国防きつね憑き婦人会
1.
きのう
銀河系は晩秋であった
私はこの弓状列島の
場末の酒場でホルモン焼きを喰らった
遥かなる夢破れて白きナンコツあり
十六夜の路地裏を独り歩けば
ふっ うらぶれ夜風が
やけに骨身に沁みやがるぜ
とかなんとかまあ
だいたいそういうようなことでした
中島みゆきの『夜風の中から』を口ずさんで
街を離れて畑の向こう側の国道に出て
ずっと遠くまで歩いて行けば
たくさんの婦人会達がご利益を求めて
ぬめぬめした掌でぺたぺた触る
首無し地蔵尊があります
婦人会達はたいてい
団体でバスに乗って行きます
いま国道脇を歩いている私の横を
薄暗い車内灯を点けたバスが
婦人会達の影を乗せて通り過ぎて行きました
夜を行く 私とバスと婦人会御一行様
こんどは中島みゆきの
『夜を往け』を口ずさんでいると
流浪の女旅芸人の彼女が腹を空かせて
藪の中の首無し地蔵尊の周辺を
うろついている情景が眼に浮かびました
首無し地蔵の饅頭喰らひて尻からげ
中島みゆきは疾く夜を往く
字余りをまったく気にする様子もなく
内臓を喰い破り肋骨を破裂させ
奇声を発して体外へ跳び出て来ると
宇宙貨物船ノストロモ号の床を突っ切って
倉庫の積荷の奥に消えたエイリアンの幼生
おおよそそれに似た迅速さで
中島みゆきは闇の中へ消えて行ったのでした
2.
きょう
極東アジアに狐が憑依した
荒ぶる海峡の白い波頭を遠望する
婦人会の団体御一行様が
ネット詩人のバカ息子にDLさせた
東京大空襲の文部省唱歌を唄う
どんよりとした曇り空を切り裂いて
緋色のGospelを捧げる岸壁のキシ母ジン
新旧実在論の哲学者達の脳は煮沸され
極東獣神ウォーズが始まる
だが 戦争をとことん知らない
フェイクの子供達に過ぎない我われは
国防について考えるのは
婦人会御一行様に丸投げして
集団疎開のアタラクシアで
薄幸の電磁波美少女と
ラブホテルよりも奥床しさを追求するゆえ
連れ込み旅館へしけ込もう いと輝かしく!
あ~あ~あの顔で~あ~のyogari声で~
て言うか ああそれなのにそれなのに
モフ狐監視アプリの眼球はいよよ血走る
秘めやかな宵のトーチカに銃眼を穿ち
明かりを消して立て篭もる婦人会御一行様
密閉型軍用ヘッドフォンを装着すれば
Noiseの波間から聴こえて来るのは
ヤロウふざけやがって敵性音楽
ゲートル巻きルージュの伝言盗聴す
国防きつね憑き婦人会
字余りを露ほども心苦しく思わず
キツネ目の女は健康優良児
江崎グリコは一粒舐めたら三百米
精神注入棒で素振りを済ませ
筋肉ムキムキのユーミンは
虹色のルージュ型核魚雷に跨って
秋の蓼科高原を滑走するのでした
3.
あしたは
きっぱりさっぱり冬が来る
‥‥‥‥(未完・↓ 短歌みたいなものはあります )
言の葉の積木に犇く骨棘
鬼束ちひろは寸止めで殺る
4.
歌舞伎町のビルは炎上林檎は落下
われ発見せり! 万有引力
5.
舟を漕ぐ夜の海よりCOCCOの手
海髪ゆらゆら水底の涅槃
*短歌(みたいなもの)が詩行の中にあるので、【十六夜杯プレ企画】「芸術から一句」に参加したいと思ったのですが、気が付いてみると短歌自体は季節不詳で、秋っぽいとは言えないので、参加は見合わせました。
*以前、NK国が何度目かの核実験をやった時に書いた作品に推敲を試みたもので、晩秋とかそのまま。歌姫のセレクト古典的。3.以後が書けないw。
・今更ですがこの曲。
・中島みゆきの『夜を往け』『夜風の中から』は公認のものが見付かりませんでした。