イノベーションを生み出す価値 #89 コアコンピタンス
高度経済成長期には、モノ不足からもたされる「作れば売れる」時代が続きました。
そして、国際的にも日本の製造業の高い技術力が評価され「良いモノを作れば売れる」時代に遷ります。
しかしながら、モノや技術だけで売れるプロダクトアウトの発想は既に限界を迎えていることは明らかとなってきました。
対して、顧客のニーズを聴いて応えるのがマーケットインの発想などとされています。
しかし、そればかりでは、今度は、言われたことにだけ応える御用聞きであり、カスタマーマイオピア(顧客近視眼)と言われたりします。
そもそも、企業が社会における存在価値を示すには、コア・コンピタンス(Core competence)が必要です。
コア・コンピタンスとは、他社では提供できないような自社独自の価値であり、強みやストロングポイントと称されたりします。
しかしながら、現代は、先の読めないVUCA時代と呼ばれています。
人々が求めるニーズが多様化している現代において、企業側の想いだけを押し付けるプロダクトアウト思考では、やはり顧客に支持されません。
マーケティングの分析で3C分析があります。
3Cとは、自社(Company)、他社(Competitor)、顧客(Customer)を意味します。
つまり、他社では提供できないような自社独自の価値に加えて、顧客が望む価値である必要がある訳です。
このポジションを「USP(Unique Selling Proposition)」あるいは、「バリュー・プロポジション(Value Proposition)」といいます。
そして、新しいUSPを創造することが、イノベーションなのでないかと私は考えております。
そもそもイノベーションというと画期的な新技術などと考えがちです。
しかし、その本質は、新しい価値によって、安定した既存市場の概念を破壊し、あらたな顧客を生み出すことであるといえます。
捉え方からしたらアイデアの延長として、もっとシンプルに考えるべきかと思います。
過去に、「変わらないこと。変わること。」をCMコピーとしたデジタルカメラがありました。
カメラですが、元々は、フィルムカメラでした。
フィルムカメラは、感光剤が塗布されたフィルムに光を当てると起こる科学反応を利用して画像を記録するものでした。
その後のデジタルカメラでは、フィルムカメラで必要だった現像が不要となり、一気に市場を占有することになります。
さらに、デジタルカメラとて、スマートフォンに押されて衰退しました。
ところが最近、また、フィルムカメラやデジタルカメラのニーズが高まり始めているとも言われます。
ジェームス・W・ヤング氏は、その著書のアイデアのつくり方で、「アイデアとは既存の要素の新しい組みあわせ」と示しています。
つまり、コア・コンピタンスを皆無の状態から創造するのではなく、顧客感度を高めたマーケットイン思考で、既存のコアコンピタンスと様々な新しい要素を組み合わせることによって、新しい価値を生み出せると考えています。
そして、それこそが、イノベーションの創造なのではないかと思います。
今後も間違いなく、環境の変化によって、顧客の望む価値も変化して行きます。
「進化させていくべき事=変わること」、「過去から引き継ぐべき事=変わらないこと」を意識して、経営に努めて行きたいと思います。