
2022年のうた
2022年のうた
2022年のうた
ああ馬猿この悪しき世に生くべくばむしろ狂いてあれと思いぬ
生きた心地もしない日々だがともかくもあなたまかせの年の暮れ
年の瀬の雉鳩の鳴き声をモールスで解読すると「タウタウ」
ぼろ切れのような手拭いくるくると封印された人情つつむ
文七を聞いたり見たりする大晦日ひとごとでない吾妻橋
遣る瀬ない思いとともに年を越し年を越しても遣る瀬ないまま
たくさんの変化があって今はまだ凍えるような寒さのただ中
何もいいこと無かったけれど今までのどの一年ともちがってた
ウィキペディア見て「あ、この人まだ生きてる」と嬉しくもなる年の暮れ
トロッコで遠い昔と結ばれた記憶をはしり鉄路をたどる
トロッコで遠い昔に使われた記憶をたどる鉄路をはしる
置き去りで椅子から転げ落ちたまま湿った床の上の哀哭
すべてを遮断するよりもうっすらそれに包まれてやり過ごすだけ
吹きだまるあれやこれやも風向きがひとつ変われば吹きだまらない
升掛が繋がってるかまだ微妙それはそういう定めだからか
古池にいくつ草履が沈んだか冬にみぞれが降るが如くに
新宿アルタのアストアロボットで初めてスクイグル柄を見た
普段から見慣れたものが突然にこれこんなだった?と見えるとき
角が落ち麦の芽が出る頃のこと流れの中の小さな区切り
お煮しめの人参あまい蓮きらいがんもどきよりあまい人参
つりの番していたはずが伊勢まいり夢かまことかたんたたんたん
何もかもお仕着せじみてくるようで逃げ道ばかり探してしまう
伝言の差出人はいつものように二〇世紀のわたしです
運命は何食わぬ顔でひそんでて時が来るのを待ち構えてる
視線を上げて月を眺めて一本脚でひょいと蛙が跳ねる
一瞬で零れ落ちてく残像に追い縋り手にすることばじり
西蔵の珍しいお茶飲む前にほうじはしっかりしておくように
立て掛けられた水面は揺らぐことなく伝言だけを覗かせる
昼も夜もところ構わずへなぶってまともにものを見てないそぶり
この列に並んだままで何年も順番くるまで待たされるのか
ただならぬ気配を強く匂わせる何かの事件の現場のような
親指の腹をはさんで血豆とか久方ぶりの掃除の真似で
夜が明け目があく頃にはまた夜で覗き込むたびいつでも暗い
年の瀬に散りて落ちたる山茶花の花片にまじり木瓜が一輪
陽のあたるブロック塀にひらひらと影を舞わせる風と花びら
北風に煽られ道を滑ってく白い発泡スチロール函
いちどきに一つのことしか出来ぬのにみなやりかけで同時進行
間違ってばかりいるので一向に正しい道に合流しない
何もせずあそんでいると思わせて見ての通りにあそんでいるだけ
便利なものに囲まれて隙間だらけな脳内に趣味を詰め込む
裏山の細くて急な階段をのぼる間も文句が絶えぬ
寒々とゴングが鳴ってよろけつつ休む間もなく次のラウンド
いつもの様に足りないと余るのが当たり前だと思うのあいだ
光と黄金がひだになる一枚布の薄紗の一人物よ
何も言わずに堪えている冷えた爪先掻いて欲しがる右の肩
仲見世の人で賑わう通りだけ自転車押して横切ってゆく
ゆっくりと回転しながら降っていた雪の結晶はかなくきえて
内側の熱に灼かれて炙り出るプロトタイプの名もなき残滓
背後には必ず差し手の指があり終わることなき遊戯が続く
あたたかいクリスマスというものはない誰かがいるから温もるのだ
何回もジョンとヨーコの同じ歌ずっとループをしている季節
一日が半分になりそれがまた半分になる逆の倍速
それ用に鞣した言葉で組み立てたショーウィンドウに並ぶきらきら
風が吹きここにあるべき何もかも奪ってゆくのか息が苦しい
冬至すぎどろどろになるオリーブオイルに真冬が来たと思うべな
何となくあてずっぽうに出来ていて根拠を隠す抽斗もない
軌道から外れた星を追いかける中心のない宇宙の闇で
クリスマス真っ暗な坂あがっても煙突のある家みあたらず
貼った上からまた貼ってそこに何かが浮き上がる貼れば貼るほど
空しさと孤独の中にいるものに恩寵は降り徴がのこる
雑然とする世界にもよろこびが降りそそぐのかこの夜だけは
歌をメモするだけのラインを開き気分だけホワイトクリスマス
凪いだまま波の来る日を待っている時おり跳ねる小魚を観て
複雑な心の動きを辿りゆく面倒臭がる素振りも見せず
少しだけ昼寝しようと横になり布団の中で縮こまり泣く
一瞬離脱するだけで冷え切る体フェードイン二度寝三度寝
建物のかげに隠れた半分の窓の向こうの知らない世界
レジの人いそいでレシート引っ張って終わりの方が解読不能
うどん食べる気満々でつゆだけ作りうどん茹でるの忘れたり
どれもみなシナリオ通りというわけか悪夢のようなドラマは続く
雨に濡れ風に吹かれて冬空の下で縮まる淡き枯れ色
書かれたこととこれから書かれるすべてのことを漢字一字で書く
がらくたを寄せ集めては太陽に透かしてみたりして組み立てる
からくりが複雑だから目を瞑り書かれた通りの運命をまつ
どうするなんてゆうてはる幕府開けばええんちゃうのん知らんけど
この旅に目的地はない何もかも曖昧模糊な探検だから
指先で掻いてるうちはまだましでそのうち穿り穴ぼこになる
雨上がるのを待たないで鳥たちが動きはじめるかまびすしくも
冬の雨かたちのままに萎れたるピンクの薔薇をつめたく濡らす
遠すぎてほとんど別の世界から届くかすかな電波をひろう
