和高

活字中毒者。noteを始めて一年。思い出したように更新しています。長編ファンタジー小説を始めました。

和高

活字中毒者。noteを始めて一年。思い出したように更新しています。長編ファンタジー小説を始めました。

マガジン

  • 獣の時代

    このマガジンは。。。 かつて世界の始まりと共に生まれた神の獣・神獣『亜の獣』とその配下である4匹の獣の力を受け継ぐ『聖獣』と呼ばれる存在、それを排除しようとする神獣を封じた現神獣『朙(めい)の獣』、そして現在の多層世界を崩し混沌を願う『魔界』の物語をまとめたマガジンです。 更新の頻度は毎週1回を目指しています。

  • 週刊noteマガジン【@非公式】9月18日号

    今週読んだnoteの記事。 面白かったもの、気になったもの、コト、ヒト、日常。

  • 週刊 noteマガジン【@非公式】

    今週私が読んだnoteの記事をまとめています。 オススメかといわれればそうではないのですが、実はお気に入りもあったりする、微妙なラインナップとなっております♡

  • きんの砂

    小説:きんの砂  祖父から古書店の鍵を受け継いだ中山亞伽砂。祖父が残した店を訪ねた彼女は、そこがただの古書店ではないことを知る。 少しずつ書いているきんの砂をまとめると共に、関係するイラスト、作品に関する書き手の考え(愚痴ともいう)も収録する場所です。

最近の記事

  • 固定された記事

鳥居⛩の向こうに見えるモノ

視界を遮るものが何もない、見渡す限りの海。 人もいない平日の海岸。耳を澄まし遠くを見ていると、人生意外とどうにかなるんじゃないかと不思議な力が湧いてくる。これまでの人生もそうやってきたし、これからの人生もきっとそう。 神社仏閣、動物全般、旅、イラスト、楽しいこと。読書、映画鑑賞、マンガ鑑賞、ドライブ、犬遊び。 少しずつでも、好きなことを書いていこう。

    • 10年ぶりの再会と6ヶ月

      某月某日 10年ぶりに知人と会う。 といっても10年前もそれほど親しい間柄だったわけではなく、 むしろ触り方に困るような、ある種近寄りがたい存在だった。 なのに何故会うことになったのか。 多分それは「会うべき人」で、「話をするべき人」であったからだと思う。 根拠はと問われれば、科学的なものは何もない。 ただの直感というか霊感に近いもので、大概外れたことはない。 「外れはない」と書けばまた「当たり」「外れ」の根拠は、と問われてしまいそうだが、実際には人と会うことに「外れ」は

      • 信じる力、それは目に見えぬ力。生き残るための力、それは手に入る力。どちらも闘う力であることに変わりはない。

        長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 7、霧の向こう側② 「これ以上詳しく話している時間はありません」  答えた瞬間、秋山の顔が曇った。いや、何かを見てはっとしたような表情だ。 「どうしたんです? どうせあなた方は神の存在も信じていないのでしょう? なら無駄に止まるよりも先に行くべきだと言ったまでです」 「確かにいきなり神様とかいわれてもだけど」  口にはしたものの尻すぼみに小さくなった砥上の声で秋山は我に返った。他のみんなは瀬保の変化に気づかなかったようだ。

        • 神と神話の理想と現実。

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉7、霧の向こう側①  湖澄はパーカーを外し、顔を晒した。と言っても壮汜の姿だが。 「瀬保」という名に芦川の顔色が変わったが、そのことに関して何もいう気はないようなので湖澄もあえて気づかないことにした。余分な話をしている時間はないはずだが、湖澄はこの偶然の異分子とも言える男に声をかけた。 「あなたは何者なんです? なぜここにいるのですか」 「お、俺は島を管理する公園管理局の者だ。名前は芦川喜太郎。見回りの最中で、彼らを見つけた。こ

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        鳥居⛩の向こうに見えるモノ

        • 10年ぶりの再会と6ヶ月

        • 信じる力、それは目に見えぬ力。生き残るための力、それは手に入る力。どちらも闘う力であることに変わりはない。

        • 神と神話の理想と現実。

        マガジン

        • 獣の時代
          36本
        • 週刊noteマガジン【@非公式】9月18日号
          9本
        • 週刊 noteマガジン【@非公式】
          11本
        • きんの砂
          28本

