シンクロニシティにおののく。
ポケットの着信を伝える振動があったのは、ちょうど弔問客も一段落して参会者がお清めの酒を酌み交わしながら、いくつかのグループに分かれている斎場のホールからタバコを吸いに席を立った時だった。
「はい・・・・」
「トキオ君?」
「はい、そうですが・・・・?」
「うちや、クミ子や」
「あぁ・・・・・・ひさしぶり・・・・」
「あのさぁ、チャコねぇって覚えてる?」
「あぁ、覚えているよ忘れるもんね」
「だよねぇ・・・忘れないよねぇ・・・」
「で、そのチャコねぇがどうしたのさ」
「亡くなっちゃったんよ、チャコねぇ・・・」
「またどうして?」
「乳がんだったんよ・・・」
「乳がんか・・・そりゃぁ・・・ねぇ」
「で、行ったのよ、お見舞いに。くるなっていわれてたんやけど、やっぱねぇ・・・いかなあかんやろ思て・・・」
「そっか、いったんか・・・で、どうやったの?」
「うん、いかんけりゃ良かったかも・・・でも、行っちゃったんだよね・・・うん」
「・・・・・・」
「あのさぁ、チャコねぇの弟クンがきててさぁ」
「あぁ・・・・例のね」
「そう、例の弟クン・・・」
「で・・・・・・」
「で、そんときは思いださんかったけど、チャコねぇが亡くなったってオテルマンから電話もらったときにね、トキオ君が言うてたことを思い出したんよ」
「なにそれ?」
「ほら、部の仲良い連中でウツボ公園で花見したとき、あったじゃん、あんときに言うたでしょ?」
「あぁ・・・・あれね、チャコねぇが弟クンのモノマネして優先座席にすわるっていうので、もめたヤツね」
「そうそう、障害者のフリして座席をせしめるんだって言ったチャコねぇに、君がそんなことしたらバチが当たるってたしなめて喧嘩になったこと、思い出したんよ」
「あれは、悪かったとは思ってないけど・・・」
「そやね、あれは誰がみても、チャコねぇがあかんわ・・・・うんオマケにひょこひょこ身体を引きずる真似までしたから、みんな引いたわ・・・うん」
「うん、あれはいかんよ、やっぱりね」
「だよね・・・・・そんでね、チャコねぇが亡くなったって聞いたときに、バチがあたったんやわって、思うたんよ、うち。そう思わへん?」
「そうかも知らんよ、だから迂闊なことは言わんほうが良いと思うよ」
「うん、バチかもしらん、バチあたったんかもな?」
「わからんけど、たぶん・・・」
「そやね、うかつなこと言わんほうがいいね。いや、きっとそうやわ、トキオ君の言うてること、みんな当たってるもん」
「何か言ってたっけ?」
「あのな、オテルマンやけど、トキオ君が言うたでしょ?不倫を潔癖症で嫌っている人も、ちょろって不倫してしまうことがあるって」
「そんなこと言ってたっけ?」
「言うたよ、3人で飲んでるときに」
「そういうことがあった気もする・・・・」
「でさぁ、あんなにウチの不倫を嫌ってた癖に、今オテルマン、和歌山に帰ってんけどさぁ、働いてるクリニックに出入りする医薬品の業者さんと不倫しとるんよ・・・・」
「えっ、オテルマン結婚してるの?」
「いや、オテルマンはしとらんけど、相手が結婚しててはって、子どももおるらしいんよ」
「そっかぁ・・・・そりゃ、なんだね、やっかいだよねぇ・・・・」
「ま、オテルマンがそれでいいって言っても、相手の家庭があるんやもん、はよ、どうにかならんといかんのよ・・・・どうしたらいい?」
「うぅ~~ん・・・・これだけは当人がどうにかしないと横から口出しもねぇ」「やっぱ、そうよねぇ・・・・、ど~にもこ~にもならんよねぇ・・・」
「うん、ならんと思う・・・・」
「わかった。なんか言うてスッキリしたわぁ~~、ありがとね。おおきにね。トキオ君のことやから忘れへんと思うけど、たまには思い出して電話いっぽんくらいかけてちょうだいよ~~」
「うん、わかった、仲良し3人組同期会、忘れていないから、いつかまた同期会しよう」
「ぜぇ~~ったい、やからね!」
「うん、絶対!」
「じゃ、切るね」
「バイバイ」
「ほんなら、さいなら」
「おさらばでごんす~~!」
「出た、出た!お別れの決まり文句ぅ~~!」
・・・・アッサリ切りやがった。
葬式の最中に、なんて話題でかけてくんだよ。
これって、あれか。
シンクロニシティってヤツ?
死因まで同じって、シンクロしすぎだろ・・・・。
ってことで、今回は
「シンクロニシティにおののく。」という小話でした。
※見出し画像のイラストは、メイプル楓さんからお借りしました。
では!
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