何もかも広げて見せてしまうより隠したままの道行きにこそ
何もかもとても冷たく感じられ布団の中に逃げ込む師走
あの当時わたしは一羽の鶏で伊藤のとこでモデルをしていた
見えないものが見えないとこで絶え間なくせめぎ合うフロントライン
誰しもが得ようとしても得られないものを得るのも才能なのだ
いっぱい着ても寒い冬全部脱いでも暑い夏ままならぬもの
咽ぶよなオルガンの音もしめやかにクリスマスまでもうすぐなのに
遠ざかる明かりと人の喋り声あのとき会った気がするけれど
いつの日か大きな門に辿り着く大擾乱の森を切り抜け
ありふれたものやことらをことさらに重くとらえるしかつめらしさ
偉大なるテリー・ホールよ安らかにあなたの歌は永久に滅びぬ
レコードは回り続けてカセットはオートリヴァース終わりはこない
また少し寂しい場所になる世界クリスマスまでもうすぐなのに
鎌倉にたくさんの血が流れても草木虫鳥の歌は途絶えず
いつだってかぜだと風と変換す然らばふうじゃと打ち込むだけよ
船はゆく眠りゆきたる都から沈む日を追い光のうちへ
つるつると表面だけを滑ってく時間の流れと切り離されて
どこまでも道は奥地へのびてゆく時間を越えて響くオルガン
市制百周年の記念誌に何で灰野さんが載ってないのか
枯れすすき寒空の下しんなりと受け継ぎ託す仕事を終えて
冷えきった心を溶かすささやかなうれしいことになみだを流す
全てみな忘れてしまうくらいまでどんなことでも想起するのだ
永遠を炙り出そうとする刹那それはすすっと雲隠れする
風になり風を起こして風に乗るどんなに懦弱な言葉だろうと
ガウン姿のメッシの写真キャプションはありがとうアラブの誇り
台の上ぴょんぴょんしてるところだけうどんかきこみつつちらり見る
ツイアビが死んでも何かが残るぞとパパラギからの教えを語る
手も顔も布団の中に引っ込める溺れぬように注意しながら
ニャンミカさんがガニまたからのくるりんニャガニまたからのくるりんニャ
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら舞うようにくるくるくるりと行きつ戻りつ
その歌は囀りや咆哮などに翻訳されて歌い継がれる
宵闇に激しく揺れる薔薇の花しなって風を受け流しつつ
冬の風どどんがどんと楽しげに雨戸を叩いてくれよお願い
寒々と曇る空から薄明かり日陰の花の深き褪紅
やわらかくほぐしたように思えてもほぐれないのが本当のとこ
寝転がり間近で見たけど本物で匂いまでした夢の中でも
わたしはいるであろうところにいるしいないところにもいるであろう
擬似的な偶然に意味づけをして細かいとこまで説明をする
くどくどと唱えたところで大抵は鬱陶しいと思われるだけ
どれもみな同じ性質を持つけれどそこを除けば全部ばらばら
輪郭をぼんやりなぞる線が消え浮き出してくる影が下から
幾筋も線を重ねてゆくところ明るくなって光がもれる
隙間から別の世界を覗き見る覗き見してる背中が見える
何回も隆起をしては陥没し露わになったこころの地層
やわらかな裏地の布に包まれて微睡みながら独りごちてる
歴史的なる転換は歴史的であるがゆえにまた転換す
文字列を括弧に入れて並べれば一瞬にして対話に見える
試されて何にも打開できなくて一段下がりまた試される
違和感があった時点で違和であるこの感覚に誤りはない
あちらでは理解できてた現象も夢の外ではただの妄執
ぼつぼつと幼き蕾が顔を出すすでに特価の寄せヒヤシンス
座り込みチーズバーガー食べながら迎えを待った階段の上
尖端のその先にあるサイエンスつんとすましたガラスのような
かちこちの冷たい煉瓦を手にもって割って裂くよに本を読む朝
底が抜け転がり落ちてゆらゆらと沈んでゆきつつ星を数える
ちまちまと自分の城の外堀を埋めてくようなささやかなこと
人間は森の中にも厠を作る本能の呼び声がする
ほんの百年ちょっと前どこに居て何をしてたか思い出せない
殻をもついびつな形の奇矯さに疑いの目を向ける人々
ちょっとした刷り間違いのある紙幣探し出しては蒐集をする
幾たびも世界は眠りまた起きるすっかり記憶を失いながら
唇の端がぴりっと痛むころ短い昼の眩しい日差し
極寒の聖なる夜に警報がシェルターの中ほのかな明かり
黴臭いどこかの軍の払い下げ着込んで眠る塹壕の奥
躊躇なく勢いつけて落ちてゆく砂の残りが僅かな猶予
手にしたものは偽物で信じたことが馬鹿らしい吹け冬の風
我が手では触れることすらできぬよな人間的な喜びを見る
本当の意味を知るのは何もかも手から離れた一瞬の後
隙間へと染み込んでゆく意味のない指から滴る言葉のように
意味のないものは何にもない世界そこに無意味を捻じ込んでゆく
今はまだ分からないけど時間が経てば段々と見えてくるのか
もう何も残ってなくて手も足も出せないけれど溜め息は出る
溜め息をひとつふうっと吐いてみるそれでどうなる訳もないけど
もう何も分からないからこうやって無意味なことを繰り返してる
分からないさっぱり何も分からない考えるだけ無駄なんだけど
ひとつずつ灯りが順に消えてゆくクリスマスまでもうすぐなのに
金狼が百里を駆ける鈍色の砂漠の夜にタイムの香り
枯れた葉や枝が朽ちずに残っては新しい芽の邪魔になるだけ
踏み台を幾つ並べて積んだとて遠くが見えるようになるだけ
三度目に読んで少しは読めてきた本に漸く打ちのめされる