        記事

          緊張感が増すばかりの山小屋の中で、砥上親子だけが不自然なほどの冷静さを保っていた

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 6.暗き森⑤  山小屋の中の空気が、一気に警戒感を含んだものに変わったのがわかった。 「私たちは駿河洲から」  答えかけた遥希に芦川が「ちがう」と首を振る。 「どこのルートを通ってきたんだ? 旧ハイキングルートは禁足地帯を横切るから入れないはずだ」  はっきり入れないといい切るからには、人や動物が通れないようになっているのだろう。 「適当に歩いてたら、森の中に入れたんだ」  話ながらも腰に当てていた遥希の手が、体とズボン

          緊張感が増すばかりの山小屋の中で、砥上親子だけが不自然なほどの冷静さを保っていた

          求められるモノ、その対価

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 6、暗き森④  暗く湿り気のある空間で、篝火の火がパチリと爆ぜた。  荒々しく削り跡の残る岩肌にを埋めるように、洞内の人影が黒く写る。  部屋の中央に置かれた巨大な蓮華型の水盤にはなみなみと水がたたえられ、それを取り囲む蝋燭の火に揺れる水面は透明でありながら不思議な光を放っていた。  中心より生まれては静かな波紋となって広がる漣がやがて大きく揺らいだ。  息を呑み注視する僧侶たちの目の前で水盤の水がざわめき垂直に立ちあが

          求められるモノ、その対価

          そして、彼女は禁足地とされる島へ

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 6、暗き森③  大きな石の影から出てきた男は、手のライトを付けると同時に猟銃を肩に掛けた。こちらが完全に丸腰だと油断している。  息子の背中で右手の銃を隠していた遥希も、それをズボンの腰に刺してシャツで隠す。 「ハイキング客か? この島は禁足地だぞ」 「禁足地だって? 私は前にも歩いたことがあるがいつからだ」  遥希のセリフに秋山は口の端を上げた。上手い返しだ。実際に来たことがあるのは確かなようだし、向こうもハイキング客が来

          そして、彼女は禁足地とされる島へ

          静かすぎる森に、彼らの不安の心が沁み出していく

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 6、暗き森②  ひとり小屋の中に残された砥上の耳に、パチパチと炭になりつつある木の弾ける音が聞こえていた。  立ち尽くす心は重く、息が詰まるほど胸の中は不安だった。  魔界人である秋山に両親を預けるのが心配ではない。むしろ彼になら安心して預けられるくらいだ。ひとり寂しく小屋に残されたことが原因でもない。逆にあの狗鷲への過程を両親が見なくてもいいのなら、衝立を作れと言われたら嬉々として作ってやる。  予測不能の事態に陥って

          静かすぎる森に、彼らの不安の心が沁み出していく

          何気ない記憶の正体、表れた不安。生きるための逃走を再開。

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第6章 暗き森①  初めて聞かされた父親の出自に、自分に祖父母という誰もが持っているルーツがない理由に砥上は少なからずショックを受けた。これまではいないものはしょうがないと特に気にもしてこなかったが、子供心にどこか聞いてはいけない何かを感じていたのだろうか。 「もしかして今夜襲われたのって、俺のせい?」  父親の遥希のいう通り、逃げていたのを急にやめて長期間同じ場所で暮らしていたにも関わらず追い続けてきた存在が訪ねてこなかったのは

          何気ない記憶の正体、表れた不安。生きるための逃走を再開。

          父親から明かされる、奇妙な砥上家のルーツ。

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 5.砥上家⑤  砥上遥希には家族がいなかった。  もちろん生まれたからには両親はいたしおそらく兄もいた。 「おそらくって」  自分の兄弟の有無について副詞を使うのは変じゃないかと砥上はちょっとだけ呆れた。 「記憶が曖昧なんだよ。いたような気がするが、確証がない。きっと幼い頃に別れたんだと思う」  その幼い頃のある日、ひとりの男が訪ねてきた。台所の柱の影から玄関で対応する父親の背中を見ていた彼は母親に呼ばれ、買い物に行くと勝

