雨の街
鈴蘭の街灯がぼんやりと、雨に濡れた寂れた街を、憐れむように照らしている。
通りには人影はなく、通り沿いにある数店の飲食店から溢れる光と笑い声で、人の気配を察知するしか無かった。
閉鎖的な屋内を飛び出して、際限なく開かれた屋外にいるのに、何故だか世界から遮断されたようで、ほのかな疎外感が少しばかり心地よかった。
街路樹の緑も、道なりに植えられた花達も、雨粒できらきらと装飾されていて、色彩も一層濃く浮かび上がっていた。
それらが全て、自分のもののように思えた。
窓と窓と窓が並んで、光と笑い声を溢している。
溢れた光と音達がまた、外、のきらめきを増幅させていた。
雨雲が少しばかり、引き伸ばされた羊毛の如く薄くなり、ぼんやりと溢れるような朧月が、金属の茎を持った鈴蘭と肩を並べている。
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