長大なただ一編の詩の中で文字が踊って頁をまたぐ
信彦と秀雄の本が並んでるなんだかまるで兄弟みたい
ぷるぷるとしていて半ば透明できらきらしてる生き物みたい
の為なら死んでもいいと目の色が黒いうちはが背中合わせの…
入り組んでごっちゃになってほっとかれ暫くするとまた散けてく
年の瀬や水の流れも伝説のジェンダー越えと跨ぎゆくかな
ちょっと待て馬鹿にすんなよ日本人うちは代々バハラットノー
冬晴れに畦ですすきが揺れている風にそよいで絵に描いたよに
うっすらと雲のかかった青白い冬の空からあわい陽光
倒れ込み気を失うのか寝てるのか暫く人でないものとなる
安っぽい演出だって構わない夢のないもの見せられるより
ジャズなのにお軽勘平シャンソンで昭和元禄くるって候う
混乱の時代のエキス煮詰めたる地下でジャズ演りどんちゃん騒ぎ
底の方ぐずぐずなのをいいことにあっちの方じゃどんちゃん騒ぎ
ぼんやりとその周辺を照らすから見えてるものがみな夢になる
もう一度提灯に灯を入れなおし辺りを見れば見知らぬ河原
何十年もその場所で夜を見てきたアパートの通路のあかり
ここらでは本物らしい顔をしたものは大抵本物じゃない
浅いけど地を這う虫には死に至る深さをもった不安なのです
今はまだ気がついてないだけだけど色んなことを忘れてんだね
明後日の方を見ながら平均台を走って渡るようなこと
様々な世の中のもつ外観と争いながら暮らしてゆこう
またしても堅固な壁に突き当たり打ち砕かれて投げ返される
沢山の細かい粒に分裂しざざっと薄く広く散らばる
ぱちっと音がするようなモードが変わる瞬間の薄ら寒さよ
気がつけば皆一様に古ぼけてがたがたと鳴るどこもかしこも
夜が来てまた朝になるみたいなのずっと続くと思えなくなる
血のように空が真っ赤に染まるときわたしの胸は青く澄みきる
何にせよ皮相のレベルで止まってて根っこの部分は放置されてる
わたしはいつも常にわたしがわたしだと見え透いている嘘をつく
あなたはいつもそれがあなたの信念であるかのように嘘をつく
今もまだ八一年経ったのに殺伐として不穏な世界
夢なのにとてもリアルな何もかも吐く息だってとっても白い
手の中で捏ねて丸めているうちにするするこぼれ消えてなくなる
さっぱりと忘れてしまえるようなことなかなかないと思いますけど
偶然で根拠もなければ意味もないでもそれなのに完全な球
永遠を貫くアウラが迫り上がり優雅に舞いてまた消えてゆく
一瞬のゆめまぼろしか終日に語りしものか散りし紅葉ば
一段の見えないものを見せる舞い人後に落ちぬ不朽の至芸
目に見える確かなものがそこにある裾を払ってくるりと廻る
ひそやかに隠れるようなクレマチスうつむき加減の妙なる白さ
気がつけば流れはとても寂しげで終わる手前でしなしなになる
陽の当たる窓を横切る鳥の影さっと消えても思いを残す
年ごとに薄まってゆく冬が来てただ寒いだけ悲しいほどに
目の前に世界を立てて見るうちは抉れた裏を見ることはない
末端が冷たくなって痛みだす静まりかえる薄暗い部屋
中からの熱がどこから湧くのやら巌も溶かし流れて落ちてく
それほどに目映く光るわけもない冷たい石の砕けた破片
海底の砂にほとんどうずもれたにぶい光を放つ鉱石
天と地の間の森羅万象を三つの色とさわりでえがく
ばらばらと小さく崩れず形のままにシグナルを色で伝える
ゆっくりと歩み寄りたる山茶花の全てを悟り散った花びら
地の底にみな埋められて石になる川の流れも行き交う人も
素通りされる片隅のぽっかりと開く狭くて暗い蹴転ばす穴
零しても言葉が染み込むことはない硬い皮膜に弾かれて浮く
簡単にぽろっともげてしまうもの扱う指を扱えてない
偽物のまことしやかな価値に酔い目を眩ませて道化が踊る
最悪のシナリオだけはいくらでも頭の中に浮かぶものです
見上げても空っぽなだけ以前ならそこには空があったのだけど
鎌倉をうたの心は出でて去ぬうんたらくとかぽんたらくとか
グラウンドゼロ津波フクイチアベ香港トランプコロナプーチン
侮るなあなたはそこで手を合わせ無心になって祈ってなさい
旋律はどこかで途切れ消えてゆく和音とリズムが隙間を埋める
私がいてもいなくてもそちらの世界に影響はないはずですよ
むくむくと次から次へと湧き上がるあの高まりが没落なのか
傷口が裂けて割れ中からあふれ出してくる赤い過去や未来
まるで無人島にでもいるようだ錯覚を起こす戦場の朝
一冊の書物の中に書き込まれ版を重ねた一瞬の夢
拒否される田中みな実の写真集がんばれみな実まけるなみな実
ボールの先とどん尻が現代の理性の幅を測る尺度か
1%の富豪が生き残るなら人類滅亡ではない
異なっている同じもの動く静かにただそこに有るだけとなる
下らないことを考えてぼこぼこと抜けているから忘れ物する
抜け落ちて隙間が出来る金色の淡き光が降る大通り
空高く雲の合間に冴え冴えと白く輝く冬の半月
拭き取ってちっとも跡を残さずに去年のことが思い出せない
勘違いしていることも気づかない土台からして勘違いなら
横たわるまだら模様の水の底もうすぐ朝が逆さまにくる
整わぬ調子が光を乱れさす五つの色も互い違いに
永遠を再定義しろ永遠の時間の中の不滅の瞬間
永遠の世界に浮かぶちっぽけな塵にも劣る魂とやら
冷えるねえ、丸に柏でどうですか?スッポン鍋とフライドチキン?
