トラウマ治療:ソマティック・エクスペリエンシング(SE)体験③ 自分が安心できること(リソース)を見つける、増やす

私がお世話になった4人のSE(ソマティック・エクスペリエンシング)のセラピストからよく言われたのは、「あなたにとって、安心できること、好きなもの、好きなこと、場所でも何でも良いので、それを思い浮かべてください」ということでした。

トラウマを引き起こした体験に向き合うには、自分自身の中にまず、安全・安心な感覚を持つことが大切で、その感覚を持ちながら、少しずつ、トラウマの経験に向き合っていく、というのがSE(ソマティック・エクスペリエンシング)のセラピーです。

トラウマを引き起こした経験は、圧倒的なもので、だからこそ、自分の心と身体に大きな影響を与えてきたので、何の準備もなく、一度にそれに向き合うのは危険で、まずは、自分が安定した感覚を身に付けていく、何かあっても、すぐにそこに戻れるような状態にしてから、少しずつ、行きつ戻りつ、過去のつらい経験に向き合う、というのがSEの方法です。

ですので、セラピストから、何が自分にとって、安心・安全と感じられるのか、そしてその安心・安全の感覚というのは、身体のどこで、どんな風に感じられるのか、ということを繰り返し確認されました。
この、自分にとって、安心・安全と感じられることを、「リソース」と呼びます。SEのセラピーでは、「リソースの確保」と言われます。

トラウマ回復に必要不可欠な条件の一つとして、一人でもできることを書いてみたいと思います。
それは「リソースを見つけ、増やし、使うこと」です。
リソースとは、「自分の内側と外側にある、自分にとって心地よいもの」
 内側のリソース・・・心地良い身体感覚
 外側のリソース・・・自分を元気にしてくれるものすべて:あなたが好きな人や、好きな人々の集団。動物、ペット。趣味。自然。自分が好きな場所。スピリチュアリティ。

リソースは誰もが持っている。「あなたが今日まで生き延びられたのは、一体何が良かったからでしょう?」
リソースは多いほどいい。トラウマを癒すためには、自分の内側と外側に安心・安全を作ることがまず先。それをどうぞ、覚えておいてください。

藤原ちえこ『本気でトラウマを解消したいあなたへ』(p.174-186、要旨)

身体に刻み付けられた発達性トラウマを解放していくことは、簡単ではありません。しかし少しずつ自分に心地よい「快」の感覚を与えていくことで、神経系の過覚醒を和らげていくことが可能です。「快」の感覚を味わうことによって、少しずつ、「安全である」という感覚を膨らませていくのです。

散歩やウォーキング。自然の音を聞く。神社仏閣など崇敬の念を感じる場所を訪れる。動物とあそぶ、動物に触れる。ヨガ・ダンス・スポーツ。笑う。歌う。自分に心地よい音や声を聴く。あそび。食事。

花丘 ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?: ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』(p.126-153、要旨)

私の場合、セラピーの最初の頃に、安心・安全を感じられたのは、「布団に入って、本を読むこと」くらいだったので、そのように言うと、最初のセラピスト(心理職でない)からは、「それだけではリソースが足りない、もっと増やしてください、あと3つは増やしてください」等と言われました。
その他のセラピスト(心理職)は、私の(ほとんど唯一だった)リソースについて、「いいですね~」とか、「お布団、あったかくていいですよね!」と共感してくれました。

確かに、リソースは、多い方が良いと思います。ですが、本当につらい時は、次々とリソースを増やせる状態にないし、むしろ、無理に行動することで、自分に余計に負荷をかけてしまいます。

セラピーを受けながら、下園壮太さんの本を読んでいて「おうち入院」という言葉を知りました。本当につらいときは、「おうち入院」で良いと思います。それで少しずつ、できそうなことを増やしていけば良いと思います。下園さんのリソースの見つけ方は、とても参考になると思いますので、以下に引用します。

疲労を回復する最も効果的な方法を、私は「おうち入院」と呼んでいます。
入院中は、人は治療を受け、回復するためにじっとしています。パソコンを持ち込んで仕事なんてしていたら、医師に怒られますよ。入院しているつもりで、ぼーっとする。スマホは見ない、本も読まない、家事もしない。ただ、眠ります。眠ることによって、頭の中で必要のない情報がお掃除されて、重たかった脳のデータもうんと軽くなるのです。
休息タイムは、人や仕事からも距離を置きましょう。SNSのチェックもやめます。

あなたが、あまりエネルギーを使わず、リラックスできて、リフレッシュできること、楽しいと思えることは何でしょうか。
何か小さなこと、目の前の楽しいことに集中します。映画でも、本でも、ゲームでも、音楽でも、掃除でも、料理でもいい、パソコンのフォルダーを1つ整理する、なんてことでもいいのです。ただし、やりすぎて疲れないようにしなければなりません。

下園 壮太『自衛隊メンタル教官が教える心をリセットする技術』(p.81-83, 119)

