#ペイソス
消えた金魚(前編)(一分で読める小説)
テレビの上にあるガラス鉢。
中には美味そうな赤い魚。
でも、ご主人様は大切にしているみたいで
毎日餌をやっている。
あの魚を僕が食べたら叱られる。
最近僕の餌にはろくな物がない。
仕方がないので、外で調達している。
ご主人様は、今日も元気も無く家にいる。
以前はお勤めに出掛けていたのに不思議だ。
今日気がつくと魚が居ない。
どうしたのだろう?
昨日までは、元気で泳いでいたのに!
ご主人様が僕
白い靴を履いていた人(一分で読める小説)
白い靴が目立つ、あのお爺ちゃん
毎日この道を散歩している、あのお爺ちゃん。
私の家の前で、腰を下ろし休んでいた、あのお爺ちゃん。
「今日も姿が見えないな〜。
どうしたのだろう?
名前も知らないお爺ちゃんだけど、
会えないと、何だか寂しいなぁ。」
今日、何故かゆっくり走って行く
白い色の霊柩車
私の家の前を名残り惜しそうに通って行く。
霊柩車の中に目を向けると、
抱かているあのお爺ちゃんの遺影。
あほやん バス旅行に!(220字の小説)
君と初めて会ったのはバス旅行。
お互い一人で来ていたね。
君も僕も、失恋感傷旅行。
他のお客は皆んな、カップルか家族連れ。
バスの席、隣同士になっていたのは偶然ではないみたい。
初めて会った二人だけど、何故か打ち解けたね。
二人とも似た者同士だからかな?
君と一緒に歩いたね。
君と一緒に食事もしたね。
でも、日帰りの安価な旅行。
初めて会った日が最後の日だった。
連絡先も聞くことが出来ない
あほやん 切望から・・・・(1620字)
待ちに待ったクリスマス。
好きな彼女と二人で過ごせるクリスマス。
そして、今日こそ・・・。
デートコースを順調に済ませ、最後のディナーに彼女をいざなう。
此処は高級料理店。
予約もそう簡単には取れないお店。
二人きりの個室に案内された僕は、夢心地。
彼女もきっと喜んでくれているはずだ。
彼女の笑顔でそれが判る。
美味しそうな料理が運ばれてくる。
豪華な料理を見て、微笑む彼女。
その彼女の姿を
心の声(550字の小説)
人の心の声を聞く能力を持つ事は、ある意味怖い事でもある。
私がどの様に人に思われているか全て解ってしまう。
勿論、嬉しい時もあるのだが。
ある日、電車の中で男の心の声が聞こえた。
向かい側に座る女を狙っている。
それを解っていながら、私には防ぐ術がない。
男の眼光は鋭く、獲物を追う獣の様だ。
次の駅で、女は降りる。
それを追う男。
私は、怯えながら女の無事を願う。
彼女の身に何も無ければ良いが