まだ違う黒ではないと言い張って灰色のまま死んでゆくのだ
どれくらい顔がかさかさしているかお伝えすればいいのでしょうか
この長い長い助走のその先に踏切板があるというけど
突然に裂け目がひらく表面に引き寄せられて飛び込んでゆけ
偏ってしまっているのは仕方ないいつもこちらを向いて寝るので
足をもち宙づりにしてあいつらの悪事を全て吐かせてしまえ
しっかりと歌い上げてはいけないの上擦ってなきゃ本当じゃない
輪郭をふやふやとさせぼかしてく古くからある常套手段
使えないカードを手許に残すから使えるものが限定される
何本も通過列車を見送った鈍行すらも停まらぬ駅で
広大な廃墟となりし王城で王を探して王がさまよう
真夜中にノックの音がこつこつと悪戯をする風の仕業か
貪るように柿ピーを唇をひりひりさせて食べる止まらぬ
全ては賢く上手にがっぽりと儲けるためにやっていること
冬のつもりで着ていると暑くなり脱いだら冷えて風邪をひきそう
一〇時のチャイムが鳴っている低い雲一〇分後には雨が降り出す
沢山の兄弟たちへお元気ですか水分補給忘れずに
滝壺へ真っ逆さまに落ちてゆく水の中でも泳ぎ忘るな
流れ着く安住の地はもはやなく水は逆巻き行く手を阻む
透明な冷たい氷に茶墨の汁を垂らしたような陽のひかり
曇天の寒々しさを突いて立つ皇帝ダリアに遺制を思う
特定の時間の記録の複製が元の時間を塗り潰してく
運が良く今日は正解だっただけ明日もそうなる保証はあらぬ
静けさのどんよりとしたぬかるみに裸足で落ちて冷たく沈む
いつからか夢も希望も細切れで世界の相もてんでばらばら
ふわふわとして絶え間なく変化する活き活きとした偽りのもの
一息で掻き消されちゃうふやふやの煙みたいな分際なのに
いつだってすぐ手が届く場所にある時間の外に抜け出せるドア
びっしりと詰まっていると見せ掛けて時間の隙間でドラマは起きる
干涸らびてゆく大地寒風に晒されて歌声も掠れ果てる
何もかもほんの一瞬いまここにいるだけなのに嗚呼ばからしい
混沌は終わりではないもう一度始まりをまたやり直すこと
幾つもの穴穿たれた罪人の手で掬われる救われぬもの
慌てずにつまみ上げればよいだけだ毀さぬように慈しみつつ
もやもやと浮かび上がってくるものに削り取られる心の余裕
北風がほこりをいっぱいはこびくる老いた梅木よ春を忘るな
沢山の人の形の空洞がぽっかり口を開けて微笑む
探してた靴下を履こうとしたら同じのをもう履いていた夢
虚空へと伸ばした腕で後ろから自分の首を締め上げている
吹きつけし激しい雨や突風に奪い去られる鮮やかな色
朽ちてゆく冷たい風が吹く中で手で戻しても戻らず朽ちる
灰色にくすんだ地球と一対の映し鏡の黒い陥没
その下の隙間の石を引き抜くとすべてが崩れざらざらと降る
ふと見ればみな窓の外を向いていて葉の裏ばかり見せるがじゅまる
あの頃はいつも近くに見えていた忘れ去られた記憶の記憶
ゆっくりと時間をかけた堆積が彼岸と此岸の交わりの跡
表面をそっとナイフで撫でるだけもう世界から切り抜かれてる
すごく気持ちの悪いもの時に怒らせ不快な気分にさせるもの
飢え渇き叫びダンス飢え渇き叫びダンスダンスダンスダンス
夜はまた分厚く黒い壁となり立ち塞がって窒息させる
液体と固体の間の透明なひかりを指で追い掛けるだけ
表面はひんやりとして鉄のよう淡い緑はやわらかなのに
青空にうっすら白い雲の河下をくぐって翔ぶプロペラ機
生きてれば何となくだが色々と分かってくると思ってたのに
開かずにただ帯だけを眺めてる閉じたままでも聞こえる語り
見るものがみなフィクションに見えてくる現実感の薄い現実
その像に音も匂いもないけれど染み出すものは拭い去れない
無茶苦茶なように見えるけどそれすらも数秒後には味気なくなる
朝なのか夜になるのかわからない六一九と告げているけど
計算は苦手だけれどすぐわかる足さずにいれば引くこともない
砂となり逃げゆくものを運び去り隠れるものを覆い尽くして
ざらざらと空から砂が降る日々が何千年も続いた大地
無常なる砂に描かれた紋様は平らになってまた表面となる
いくつもの先の尖ったぎざぎざで表面にだけ凹凸がつく
その骨はいまだ折られず砕かれず砂に埋もれて来たる日を待つ
足はもう砂に埋もれて動かない世が果てるまで繋がれたまま
呪われたその宿命を怖れつつ海辺の砂に横たわり眠る
眉ひとつ動かすだけで加速して落ちゆく砂となるだけの罠
消滅を待つ島国が中心の哲学のない空の領域
赤々と木の葉色づきまだ散らず時雨れて濡れて深き色どり
美しき白馬が地上に降り立つとすべて瞬時に明白となる
青くて暗い空の遙かな彼方から白馬が駆けて降りてくる
