観でしょ。

じゃ私の場合、夏期アニメで個人的に印象に残った作品はというと、やはり「NieR:Automata」かな?
もちろん、これは覇権アニメじゃないと思う。
一部では「おもんない」って声も聞くし。
とはいえ、クオリティはめっちゃ高かったと思う。
ヒロインが寡黙で、それを演じるのが石川由依さんというのがキモだったと思うのよ。
石川由依さんといえば「進撃の巨人」のミカサ、あるいは「ヴァイオレットエヴァーガーデン」のヴァイオレットといったところが当たり役であって、無口でナンボという人である。

石川由依

声優で「無口でナンボ」というのもあれだが、石川さんは寡黙でいてそこに情感を乗せるのが巧い稀有な役者である。
今回の「NieR:Automata」ヒロイン・2Bもまさにそうだった。
もうね、本作は2B(石川由依)を楽しむ為にこそあるコンテンツなのよ。

あと、SFとしても非常によくできてた話なんだ。
人類絶滅後もAIは生き残る」というのは、私自身の未来予測と完璧合致する。
これは絵空事じゃなく、実際そうなると思うよ。
栄華を誇り、地上で敵なしだった恐竜ですら結局は絶滅したんだからね。
生き物には必ず寿命があるように、種としても必ずどこかに限界が設定されてるものなんだ。
「永遠」など、絶対にあり得ないと断言していい。
じゃ、最後に何が生き残るのかというと、一番考えられるのは「有機生命体では生き残れない環境でも生き延びる知的生命体」だろうし、それって普通に考えりゃAIでしょ。

えっ?AIって生命体なのか?

いや、もちろん違うさ。
ただし、それは「生命体」の定義によって若干ブレるものである。
皆さんは、「ウィルス」って生命体だと思う?
厳密な科学の定義でいうと、あれは生命体ではないらしい。
でも、それおかしくね?
明らかにあれ、生きてるじゃん。
しかもその生命力はかなりしぶとく、たとえばインフルエンザウイルス。
あれはワクチンがあってもそれを凌駕する進化を見せたりして、もはや人類vsウイルスの頭脳ゲームみたいになってるでしょ?
本来、ウイルスに知能なんてないはずなのに、人類はその駆け引きに負けてバタバタと人が倒れていく年も結構あるよね。
ウイルスって、ある意味最強だよ。
百獣の王・ライオンよりも強いかも。

「NieR:Automata」では、ウイルス感染すると目が赤くなって・・

で、「NieR:Automata」に話を戻すが、この物語も元々はアンドロイドvs機械生命体の戦争だったというのに、その最終局面はコンピュータウイルスの蔓延によって、アンドロイド・機械生命体双方が壊滅状態になる、というオチだったんだよね。
うむ、ここでもウイルスが最強なわけよ。
めっちゃハイスペックな2Bですら、結局ウイルスには勝てなかった・・。

もちろん、インフルエンザのようなウィルスとコンピュータウイルスを同列で語ることができないことは分かってるさ。
コンピュータウイルスは自然発生したものじゃなくて、人為的に作成されたプログラムである。
こんなもんを開発するプログラマーって何を考えてるの?と思うだろうが、でもねぇ、ウイルスによって利益を得てる人は結構いるのよ・・。
今後もウイルスが絶滅することは絶対ないし、実際セキュリティの専門家が「これは勝てない戦争」と言ってたところを見るに、結局最後はウイルスが押し切るんだろう。

最後はウイルスが勝利するというバッドエンド


それが、ほぼ確定した我々の未来の顛末である。

で、コンピュータウイルスの恐ろしいところは、コンピュータを宿主として自己増殖していくところだと思う。
つまり、生命体でいうところの「生殖」機能はあるんだよ。
我々人類の生殖は、出会って~口説いて~デートして~ホテル行って~、という複雑な手順を踏む必要があるというのに、ウイルスの野郎は我々よりもずっとシンプルで効率的にコトを済ませやがる。
この時点で、なんかもう勝てる気がしない・・。
こっちは「少子化」とか問題視されてるのに、ウイルスの方に少子化問題は全くないからね。
つまり我々人類が絶滅しようと、その後もウイルスはずっと増殖をしていくのはほぼ確実なわけよ。

「ガラスの花と壊す世界」(2016年)

さて、ここでひとつ別のアニメのご紹介をしよう。
ガラスの花と壊す世界」、それほど有名な作品ではないにせよ、個人的には名作SF映画のひとつだと認識している。
監督は石浜真史さんで、あの名作「新世界より」の監督さんなんだわ。
「新世界より」はかなり哀しい未来の物語だったけど、この「ガラスの花と壊す世界」もそれ以上といえるほどの哀しい未来の物語である。

人類滅亡後も、人類のプログラミング通りに稼働し続けるプログラム

というのが物語の根幹で、そういう意味では「NieR:Automata」とほぼ同種の作品といえるだろう。
いや、物語の構造は「NieR:Automata」よりもっとシンプルで直接的な表現である。
なんせ、コンピュータウイルスvsアンチウイルスプログラムという闘いを描いたものなんだから。

アンチウイルスプログラムのデュアル(中央)ドロシー(右)、そして謎の少女リモ(左)

まぁ、プログラムを美少女キャラに置き換えた「擬人化アニメ」ともいえるだろう。
はたらく細胞」っぽいやつね。
思えば、細胞とプログラムはよく似てるよな?
どちらも指令に沿って忠実に働き、しかし両者とも定義としては「生命体」ではない。
じゃ、細胞って何なの?
有機的なプログラム、といったところだろう。
でも、その細胞が37兆個繋がれば「人間」という一個の生命体でしょ?

じゃ、コンピュータプログラムも数十兆単位で繋がれば一個の生命体になるのか?
ウイルスも数十兆単位で繋がれば一個の生命体になるのか?

「NieR:Automata」アダムとイヴ

そう、そんな深~いテーマに突っ込んだのが「NieR:Automata」だったのよ。
「NieR:Automata」では、無数のプログラムが連結することにより「アダムとイヴ」が生まれた。

そして「ガラスの花と壊す世界」は、「NieR:Automata」からもう一歩深いところまで踏み込んだ内容になってるので、未見の方はぜひご覧になってみてください。
こういうのを「つまんない」といってる人の大半は作品の意味を理解できてない小~中学生なんだろうし、そういう評価などは気にせず見た方がいいと思うぞ。
ちなみにだが、「ガラスの花と壊す世界」もまた「NieR:Automata」同様、物語の核心部分は「生命って何?」という哲学的領域に踏み込んでるんだよ。

人間⇒突き詰めれば、それはDNA
DNA⇒突き詰めれば、それは情報

すなわち、人間=情報

つまり、宇宙に生命が誕生した本来の理由は、情報の収集、蓄積、保存を目的に生み出された端末(プログラム)ってことなんじゃないの?

「ガラスの花と壊す世界」のリモは、「綺麗なもの」を集める為に存在していた

と考えた時に、仮に人類が終焉した際、それを継承するのが「コンピュータプログラム」であっても何ら矛盾はないんだよね。
普通に考えれば、結論はそうならない?

そもそも私、アニメ見るのとかが大好きなんだけど、この「大好き」という感情もその奥深いところを突き詰めていけば、「情報の収集、蓄積、保存」という旧来からのプログラム、そういう端末としての機能が核になってるのかもしれんなぁ・・。


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