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【読書感想文】「小さな私」の心の拠り所

どうしよう、どうしよう。

なんでこんなことに。

この本はそんな感想を、まず持った。

ホリー・ジャクソン 著 / 服部京子 訳『卒業生には向かない真実』東京創元社、2023年。

以前、681ページの文庫と書いていた本のこと。

ピップ(主人公)が、悪質なストーカーに狙われる。

なにか嫌な予感しかしないと思いながら読む。

第一部は「まじかー」と思って幕が下りた。

第二部も、「まじかー」「やだよー、なにこれ」「なんで! ていうか、どうしよう。どうしましょう!」という、何ともな感想が口からこぼれる。

イヤミス?

なのか。

すごミス?

なのか。

ニアミス?

なのか。

オチミス?

なのか。

ヤミミス?

なのか。

これ以上列挙すると、ネタバレしてしまうので、やめるけれども。

私の語彙力のなさも、露呈してしまうけど。

なんで、こんなことに……。

何度でも書いちゃうけど、それしか感想が持てない。

あなたと私は、共存できない。

究極の選択。

生きるか死ぬかの選択。

人生は選択の連続。

そして、人はその選択や結果を、良くても悪くても背負って生きていくしかない。

それを痛感しながら読む。

ピップの苦悩に、終わりは来ないだろうと思う。

逮捕や裁判の判決は、終わりではない。

ピップのしたことは、公では正しいとは言えない。されない。

そして、ピップ自身も分かっているから、苦悩する。

公の正義(社会正義とも言う)がなされない場合、「小さな私」はどうしたら良いのか。

ただ悪いものに怯え続け、脅かされ続けなければならないのか。

「小さな私」が牙を剥いて、立ち向かった時、その罪の責任は誰が負うのか。

「小さな私」が、全責任を負うのか。

絶対的な悪を野放しにしてきた(無能な)公は、責任逃れできるのか。

それは社会として、「正しい」あり方なのか。

この本は、あくまでとっつきやすいミステリーなのだけど、ピップの探偵談としての側面と、社会正義のあり方を問う倫理の側面を持つ。

ピップが負った傷や苦悩は、当然なのか。

行ったこと、選択したことの結果だけ見れば、当然だ。

でもそれで社会は、警察は、公としての私たちはそれで良いのか。

「小さな私」一人だけを断罪して、おしまいにしてしまって良いのか。

「小さな私」が、罪の意識で折れそうになって、解決策もなく、震えるだけの社会でいいのか。

私には、即答できるような言葉がない。

悪いものは悪いし、やって良いことと悪いことは必ずある。

小さかろうが、大きかろうが、罪は罪だ。

「小さな私」がやったことも、公ができなかったことも、罪は罪だ。

著者ホリー・ジャクソンは、そういう正されない犯罪に、見逃され続ける過ちに憤りを感じていたという。

私には、答えがない。

もっと警察がしっかりしていれば、もっと裁判が公正に行われていれば、もっと弁護士が中立であれば。

さまざまな被告や被害者は、もっと早く救われたのではないか。

でも、こんなことをつらつら述べていても、本当は無意味。

審査するのも、裁くのも、守るのも、全て不完全な人間のすることだから。

私に何ができるだろう。

おかしなことに、おかしいと思い、変なことには、変だと言う。

それしかできない。

私は、社会正義を完璧に信じているわけでもないし、そのあり方を根本から知っているわけでもないから、どうやってでも変えようとも思えない。

ピップの悲しみや苦悩に「そうだよね」と思っても、「あなたは正しい」とは言えないし、思えない。

「もっと方法があったのでは」と思ってしまう。

でも、その一言がピップのような人を、最後の最後に打ちのめし、二度と起き上がれないほどの絶望を与えることも知っている。

選択をし続けなければならない人生で、過ちがない選択をしないなんてことは、ありえない。

選択をし続けるかぎり、成功もするし、間違いもする。

それは、表向きの人生をかけたものになるかもしれないし、心の奥で燻り続ける熾火のようなものかもしれない。

「ヘイ、部長刑事」

その呼びかけだけが、ピップを救う。

「小さな私」を救うのは、本当は社会正義ではなくて、「小さな私」を信じる他の「小さな私」の存在なのではないだろうか。

身近な誰かを信じることや、身近な誰かを大切にすることができる世界。根拠なんてなくても良い。

それが「小さな私」の安心していられる場所に、ありますように。心の拠り所として、存在しますように。

そんな世界であって欲しいと、「どうしよう」と幾度となく思いながら、この本を読んだ。

【今日の英作文】
その場所がそんなに遠いとは思っていませんでした。その食べ物の形も名前も、聞いたことがありませんでした。
I wasn't expecting the place to be that far away. I had never heard of the food, both in terms of its shape and its name.

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