波は引きひとつの大きな山脈が澄んだ空気の上に突き出る
大きな波が引いてゆく世界を全部作り替えぐちゃぐちゃにして
浮島のお稲荷様の片葉葦瘡守拝み坂を下って
どうせならこのまま天下獲っちゃえよぷるぷる喋りペラペラ越えて
櫓の下の七ツ釜曲輪の先に天神様の細い道
小雪を甘く見てると夕刻に一段冷えてくしゃみ鼻水
通りがけ背中をぱらぱら撫でてくる沢山の葉の悪戯心
斜めから滑り込みたる窓際で身を捩るよに腕を伸ばして
なにもかもわたしがここにいなければこのまずっとあることはない
手を触れるいまだここにはないものに憐れむべきは無垢か穢れか
どの指もその前にいた人たちと同じ間違いかさねて動く
番号をこっちへあっちへ移動する指先ひとつ滑らせるだけ
雨上がり草刈りをした休耕田からすが一羽土をほじくる
爪先で落とした石がさぶざぶと時の流れの底を突き刺す
侘びしげに鴉が一羽ないている嘆かわしいとぼやく口ぶり
買い物に行き品物を持たずに帰る夢を見るぼんやりしすぎ
それほどに冷え込むことのない雨の朝に感ずる初冬のらしさ
暗くて寒いこの冬を乗り切れるのか判んない挫けそうです
フリースの寝間着ズボンを重ね着しもう完全に真冬の仕様
何も知らずに大らかに苦悩を歌に昇華させたる右大臣
薄暗い窓の外から雨音が机上の窓を覗きつつ聞く
大抵は名ばかりだから気に留めず直ぐに忘れて本質を見よ
一瞬の小さな炎が離れた場所でまた点り火花も散らす
躓いて挫いて滑りおこづいてそれでも何もなかったように
曲線を手に馴染ませて染み込ます全てそこから語られてゆく
空白を埋めてくように文字を書くただそれだけでぐったりとする
最初から悲しいくらい薄かった向こうが透けて見えるくらいに
幾つかを掴んで投げてみたけれど波紋は立たず雨が降り出す
人類が消えた地球で保存機関が持続性を示してくれる
悲しみが底の方から湧いてきて溢れんばかりになる午後一〇時
この星のちょっとは長い歴史上最も孤独な猿を探して
自然の中に言葉を投げ返す初音の響きが突き返される
救われることのない魂が水面に浮いている混ざりあわず
もうすでに形と呼べるものは消え素描の夢も忘れ去られて
どれもみな幻ばかり誰かある実際にあるものをもつもの
あれはみな偶然なのか運命かそれそのものを見たことはない
流れに逆らい泳ぐのに疲れ果てそのうち砂に埋もれてしまう
何をカントが投げ込もうとも深淵は深淵で且つまた無意味
バンクシーとは光源のない影でありどんな言葉もすり抜けてゆく
オリパラもW杯も現代の大ピラミッド権力の墓
見えてくる遙か手前で引き寄せる真空の闇のその彼方から
強力な地力と磁力が相俟って惹き付けもする遠ざけもする
誰かが誰かを呼んでいるあなたがわたしを呼んだのかその逆か
指切りをして約束をしたことがあったかしらと手のひらを見る
手の上の希望のなさとは裏腹に線と線とは繋がりかけて
削り出しいまだ存在していないわたしをここに呼び起こしたい
誰一人わかっているものいないけどずっとそうしてやってきたから
スーパーの棚のパスタが少ないと何やら心穏やかでない
谷底がさらに沈んで突き抜けて谷でも底でもなくなってゆく
谷底が隆起してきて飛び抜けた高原となり高山となる
布団から手を出せなくて一行も読めないだって寒いんだもん
ほっそりとした葉が草の間からするする伸びる花は咲かねど
そこここに見えない線が引いてあり自由に行き来ができない世界
世界の片隅から世界の片隅へ網の目を抜け届くもの
引っ掻いてやりたいなんて思わぬが猫になったらそうするだろう
これまでのどの金曜も黒かったこの先もまた真っ黒だろう
どれを読んでも同じ人どうせ嘘ならそれらしくあるだけでよい
陽が翳り真っ青だった空に幾つも綿雲がすぐにまた照る
前半の三十秒で落ちてゆき後半でまたぐんぐん上がる
両の目を抉り取られていてもなお象の背に乗り普賢は救う
ぶらぶらと迷い迷って逍遙す不埒なものもそのお血脈
にょろにょろと棒線プラス感嘆符では感じも気分も違うのだ
空疎なる世界にいつも痕跡や何かがあった記憶が残る
すぐ底が抜ける袋を取り換えて貰う間に行ってしまった
地球より重い命を八十億ものせて地球がイアとなく
八十億の欲望が傾きかけた世界の上にのし掛かる
八十億がそれぞれに翻訳できぬ固有の言葉で話す星
おめでとう八十億の隣人が狂気に満ちた時代を生きる
ひと目見て何が解ろう偶さかにひと目で全てを見る人もある
霜月の冷たい雨に濡れる花その雨粒も天の祝福
有ったけどすぐに消えてくその裏で無かったところに現れるもの
日常の些細なところが綻んであちらこちらに裂け目をつくる
何処までもライヒェルトなら飛べたのだ翼が正しく開いていれば
