DEIへの理解が「ものづくり」を変える。共感を生むコミュニケーションの原点とは | ハリズリーグループ
「フェアな労働市場をつくる」をミッションに掲げるXTalentは、DEI向上を目指す企業を対象としたアンコンシャス・バイアストレーニング(以下、UBT)を提供しています。
様々な企業のDEIの在り方にフォーカスした「#DEIのカタチ」シリーズとして、今回はハリズリーグループ取締役の三木芳夫氏にインタビューを行いました。
ハリズリーグループは「土屋鞄製造所」をはじめとするグループブランドの運営、老舗企業の支援、次世代の小売産業の周辺領域への投資など、ものづくり市場の活性化に向けて多様な事業を展開しています。
三木氏が思う企業がDEIに取り組む意義、他企業に伝えたいこと、XTalentのトレーニングを受講した感想等を伺いました。
DEIの浸透レベルを、
外部目線で測定しておきたかった
ーー御社は土屋鞄製造所によるジェンダーレスランドセル「RECO(レコ)」や、ものづくりをする人々の視点にフォーカスしたWEBメディア「OTEMOTO」など、DEIの考え方を重視した事業を複数展開されています。グループ全体として、DEIにどのような姿勢で向き合っているのでしょうか。
我々はDEIを「お客様の共感を得るために外せない取り組み」だと認識しています。
ブランド運営にあたっては、「世の中の関心ごとに合わせたブランドコミュニケーション」を行うことによって、お客様のエンゲージメントを獲得してきました。土屋鞄製造所のジェンダーレスランドセルはその一つです。
同時に、DEIは従業員のエンゲージメント向上にも大切な概念だと捉えています。近年ハリズリーグループでは新卒採用に力を入れており、若年層であればあるほど、多様な価値観の持ち主であることを実感しています。
もし若い世代が自分たちと同じ環境で育ってきたと思い込んでしまうと、一緒に働く際にさまざまなエラーが発生してしまうでしょう。若い人たちを受け入れる自分たちこそ、DEIの考え方をしっかりと理解していなければならないと思います。
ーーDEIを徹底するために、社内でどのような取り組みを行ってきましたか。
ハリズリーグループでは各企業を横断する形で、部門ごとにワーキンググループを形成しています。その一つにサステナビリティをテーマとしたグループがあり、扱われる話題はDEIを含めて多岐にわたります。新卒採用において性別の事前確認をやめたのは、ワーキンググループの提言を受けて実行した取り組みの一つです。
またグループ会社の中には、ジェンダーに対する理解を深めるために外部トレーニングを活用しているところもあります。
ーーすでにグループ内にDEIの考え方が根付いているように感じますが、今回UBTをご利用いただいた目的を教えてください。
自分たちでは「DEIが根付いている」と思っていても、それが客観的に見て適切な水準なのかはわからないですよね。普段から自分たちが当たり前に行っている行為を改めて捉え直すことで、新たな気づきを得られるのではないかと思います。
それに、近年は外国籍の方を採用するケースも増えています。これから会社が成長してより多様な人材を受け入れていく上で、DEIやアンコンシャスバイアスに関するトレーニングを今受けておくことに価値があるのではないかと考えました。
UBTをきっかけに動き出した
「グルーミングガイドの見直し」
ーーUBTを受講して、どのような変化がありましたか?
今までDEIに関する取り組みは各社ごとに行っていたのですが、UBTをきっかけに「グループ全体としてDEIにしっかり取り組んでいこう」という意識を醸成できたのは非常に大きかったです。
従業員からは「多様性を認めることや、周囲の意見を聞くことの大切さを改めて知った」という感想がありました。アンコンシャスバイアスについても「自分自身の知らなかった考え方の癖がわかった」といった反応があったので、やってよかったですね。
加えて、DEIを推進するためにやるべきことのタネを撒けたのは、思わぬ収穫でした。UBTの受講をきっかけに、グループ各社のグルーミングガイド(身だしなみガイドライン)の見直しが始まっています。
ーーグルーミングガイドの見直しとは、具体的にどのような活動なのでしょうか?
グルーミングガイドとは、商品の販売を行う従業員がブランドの世界観を体現できるように、身だしなみや振る舞いの基準を定めたものです。
しかし従来のグルーミングガイドには、ジェンダーの観点からあまり適切とは言えない規定が含まれていました。従業員から「男性は坊主が禁止だが、女性に同じ規定がないのはおかしいのではないか?」という指摘を受けたのですが、確かにその通りですよね。
このような観点から、グルーミングガイド全体を時代に合った内容にアップデートする作業を進めています。
ーー素晴らしい成果だと思います。今回のトレーニングでは、1回目でDEIやアンコンシャスバイアスの概念に関する説明を行い、2回目でどのように行動につなげていくのかを皆さんに考えていただきました。
1回目のトレーニングが終わった直後は、アンコンシャスバイアスやDEIといった概念が意味することを認識はできたものの、正直それをどうやって現場に生かしていくのかについては、まだぼんやりしている部分がありました。しかし2回目のトレーニングがあったことで、学んだ内容を実際の行動につなげやすくなったと思います。
UBTの受講によって、社内でDEIに関するコミュニケーションを取る際に立ち戻れるものができました。今後もトレーニングの効果を持続させられるように、何らかの仕組みを考えていければと思っています。
DEIを、お客様にとって
価値あるものにするために
ーーこれからDEIに本格的に力を入れたいと思っている企業に対して、伝えたいことはありますか?
DEIの活動は形式的なものではなく、お客様に価値をもたらすものでなければならないと思っています。そのために大切なのは、日々アップデートされるお客様の心理をインプットし続けることではないでしょうか。
世の中に受け入れられる商品を創るためには、お客様の想いを知ることが欠かせません。その際に、DEIの考え方は絶対に外すことができないものだと思います。
ーー最後に、ハリズリーグループにおけるDEIの今後の展望をお聞かせください。
日本全体でDEIを息を吸うように当たり前のものにしていくためには、DEIの考え方を大人になってからではなく、小さい頃から感じながら育っていくのがベストだと思います。
幸いにもハリズリーグループは、人生の節目でお渡しするプロダクトを多く手掛けているので、貢献できる面は大いにあると思っています。一人ひとりの多様性がポジティブに受け止められる世の中になっていくことに、事業を通じて寄与できれば幸いです。
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ーSTAFFー
企画:筒井 八恵(XTalent株式会社)
取材・執筆:一本 麻衣
撮影:森田 純典