ストレスケアの第一歩は「刺激から遠ざかる」こと。疲労の原因であり、ストレスのもとになっているもの。ストレスケアをする際には、まずはそれらから離れましょう。
刺激(らしきもの)の前から立ち去る。明らかにストレスだと感じる刺激がある場合は、まずそれから距離を取ってみてください。そうでない場合は、とりあえず自分の生活の大きな部分を占めている活動から距離を取ってみます。

刺激から遠ざかってストレスケアが終わるかといえば、そうではありません。そこから、ストレスで傷ついた心身を回復させなければならないからです。それには「休養」が必要なのです。とにかく、ひたすら心と体を休ませる。「休養」こそが、もっとも効果的なストレスケアです。傷ついた心と体を回復させるためには、じっくり休むことが最も大切です。

休養とともに生活環境を整えることが重要です。ポイントは、安心感です。静かで、穏やかな環境の中で、ゆっくり食事や睡眠、読書や静かな趣味ができる環境になっていればいいのです。食事も重要ですが、休養するときはあまり栄養や規則正しさにこだわる必要はありません。コンビニ食で十分です。安心できる環境で好きなものを食べましょう。

疲れをためている今、必要なのは引き算の発想、何もしないことです。生産的なこと、積極的なことは何もせずダラダラ過ごす。このダラダラ過ごすことでしか、体と脳を休ませることはできないのです。「ダラダラ生活」があなたをストレス状態から復活させます。

休息中は十分に睡眠をとりましょう。休息中は、ひたすら寝ることを心がけてください。無理に眠ろうとせず、眠くなったら寝ると考えましょう。二度寝や三度寝、何なら四度寝だってOKです。とにかく充電できればいいのです。

悩みは元気になるまで「棚上げ」しよう。悩みは「ほったらかし」にしよう。今はその悩みを解決することよりも、体力を回復させることに集中すべき時期です。そのためには、悩みをポイっと棚上げして、元気になるまでほったらかしておきましょう。思い切り、未来の自分に委ねてしまってください。

充電中の趣味には、ひとりでコツコツできるものがおすすめです。心身が疲れたり、罪悪感を覚えたりするようなものは避けましょう。「ある程度、集中できて、嫌なことを考えなくてもいいが、そのこと自体にあまりエネルギーを使わない趣味」を行うと良いでしょう。おすすめは、料理、ガーデニング、片付け、ゲームなど。

運動は、「元気なときの趣味」と心得よう。運動は、エネルギーを消耗する行為です。元気なときにはおすすめできますが、ストレスで疲れ切っているときには避けてください。
休養(充電)中の運動でおすすめできるとしたら、ウォーキングやヨガといった、ひとりでできて、体がさほどクタクタに疲れることのないものがいいですね。ただし、ウォーキングのような軽い運動とはいえ、自分ができる範囲で行うのが原則です。心地いいなと思える程度にとどめ、過度な負荷をかけないように心がけましょう。

アルコールを摂取すると、確かに寝つきはよくなりますが、睡眠の後半になると覚醒状態へと切り替わるため、途中覚醒や早朝覚醒を引き起こしてしまいます。つまり、熟睡ができないということです。
アルコールをやめられない人には、ノンアルコール飲料がおすすめ。最近のノンアルコール飲料はよくできていて、味やにおいが本物のアルコールにとても近いものばかりです。これでうまくやっている人も多いので、ぜひ皆さんも試してみてください。

下園壮太『元自衛隊メンタル教官が教える 心を守る ストレスケア』(p.130-153、要約)

夜寝る前に、その日にあった3つの良いことを思い浮かべる習慣を続けていくと、次第に気分が明るくなり、希望がわいてくるという報告があります。(略)
発達性トラウマを抱える人は、悲観的なこと、うまくいかないことに意識を集中する傾向があります。そのため、周囲からもよくないことの兆候を探し出す癖がついています。ですから、それを良いことを探す習慣に切り替えていくことがとても大切なのです。

良いことと言っても、発達性トラウマを抱えている人は、なかなか見つけられないかもしれません。3つの良いことも、とても小さいことから始めるのがポイントです。「朝起きたら、スズメの声が聞こえてかわいいと思った」「トーストがこんがりとうまく焼けた」「朝のコーヒーがよい香りだった」というようなことに意識的に気づくようにします。

発達性トラウマを抱える人は、小さな変化を少しずつ繰り返し、身体に落とし込んでいくことが大切です。

花丘 ちぐさ『その生きづらさ、発達性トラウマ?: ポリヴェーガル理論で考える解放のヒント』(p.151, 173)

これを書きながら、夜寝る前に3つの良いことを思い浮かべるのは、とてもいいなと思いました。誰かに何かをしてもらった、という良いことよりも、他人がからまないで良いことの方がいいかも・・・鳥の声も、トーストもコーヒーもそうですね。私も今晩から始めてみようと思います!

これに「ホ・オポノポノ」の4つの言葉「ありがとう、ごめんなさい、ゆるしてください、愛しています」を組み合わせたら、すごく良いかも・・・私も今日からやってみます!