伊勢の沖深さ350㎞フォッサマグナを越えて震える
文字列に文字列を継ぎまやかしの会話のような場面を興す
間違っていつもの道を見失いどこに行くかも忘れてしまった
何回も辿り直して少しずつ言葉が増えて終わりが消える
この先にもしも何かがあるのならそれを見るまで歩いてゆくが
橋を過ぎ振り返り見る影ひとつあの日のように角を曲がって
世界から遠く離れたところより遠いあの日の世界を思う
辛うじて在るべきものは在るべきとこに在るようだ儚きことよ
雲低く気分も少し項垂れるふと見上げれば紅き山茶花
もういいと思えてしまえる程のこと何かしてたら同意をします
粉々にしてしまうまで踏みつけてそれでどうなる事もないのに
今日もまた世界の外で立ち尽くしカーテンを引きだんまりをする
寒々と昼でも暗い霜月の曇天なれど上着が暑い
言ったこと九割以上がでたらめで年に数日いいことを言う
見えぬもの見ているだけじゃ見えはせぬ見えないものを見るのが魔術
秋空を高くどんどん何処までも静かな場所で耳を澄まして
明日はまだここには来ないどれほどの水の流れが行き過ぎたろう
諦めの歓喜の声と嘆く声混ざり合ってる最終楽章
いつどこで未来が明るく見えていた遠く遙かに昔のことか
気がつけば忘れたことも忘れてたそんな小さな事柄ばかり
遠き日の記憶の欠片がよみがえる飴色の光の中の影
軽やかに悟りたるもの軽やかに立ち止まるもの飛び越えてゆく
勝ち負けがつくこと自体が好きじゃない勝ちたくないし負けたくもない
一つの事しか出来ぬもの幾つも同時に出来るものそれしかいない
遠く離れているようで全ては全て接してて見て感じてる
人間の光も闇も抉り出す松岡茉優の強度と危うさ
探索のずっと前から見当たらぬものがそこらに散らばる世界
見るものを全く同じに見ることを願うわけではないのだけれど
見えているこの景色とて共有が出来ずにあらば我が創作か
隧道の遠き出口を目でとらえ立ち竦んでいる冷えきった脚
遠くから眺めていてもそれだけで遠さはじかに伝わってくる
時代が世界を蝕んで球体に近づいてゆくフランクフルト
置いてかれはぐれてしまい手を振って別れた記憶は殆どなくて
本を開かずスマホ握って眠ってた落ち着いてそばにいるから
猿なのに毛を失ってゆくごとに単細胞に退化してゆく
人間が人間らしさを捩じ曲げてゆがませてきた歴史の佳境
ほんのりと頬をピンクに染めながら告知されたる未来の行方
冷ややかな暗い夜すら祝福かひとり黙って文字を打ち込む
がらがらと舞台装置が入れ替わる猶予の期限はまた先延ばし
こっそりと袋の中身減らしてく下衆な企業が滅びますよに
秋空を小さく光る飛行機がけたたましくも優雅に横切る
自由とは誰もが自由になるために自由を自由に分かち合うこと
選挙すら空疎なものになってゆく数字と金が躍るお祭り
滑り込む静かな夜にこっそりと突き落とされてしまわぬように
夜が来てまた沈み込む寂しさと悲しさが折り重なった下
ウラヌスが冥き闇へと身を隠し大地と空が裂け裏返る
透き通るガラスの玉を下に敷きあたかも空に浮かびたるよな
砕け散れ優雅に石を眺めてもこれより先にもう先はない
空に向かって延びてゆく重さを脱いだ曲線と真っ直ぐな線
風を呼ぶちらちら小さな揺れ動きぶわっと吹いて光りが靡く
全体もその断片の全体も理解が出来ぬ昨日も今日も
火がついて燃え上がることもないままに黒く渇いた燃え滓となる
学校のチャイムが耳に真っ白な光の中の零時一五分
立冬の朝早くから変わらずにどこかの屋根から雉鳩の声
冷え冷えとした灰色が束の間に白く輝くまだらな世界
なぜ犬は流れに逆らい泳ぐのか砂に埋もれるさだめを知りて
まだ手の平にのるほどだったころ空高く高く投げ上げられた
直接にでも間接にでもなくて中で何かが響いてるだけ
跳ぶように狭い階段降りてくる白い仮面の三角の人
ひとつずつ時間をかけて積み上げた石積み崩し巨木が生える
するすると皮を剥ぎ取る要領で空がこじ開き雲が千切れる
静かだ誰も何も言わない静かだ外はきっと騒がしいはず
少しだけ開いている窓まだぴたり閉まらずにいる秋の夕暮れ
斜めから日が差し込みし床の上ごろり寝転ぶ光の中で
静けさが戻り陽のかげ冷ややかに風たちの家うめきむせつつ
目の前の屋根越しに出迎える窓を開け顔を上げ朝の光
乾いてはまた溺れ音もなく泳ぐ馬ことばは滅びただよう
迷いなく道行く人よその道は堂々巡り迷わず迷う
ある人はそれをひとつの船とみた燃え盛りつつ空に浮いてる
あなたよりどれほど低い段階にわたしがいると思われるのか
まだ何かよく分からない特別な近寄りがたい魅力をもつもの
