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短編集

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短編集まとめ
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#文学

毛皮を纏う液体

世界が巨大な冷凍庫に様変わりしてしまった。 入れ小細工の様に、小さなシェルターの様に、こ…

m.
1年前
10

落下

特に理由はなかった。 これと言って何かあった訳でもなかった。 唯、街に数個しか無い高層ビ…

m.
2年前
6

ラズベリーのゼリー

合成されたチェリー味のキャンディで 舌が赤く染まってベタついている。 少し前から、鈍色の…

m.
2年前
9

シェルター

雨粒が、やけに酷く音を立てて 窓硝子を何度も叩くので 重い脳を無理矢理持ち上げ 完全遮光の…

m.
2年前
6

雨の街

鈴蘭の街灯がぼんやりと、雨に濡れた寂れた街を、憐れむように照らしている。 通りには人影は…

m.
2年前
4

オートマチック

ニオイスミレの居住地で 川縁の白線の如きナルキッソス 水面映る細胞と水面浮かぶ細胞へ 倒錯…

m.
2年前
3

朝露の硝子

その朝、窓辺に神は不在だった 神の不在によって、愛の存在が証明された 愛の存在によって、死の匂いが濃度を増した さようなら さようなら さようなら 三度繰り返し 小さな痛みで割れた唇に気付く 薄灯の部屋、汚れた天井から 小さな秋花が降り注いでいた 花が散った 花が散った 花が散った 数度目を瞬いて 恐ろしく早い時間の経過を知る 爛れた口内で、もう一度さようならを紡いだ 朝露に濡れた露草が足に触れる 爪先はひどく、冷たく、青い 沈黙によって構成された空間で 薄紅色の

夢見草

 不意に思い立って、町外れの山奥の古い精神病院へ、叔父へ会いに行くことにした。  何とな…

m.
3年前
12

花と毒蛾

心臓の奥の奥に、いつからか植え付けられた、小さな不安の種は、白い太陽光の下で不意に芽吹き…

m.
3年前
6

不正解の討論

午前3時の月明かり。 満月の光は、昼間の太陽よりはるかに明るかった。視界の端に、極楽鳥の…

m.
3年前
10

冬虫夏草

もう長いこと結晶化したままの心臓から、ある日小さな新緑が芽吹いた。 別段気になる程の変化…

m.
4年前
6

テディベア

記憶を反芻する。記憶を回遊する、生産性の無い作業を、ただ繰り返す日々を送っている。 ベッ…

m.
4年前
6

オートマチック

真昼の空から砂漠の砂が 夜闇の木漏れ日抜けていく 空の一等端のあそこに 空いた無数のあの穴…

m.
5年前
7

夾竹桃

先生、もうずっと視界が藍色なんです、先生。 あ、いや、灰色じゃないんです、あの清々しいような寂しい鼠の色でなくて、藍です、藍。あの海のいっとう深い場所のような、愛みたいな重苦しさを讃えた、禍々しい青です。 藍色なんですよ。 そいでね、先生、今日僕は、あの木枠の窓越しに見える緑のその向こうの、夾竹桃の根元に、僕を置いてきたんですよ。そうそう、あの寂しい道の脇にあるあの夾竹桃の木です。 夕闇のカーテンの向こうに隠しておくべきだった僕を、あの気の早い夾竹桃が、もう花なんて