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若草
2020年4月24日 21:59
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラを捜しに、ご主人様の元へ帰る前に寄り道することを決めた。しかし、困った。吾輩はただ小川のほとりで待っているだけで、サクラに会えていたのだから、全く手がかりがない。そういえばこの前、“病院"とか言っていたような。この近くに病院があるのだろうか。吾輩は、グルグルと歩いた。知らない路地や、車道や、庭を歩いた。何時間も、何日も歩いた。
2020年4月23日 19:45
吾輩、黒猫・朔(さく)にはたくさんの兄弟がいた。「なぁ、頼むよ。一匹もらってくれないか」生まれたばかりで、目がまだぼんやりとしか見えていないころ、二人の男の声が聴こえた気がする(定かではない)。「え、でも俺は独り身だし、動物を育てたことはないよ」「でも、可愛いだろう?うちはもう手一杯なんだ。頼む。どの子でも良いから」こうして、吾輩はご主人様に選ばれた。「いいかい。お前は“預かる”だ
2020年4月22日 20:19
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。好き勝手にクロと呼ぶニンゲン・サクラをこの小川で待っている。ご主人様の家への帰り道は、未だ思い出せない。ある日、サクラはいつもよりたくさんのカリカリを袋ごと渡してきた。何事かと、吾輩は訝しそうな目つきでサクラを見る。「しばらく、病院へ行くのはお休みするね」ビョウインって、あれだろう。知らないニンゲンに尖った針で、刺されるところだろう。ご主人様もよく
2020年4月20日 21:09
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。漆黒の艶やかな毛並みが、月の出ない夜を思わせると、ご主人様に名付けてもらった。しかし吾輩、ご主人様の家への帰り道を忘れてしまった。質の良いネコジャラシを探すのに夢中だったのだ。かれこれ一ヶ月になる。何とか記憶を辿って帰ろうとは試みるも、頭上からヒラヒラと桃色の雪みたいな何かが降ってくる。吾輩、すぐに我を忘れて、追いかけたくなる衝動に駆られる。追いかけても、追