お山の大将 a King of my Hills
いつもそうだが、私は自己紹介の延長のような話ばかりする。なぜならば、いつも自分自身をうまく説明するのに失敗している気がするからである。なぜそのような気になるのか。それは相手からもらいたい反応を引き出せなかったり、相手に自分の行動を容認してもらえなかった経験や記憶から来るだろう。ではどうするか。自分自身をうまく説明するためには、「自己分析」をおこなったり、第三者に「診断」や「弁護」や「通訳」をしてもらうことを依頼するなどの方法があり、実際そうしてきた。
そして、そういった自己紹介や自己探求、自分はどうしたら周囲とうまくやれるかといった課題のなかで、自分の「居場所」を確保するために活動を拡げている。例えば、自分自身でごく簡単な「このゆびとまれ」をして人を集めてオフラインでサークルの幹事を継続している。以前も書いたようにそれは20年程度継続している。また、discordサーバのような自分自身がホストのクローズドな掲示板も立てている。あるいは旧Twitterで発信したり会議通話(=スペース)をおこなうこともある。
しかし、こういった活動のどれをしていても、「自分は〝お山の大将〟だな」との思いが抜け切れない。言い換えれば独善的であり、誰も私の意図を理解しないまま、あるいは説明不足のまま淡々と活動を継続してしまうということである。
それには幾つかの理由または原因があるだろう。例えば、単に私がその集団で絶対達成すべき共同目標を掲げていないこと、例会の運営に必要な小目標(例えば会場の確保や動員など)について情報共有をサボっていることもあるし、私自身、根回しや飲み会や或る種の営業が得意ではないこともある。それは一部には私の自閉症スペクトラムまたはアスペルガー症候群(ASD)の特性による寄与もあるだろうし、私個人の人格形成が不均衡で、孤立しがちであり、個人主義的になったからというのもある。
これらの先天的な部分、後天的な環境や学習、不適応などの結果、私は集めた人々の誰とも或る意味では向き合わず、一人で「やるべきこと」や私が「理念」だと思いこんでいることに沿ったことを実施し続けている。なぜそれを一人でやるのか?ともし問われたら、この世で最後まで信用し依存できるのはただ一人自分しかいないという前提をおいているからである(権限委譲 empowerment できない人!)。すなわち、何かに頼ろうという前提では安心を得ることができず、対人関係が何らかの原因で壊滅したとしても自分一人だけで事を成し遂げるべきだ、またそのように体制を組むべきだと思ってしまうからである。だが、それはこだわりが強過ぎるぞ、極端だぞと言ってもいいし、端的に狂った考えだろう。なぜならば、それはやっぱり客観的にみれば、少なくとも説明抜きには理解不能な行動を引き起こしているからである。一方、ここまで継続できたのは狂っていたからだ、とも言える。
このような現状が寂しくないわけではない。また、私自身自分が一種「貧しい」とも感じる。私はでっかいことを成し遂げたいと思わないわけではない。ボトムアップしかできないからそうしているだけで、野心を持ってトップダウンで行くべき道を指し示し、ビジョンを共有して、他の人々に希望と実益を提供できるとしたら、それは大きな夢であり、望ましい。また、そうする中でチームワークを実現し、ひとりのプレイヤーあるいはひとりのリーダーとして認めてもらえるとしたら、これもまたカッコいいことであり、憧れの立場である。
だが、現在はそうではない。荒れ地に出っ張った幾つかの丘があり、私はそこに粗末な旗を指して、幾つかの丘で「お山の大将」をやっているだけだ。そして、たまに見物に来た人とおしゃべりする。ときにはトンチンカンなやり取りをしてしまって来てくれた人とうまくいかないこともあるのだが、そういう人はただ、離れていくだけだ。他にも丘や山はたくさんあるのだから。相手の気分を害して申し訳ないなどと自分勝手に悔やんでも、すべては後の祭りである。
このまま「お山の大将」業界、あるいは井の中の蛙業界で埋もれていくのだろうか? そうかもしれない。あるいは誰かの軍門に下ってそこで自信を深めるのかもしれない(実際、職場での私はそのようなものだ。大きな組織のなかで従順に動き、周囲の人に気に入ってうまく使ってもらえることに心を砕いている。私の生活のなかで唯一お山の大将ではない時間帯である)。
いずれにせよ、お山の大将はあまりいいイメージではないのだが、私の中でそれがそもそもそんなに悪いものだと思い込まなければいけない理由があるのかな??とも最近思い始めている。もちろん、お山Aではお山の大将だが、お山Bではみんなとうまく協力するといった両立も模索可能かもしれない。どこからどう手を付けてみたらいいものか……。
(1,991字、2024.07.12)
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