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His heart was darker than the starless night — 星のない夜よりも

His heart was darker than the starless night
For that there is a morn
But in this black Receptacle
Can be no Bode of Dawn

彼の人の心は星のない夜よりも暗い
明けない夜はないというけれど
この真っ暗な器の中には
その兆しすら見えないのだから


二つの黒い入れ物があった。

中を覗いてみても真っ暗で、何が入っているのか分からない。もしかしたら、何も入っていないのかもしれない。
どちらも真っ暗なのだから、その暗さを比較することなどできないと人々は思い込んでいた。
そこに一人の詩人がやってきて、どちらがより暗いかを当ててみせた。
光も使わずに。
なんともあっさりとした彼女の手ぎわに、多くの人々は戸惑っているようだった。なるほどと感心する者もあれば、眉間に皺をよせその場で考えこむ者もいた。
僕は霧のように立ち去る詩人の背中を追いかけようと、人の波をかいくぐった。
影は一度大きく揺れたかと思うと、もう地平線の向こうへ沈んでいて、
僕は人の輪から外れて立ちすくんだまま涙を流していた。
彼女は誰だったのだろう。
お礼を言いたい気もしたが、地上には足跡を残さずに行ってしまった。

黒い入れ物とは一つは地球で、
もう一つは、僕の心だった。


『THE COMPLETE POEMS OF EMILY DICHINSON』
THOMAS H . JOHNSON, EDITOR

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