鸕鶿草葺不合尊と瀬織津姫
やまとみずほの国に生まれて 第五話挿話
「黄泉比良坂は墳墓ハウツー物語」にて、菅原道真は当初は祟りを鎮めるために祀られたと書いた。菅原道真は人として神になった最初の人と言われているのに思いっきり違和感がある。古代のヒーローやヒロインはみんな死んでから祀られて神になるのです。卑弥呼は天照大御神の説を唱える人は多いのですが、魏志倭人伝に登場する人物が最初から神のわけがないでしょう。
織田信長は自らを神格化したと宣教師フロイスは記録するが、徳川家康だって神になって江戸を守ると言っています。いわゆる終活として久能山と日光に葬れと遺言しましたが、ただの墓所ではなく両所とも東照宮として神社になっています。信長だって家康と同様に終活していただけだったのに、そのカリスマ性のため生きている間に神になったと誤解されたかもしれません。
日本神話の登場人物で鸕鶿草葺不合尊は神武天皇の父として登場しますが、古代王朝を開いた人物がいきなり登場するのも大きな違和感がありますが、「神生みは神様オールキャストの主役」にも書いた通り、「皆々様の神様は神武天皇とその皇后の媛蹈鞴五十鈴の血筋に繋がっているのだから、皆さん盛り立ててね」を意図してしているから、登場させるための苦肉の策です。
宗像三女神のタギツヒメが大国主と政略結婚しているのも、血筋を繋げるための苦肉の作だし、全ての神様を登場させるシナリオを書くのはとても大変なので、大国主に別名が多い理由としても腑に落ちる。すなわち大国主には一人で何役も演じてもらったのだ。全国を駆け回って国造りをしたことにして、「あんたとこの神様は、実は大国主と同一神だから同じ仲間だよ」と。
ただでさえ登場させる神様が多いのに、わざわざ身内の神様にも仲間だよと登場させる余裕はないでしょう。神道を信奉する天皇家にとって、大祓詞に読まれる瀬織津姫は完全に身内です。祝詞を上げる度に唱えるのですから、記紀に記す必要は全くない。しかし「黄泉比良坂」は日本神話の真髄です。崇(あが)めるのでなく、祟(たた)られないように祀れと教えています。
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