#家族「昭和の頑固おやじ」
「あ、はいっ、少々お待ちくださいっ」
3ヶ月に1回くらいの頻度で、
亡き父は、
シャロンという鉄板焼きレストランの、
なぜか
2階のお鍋を楽しむ方を、
好んで利用していた。
おにぃ(兄)と私は、
鉄板焼きの、
ジュ〜ッという、
弾ける油の音に、
魅力を感じていたのだが、
おとん(父)は必ず、
2階のお鍋の席を予約してくれた。
おとんはお鍋を食べてご機嫌になると、
必ずと言っていいほど、
店員さんに、
何か無理な注文をしていたような、
そんな記憶が微かにある。
蘇った記憶は、
シャロンで使用していた、
お鍋を気に入って、
店員さんに、
売って欲しいと、
強く迫る父の姿だった。
その時、
おそらく思っていた、
私の気持ち。
「おとん、
店員さんを、
困らせないでっ」
店員さんは、
やんわり断ってくれているのに、
諦めの悪いおとん。
おかんも、
おにぃも、
私も、
こう言う時は、
何も言えないでいた。
困る店員さん。
なぜか粘るおとん。
奥から、
支配人のような方が出てきた。
「お客様、
本当に申し訳ありません。
鍋はお売りできるものがないのですが、
代わりに、
この土瓶はいかがでしょうか?」
支配人のような方は、
父の気持ちをおさめようと、
代替え案を提案してくれた。
しかし、
おとんは、
納得しないだろう。
一度火がついた思いを、
簡単に終わらせるはずがない。
それに土瓶は、
家での活躍の場は、
ほとんどないだろうし、
流石におとんも、
前向きにはなれないだろうと
感じていた。
支配人から土瓶が手渡され、
父が手にとり、
じっくりと土瓶を眺める。
しばらくシ〜ンとした空気が流れた後、
おとんは大きな声で言った。
「ちょうど、
欲しかったやつ〜♡」
「ちょ、ちょうどて〜」。
おそらく家族全員、
心の中で、
「うそ〜〜ん」と
ズッコケていたに違いない。
もちろんその後は、
自宅で、
土瓶が活躍することはなかった。
記憶を思い出す度に、
昭和のにおいが漂う、
頑固おやじ。
今では少し、
愛おしく思えるのが、
不思議なのだ。
<スタエフライブ告知です!>
コメント欄の皆様と、
気軽にやり取りするスタエフライブ。
2月17日(土)9時〜。
今回のテーマは、
「あなたのご両親の教えについて」。
両親が繰り返し伝えてくれたことや、
これからも大切にしたい教え、
また独特なエピソードなど、
よければコメント欄や、
時にはスピーカーになって、
教えていただけらたと思います🎙️✨。