朝露の硝子
その朝、窓辺に神は不在だった
神の不在によって、愛の存在が証明された
愛の存在によって、死の匂いが濃度を増した
さようなら
さようなら
さようなら
三度繰り返し
小さな痛みで割れた唇に気付く
薄灯の部屋、汚れた天井から
小さな秋花が降り注いでいた
花が散った
花が散った
花が散った
数度目を瞬いて
恐ろしく早い時間の経過を知る
爛れた口内で、もう一度さようならを紡いだ
朝露に濡れた露草が足に触れる
爪先はひどく、冷たく、青い
沈黙によって構成された空間で
薄紅色の雲が震えている
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