声がまたただの音になる満ちていた言葉が遠く引きしりぞいて
分かるより分からぬままに誤読して自分の世界を広げればよい
分からないでも分かるいつもそう変わらない同じことだから分かる
段々と干涸らびてゆくその脇で茹で蛸になるものもあるとか
空見上げ見えない花の茎を持ち手首を捻り手折る真似する
萎びきり茶色く小さくなりし花その横でまた蕾がひらく
床につき充実感に満たされて眠りにつける人を妬むよ
ワクチンという名の試練に挑戦し何とか無事にクリアしました
降り出して土の匂いに包まれる偽りのない大地の香り
背もたれに肘をつき重い額を手で受け止める目を閉じたまま
ワクチンを打ちて三日目で漸く少し重苦しさが抜けてくる
オミクロン対応型は前のよりぐったりとなる時間が長い
令月も風きよからず梅や蘭では和らがず飯を食わせろ
死なないでいつかどこかで出会う人わたしも精々生き延びるから
いにしえの奈良の都も草原にうもれていまや見るかげもなし
有名な詩でも暗唱するように我が拙稿を諳んじたひと
五時過ぎにもうひらひらと蝙蝠の小さく黒い影が舞い飛ぶ
悲しみと絶望と落胆と無力感もう何もない何もない
ざらざらと崩れて風と共に去る手にいっぱいの夢や希望が
少しずつ塗り潰されて切り取られ違う世界が隣り合わせに
ワクチンを打ちて二日目も怠くて気分が優れない横になる
どんよりとしたまま何故か眠れずに体の中が消耗してゆく
また今日も東の空が明るくなって目が覚めるたぶんおそらく
両腕を腰に回して肩越しに鼻をだらりとナンディケシバラ
ボルヘスの文庫本に挟まりし時の流れと喪失の枝折り
どう見ても中身は空の木偶の坊居ても居なくても変わらぬ世界
窓際の陽当たりのよい椅子に掛け背中が時折外気に触れる
四度目のワクチン接種重怠い三ヶ月後にまたこれするの
円環の底で折り重なるように二匹の猫が微睡んでいる
幾重にも重なり合った円環に組み込まれたる真っ青な空
薄くなり組織や管も浮いてきて露わになってしまう欠陥
消えかけた記憶の糸を手繰りゆきサインはあったと後から気づく
吐き出した後から出てくる言葉たち濁りもとれて粘り気もない
道は出来またすぐ消えるささやかな歩いたものもまたすぐ消える
見つかった見つからないねまだやるののんびりやるよ朗報を待つ
何処にでも有るものは無く何処にでも無いものは有る有るが有るだけ
すり替えた偽物の家を隠すため嘘で固めて歌で讃える
空ろなるこのたましいの遣る瀬なさ喩えて云えば秋の蛍か
今日もまたモーパッサンが食事する凄く嫌いなエッフェル塔で
あちこちの見慣れた景色が消えて行き私の意味も削られてゆく
ぐずぐずに煮崩れしてるコンセプト灰汁となりたる意味を取り除く
形なき断片だけのコンセプト寝かせた途端に溶け出してゆく
ほろほろと崩れ始める煮詰まった形になりかけていた思考
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら移動する右に左に揺らめく踊り
泥になり濁流となり押し寄せる踏みつけにされし大地の怒り
噴き出すものと流れ込むもの踏み固め払い除けての神無月
駆け足で通り過ぎてく神無月もうすぐそこに霜の降る月
気をつけろ同じに見えても行き詰まるもう手遅れだ静寂がくる
静けさはまたくるすぐに移りゆく時代のサイン無常なる生
踏み出せばもうすぐそこは別世界見ずに感じよ侘び寂びの生
似てはいるそう見えるだけで違うもの近づきすぎで摩擦が起きる
繰り返し舞い唄われて星月夜幽玄を越す賤の苧環
うらぶれた木枯らしの吹く音がする子供のころは鳴った手笛で
絶対をどこかに置いて有る無しの線引きをする矛盾の論理
正しさの二百億もの階調に当て嵌まらないものがあろうか
今は夜そのうちきっと朝になるぐるぐる回る星の上なら
最高の賢者たちこそ今ここで全部を賭けてゴーするものか
一文字を嵌めて違いが判ること嵌めるだけでは分からないこと
また同じボールペンをダイソーで買えばいいだけのことなのだけど
ちょっとした変化が不安をかき立てるあのボールペンどこ行ったのか
黒色のペン一本で描かれた世界の顔に赤入れられる
不注意で離ればなれになることも偶然にまた近づくことも
戻らない追い出されたのは何時の日かもう中心も何処かわからぬ
還り往く冷たい風の揺れうごき和らいでゆく流れにひたる
いつまでも覚めない夢を見てるのかここがどこかも掴めぬままに
どれもみな自分勝手な勘違い壮大なのもちっぽけなのも
ごつごつとした太い幹を横倒し切ってはならぬ導線を切る
残念な世界をさらに貶める残念すぎるあなたやわたし
手のひらを下向きにして人差し指を額にあててストップ・ミー
窓をあけ簾を上げて固定する楓も蔦も見えぬ窓だが
