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回石進

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詩、俳句、小説などはこちらに貯めていこうと思います。Twitterでも呟いてます。
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#詩

歯抜けの唄

熟れた果実を齧ったときに
私の歯は折れたんだとさ

可笑しいじゃないか
笑っちゃうよな

あの紅く熟れたぐじゅぐじゅの実より
私の身の方が脆いんだとさ

長らく生きてみたけど何だか可笑しいじゃないか

笑っちゃうよ

笑い疲れて腹が減ってきたな
林檎があったな

ああ、歯がねぇんだった

神のご加護ってか?

柿の実

柿の実

柿の実が落ちている
秋の空が橙々色に広がっている

先っぽが枯れた広葉樹が石垣から溢れている

猫がふぁーっと欠伸をした
黄色い帽子の集団が指を指す

飛行機雲がスゥーっと空に吸い込まれていく
電線のカラスがバサバサしだす

夕日が落ちてゆく
子供たちの笑い声が家に帰っていく

柿の実が落ちている

聖人たらんとす君へ

秋の夕日に黄昏て
空飛ぶ雁(カリ)はもう消えて行く

待ち人は来ず

ただその持て余したるエネルギーを
ただただ腐らせている

伏せた目の奥の奥にある真ん中で
怨嗟の炎を燃やし続けている

待ち人は待っていても来ないよ
誰かの声に生返事を返す

その聖人のフリをした表情(カオ)のままで
君は消えていってしまうのでしょうか

グッバイ青春

残った喧騒遥かに遠く
さざめく波が足を浸して

灼けた肌を癒す風は
なんだか切なく季節を攫った

グッバイ青春ラムネの味は
シュワっと弾けたあの日のシャバダバ

熱を帯びて

熱を帯びてかち割った頭が徐々に冷めていく

向こうのほうからほら楽しそうな音楽が聞こえるだろ

夢なんて言葉で固めた自分の殻が徐々に縮こまっていく

ほら見てみななんて優しい表情なんでしょう

心に熱いもんが出たら遠慮なんて忘れて突き進め

タイミングなんて考えるな

ほら今そこがタイミングだ

火種を消すな 火種を消すな

惑わされたらそこで終わりだ

忘れるな忘れるな

どんなに囲い込んでも、

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君へのノート

君に見せた情けない顔
あれは君に見せたかった顔さ
だけど、君は去っていったね

分かっていたさ迷惑なのは
でも、僕の中の君はずっと
ずっとそんな僕の背中を押してくれたよ

だけど、君はやっぱり去っていったね
別にもういいんだけどさ
分かっていたことなんだから

僕は君とずっと会話していたんだ
君についてずっとね
もちろん僕のこともたくさん話した

全部君との思い出さ
忘れたくなかった
だから、全部

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瞬きが多い君

君は瞬きが多い

いつも一緒にいるんだけど
君は瞬きが多いね

もしかしたら埃が沢山あるから瞬きをしているのかと思ったから
僕は周りのゴミ取り払ってあげたんだ

それでも君は瞬きが多い

一緒に映画を見ている時でも
君は瞬きが多いね

もしかしたら何か恐いものを見たくないから瞬きをしているのかと思ったから
僕は君を周りの恐いものから守ってあげるんだ

それでも君は瞬きが多い

もしかしたら君は目が

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武器

マシンガン抱え込んで

標的を探し回って数十年

勝負所を見失ってるね。

引き金の引きどころもターゲットも

後回しにする理屈が尽きました。

6発式のリボルバーに

1発の銃弾を込めて

コメカミに当てて幾数年

指先に力が入りません。

元々手にする武器が違ったのかもしれません。

拝啓、缶詰の中にて

行き先のない悲しみに

ブリキの蓋をただ落とし

缶詰の底で体育座り

全てを閉ざして何も観ず何も聴かず
ただ1人になり独りになり
自分だけただ一人になりたかった

薄暗い缶詰の中は静かだけど
ブリキの隙間からソトの音が入ってくる
光と陰の動きを感じる

どれだけ蹲っていただろう
鳴り止まないソトの動きに惑わされて
ボクは不安にかられた

どれだけブリキの蓋を見つめただろう
繰り返す光と陰の交差に

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迷い道

昔の明日は今より遠く
昔の今日は夢に煌めく

明日の昨日は煌めく陽炎
明日の今日は闇夜の光

今日の昨日はノスタルジーで
今日の明日は妙にリアルだ

回石進