          父親から明かされる、奇妙な砥上家のルーツ。

          逃げた先は暗く小さな山小屋だった

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 砥上家④  出現した先は、真っ暗闇だった。 「痛て」  どすんという音がして、砥上の悲鳴が上がった。 「母さん」  妻の声が聞こえないことに不安を覚えた砥上の父親が空中に手を伸ばした。いきなり体を襲った落下感に言葉を失ったものの、その体はすぐに誰かの腕で支えられ止まった。とはいえ足が地についていない。ここはどこだろうか。 「大丈夫すよ」  不安に駆られる砥上の父親のすぐ側で、突然現れ自分達を攫った青年の声がする。背は確

          逃げた先は暗く小さな山小屋だった

          砥上家、急襲される。

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 5、砥上家③ 砥上逍遥は困っていた。  気がついたら変身して空を飛んでいたので、急いで帰ったところだった。  まさか人間に戻る途中に、母親が部屋に入ってくるなんて。 「ちょ、いきなり開けないでよ」  左手を伸ばし、起きた時のままベッドから垂れているタオルケットを掴んで引き寄せながら立ち上がった。 「ご、ごめんなさい」  信じられない光景を目撃してしまった母親は後退り、ドアを閉める。それからドア越しに「着替えたら、下に

          砥上家、急襲される。

          "再会"と呼ぶにはあまりにも短い時間。

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第一章 5.砥上家②  そろそろ陽が沈む時間だったが、夏至が近い空はまだ十分な明るさを保っていた。  あんな怪しげな連中に遭遇しながら無事やり過ごすことができたのは、幸運だったと錐歌は自分でも思った。  特に左右雀と呼ばれた小男。奴の視線は本当に不気味だった。強いていうならば人間の視線じゃなく、捕食者のそれだ。  何故あの場所に彼らが来たのだろうか。現場の結界は生きていた。人間が建物の異常に気づくのはもっとずっと後になるはずだった

          "再会"と呼ぶにはあまりにも短い時間。

          カエル男とサイボーグ男

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉第1章 5.砥上家②  これまで記録した分と、自分がここに来るまでの残りの記録のダウンロード設定を済ませると、錐歌はさらなる手がかりを求め部屋を見て回ることにした。場の記憶の密度がかなり濃いので、ダウンロードの時間はかかるだろう。  どちらにしろ回収を頼まなければならないシェザーの遺体に顔を顰めながら、壁に描かれた巨大な絵画へと向かう。来場者の目を錯覚させる画面のカーテンに隠れるように本物のカーテンがかかっている。覗くと、スタッフル

          カエル男とサイボーグ男

          境界警備官・錐歌のお仕事

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉 第1章 5、砥上家①  秋山のアパートを出たときは、午後2時を過ぎていた。空はまたどんよりと梅雨らしく曇り始め、湿度が急激に上昇していた。  車のエンジンをかけ、アパートの駐車場から出る前に一度ミラーで自分の首元を確かめた。悪戯に魔名を口にし、秋山に締め付けられた首の手の跡はすっかり消えている。  そういえば帰り際の彼も眠たそうだった。回復の速さには驚いたが、やはり十分な休息が必要であることに違いはないのだろう。  家に帰る

          境界警備官・錐歌のお仕事

          命をかけて友の魂を託す。それがなぜ自分なのか。生きていたら彼女は話してくれるだろうか。

          長編ファンタジー小説 獣の時代〈第1部〉 第1章 4、金の鉤爪、銀の斧⑦ 共に戦ってきた仲間に裏切られた形となった魔界人たちが怒ったのはいうまでもない。魔界人の軍隊は瀕死のエルザスを連れてフランスより去った。これにより大量の魔女を抱えるイングランドとの戦力の差が大きく開いたのはいうまでもない。対魔女戦力を失ったフランス軍は人間の誇りをかけ善戦したものの、次第にジャンヌの指揮も精彩を欠くようになる。ついにコンピニエーニュ包囲戦で撤退の最中にイングランドに退路を塞がれ、ジャンヌ

          命をかけて友の魂を託す。それがなぜ自分なのか。生きていたら彼女は話してくれるだろうか。