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【読書記録】好きな短歌¦俵万智『あとがきはまだ』より

そういえば私は短歌が好きなので、今日は短歌に関するnoteです。

俵万智さんの選歌集『あとがきはまだ』より、個人的に好きだなあと思った短歌を五首紹介していきます。

頁順です。



金曜の六時に君と会うために
始まっている月曜の朝

p.43『サラダ記念日』より

とにかくかわいいの一言に尽きます。
君に会うために1週間頑張れる歌。

私もこんな恋したいなあと思ったけれど、そういえば推しのイベントまでの数ヶ月間それを生きがいにして送る日々…。
もしかして同じでは(?)


短歌って、自己投影したくなります。

こういう分かりやすくきゅるきゅると心に届く歌、助かります。



やさしいね陽のむらさきに透けて咲く
去年の秋を知らぬコスモス

p.45『サラダ記念日』より

「去年の秋を知らぬコスモス」が、心に刺さりました。

コスモスたちは生まれたばかりの赤ちゃんなんだし、私ももう少し肩の力を抜いて生きようかなあと思えました。
「人生1周目」なんて言葉もありますし。


「やさしい」も「むらさき」もひらがなで表記されている点が、陽のあたたかさを表現しているようで好きです。



はつなつの公園を行くあんだんて
あなたの二歩と私の三歩

p.68『とれたての短歌です。』
*『もうひとつの恋』より

アンダンテ(Andante)とは、「歩くような速さで」という意味の音楽用語です。


当たり前ですが、歩く速さは人それぞれ異なります。
脚の長いあなたが大きい二歩を歩く横で、私は三歩も脚を回さなきゃ追いつけないのです。

追われる恋じゃなくて追う恋なのかなと推測してしまいます。
でも、別にそれを苦に思っているわけじゃなくて、ちょっと楽しんでいるような感じ。


この歌、語感も良いのです。
「はつなつ」の「つ」も、「あんだんて」の「ん」も、交互に出てくることで心地良いリズムを生んでいます。

それらがひらがな表記なのも、ふわっとしていてかわいいのです。
もしかして私、ひらがな表記に弱いのかも。


たぶん、この選歌集の中でいちばん好きな歌です。



はなび花火そこに光を見る人と
闇を見る人いて並びおり

p.83『かぜのてのひら』より

同じ花火を見ているのに、そこに光を見る人と
闇を見る人がいる。
なんだかハッとさせられました。

光が強ければ強いほど、闇も深くなるのですね。


これ、大河ドラマ「光る君へ」でも言っていました。
栄華を極める藤原道長に、安倍晴明が「光が強くなれば、闇も濃くなる」と遺言を残しています。


そしてこの歌、光を見る人と闇を見る人が「並びおり」というのが、なんとも残酷だなあと思いました。

誰が光を見て誰が闇を見るのかは、まさに紙一重と言っている気がします。



もう二度と来ないと思う君の部屋
腐らせないでねミルク、玉ねぎ

p.141『チョコレート革命』より

二度と会わない君の冷蔵庫の中身なんて、気にしなくていいんだよ( ;  ; )って思ってしまいました。

でも、もう二度と会わないけれど、君には元気に過ごしてほしいし、幸せになってほしいから。
だから冷蔵庫の中身なんて、どうでもいいことを気にしてしまう。

やっぱり君のこと、まだ好きじゃん( ;  ; )


なんて切ない歌なんでしょう、先生。

友人がこんな恋愛してたら、そっと抱きしめたいです。

私だったら、腐った牛乳飲んでお腹こわせよ!と思ってしまうかもしれません。
余談でした。



以上、五首です。

分かりやすく万智さんの初期の歌集ばかりからピックアップしてしまいました。

でも、20代の自分が共鳴したのが万智さんの初期歌集ということは、万智さんはその時々の等身大の歌を詠んでいるということでもあり。

歌人って、短歌って、なんて素敵なんだ〜としみじみとしました。



短歌を読ませていただくと、ありがたいことに、心があっちにもこっちにもぐわんぐわんと動かされます。

たった三十一文字で彼らの感情あるいは人生を追体験させていただいて、すると私の中に眠っていた感情が掘り起こされて、「あっ、自分にもこんな心があったんだな〜」と思わせてくれます。

ちょっと気持ち悪いかもしれないけれど、私が短歌を好きな理由はたぶんこれかもしれません。

他人を知ることで自分を知る、みたいな。



なんだか恥ずかしくなったので、この辺で終わりにします。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

そんな優しいあなたの“推し短歌”に必ず出会えると思うので、俵万智選歌集『あとがきはまだ』、未読の方は是非どうぞ。


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