西日避け下ろした簾そのままでそろそろ秋を窓に見せたい
眼を開くとタイムラインに遊女が眼を閉じて見ると普賢菩薩が
あたたかいお布団というものはない人が寝るからあたたかいのだ
空青く遠くで工事の音がして時折車が行き過ぎるだけ
秋晴れの清々しくもあたたかな昼飯前の井戸端会議
ヤオコーの上空を飛び鳴き回る烏の群れの哀れなるさま
ぼこぼこと湧き出すものを掬っては半身乗り出し手で捏ね回す
ひび割れてもう響かない鐘の音が暗き隘路に粛然と降る
何をどうしたらいいのか知ってたらそうしただろう迷わずきっと
規格から外れたものは弾かれるポカヨケしてる工場みたいに
目を閉じてどこまで行けるか夢想する足が寒くて靴下を履く
立ち上がり二本の足で歩いたがバランス崩し躓きほろぶ
どこもみな繋がっていてどこもみな逃げ込む場所となることはない
マスクせぬ時代もきっと知るだろう白くなってる長いのを抜く
よろよろと立ち上がるのはまだここにけりを付けたい事があるから
白鸚や幸四郎ともいうけれど感覚的には今でも助左
寒い朝そっと吐き出す細い息もう眩しくて顔を伏せながら
ゆったりと湖水を泳ぐ白鳥も胸の内では世界を呪う
爆弾に汚いものでないものがあると思える心が汚い
全てみな嘘臭くなると思ってた言葉でなにが言えるというの
いつか来る始発を待って震えてた死ぬほど寒い下北沢で
この冬を乗り越えたとてその先にいつもと違う春が来るだけ
どれほどの重い苦しみだったのか今となっては何もできぬが
高々と聳えるように独り立つ絶海の果て耳を澄まして
差し向かいお通夜みたいな雰囲気で町中華する夢を見た朝
朝からの雨も降り止み地もかわきあちらこちらで百舌が鳴き交わす
昔から誰かであったことはなく誰にもなれず形も崩れて
大いなる闇の国から闇を広めに来たような赤毛のクイア
ばらばらで追いつけなくて舞い戻る制御不能の脱いだり着たり
斑に低く垂れ込めた灰色の雲の合間に秋の青空
どちらかの布団の向きが変なのか掛け布団だけ下にずれてく
銭なんて端からあった例しなし多くは食わない一膳にする
重力に抗うように引き止める洗濯鋏の左官長兵衛
サンダウン黄金に染まる空と海くれなずむ浜のイメージビデオ
とろとろとあくび指南のお師匠の科白を読んでいるうちに出る
義盛も広重も見たあの富士と燃え立つような秋谷の夕陽
鉄を打ちがらがら敷いてほっぽって作って壊し捻り出される
望もうが望まざろうがさようなら生きる資格がもう期限切れ
ゆらゆらと汚れた泥が散り散りに跡形もなく底なき底へ
崩れ落ち風化してゆく石の塔何時かの誰かの乾いた祈り
いつだってどこにいたって疎まれて貴方は誰か神が何かか
霜降の人の気配も薄くなる黄色茶色にふけて落ち行く
透明にもっと近づき消えてゆく意味も抜け落ちただ在るが在る
音もなくめぐる季節は駆け足で秋のふりして忍び込む冬
老兵が死に場所もとめ火矢放つ少し間を置きみな焼け落ちる
複写した私を全て寄せ集め私が誰か特定をする
穴倉の薄暗がりで横たわる朝か夜かもわからぬ時間
片隅の石ころみたいな存在に身を俏しつつ落陽を見る
平凡な詩人はいつも同じ詩を同じ時間にノートにしるす
囀るな憐れな鳥よ同じ歌二度繰り返せばもうそれでよい
覗き込む古井戸の底に見えてくる暗い水面に映るあの日が
本能が越えゆくことを欲しないもうこの辺で終わりにしよう
ちっぽけな死の傍らの清潔さファンタスティックな惑星の上
カーテンに窓の硝子が落とす影挨拶をして飛び去ってゆく
びいなんて言ってみたってそれらしく返事をくれる鳥すらもない
背を少し反らせるだけで越えてゆくふんわり上に伸びあがるよに
宵闇が暗さを増してうずくまるむくむく膨れて目の前に居る
少しだけ羨ましいと思うけど今更なにを言っても無駄か
秋の夜ニーチェを手にしふと思うあの人その後どうなったのか
嘲笑う声が聞こえてくるような澱んだ時間の袋小路で
痛いほどひりひりしてた舌先がもう何もかも忘れつつある
手探りでちびりちびりと進むうち周りに誰も居なくなってた
おそろしく小さなものが真っ当にその小ささを見せただけだと
歩むたびぬかるむ深みは酷くなるぐずぐずになり境目もない
少し浮き微かに明かり見えてくるまたすぐ沈む冷たい底に
ちょっとした失敗でない失敗も世界を苦く味変させる
掠るよに当たっただけでも傷になる浅くて薄いものほど癒えぬ
手に温い蛇口の水がさきがけて季節の動きひそかに報ず
しろがねに窓いっぱいの差す光り秋の深まり寒露末候
階段を昇ってすぐのモニターで「スリラー」を観た福岡無線
妄想の世界もいつしか冷えきって感覚は閉じ断片を接ぐ
魂が抜けきりません人だから寂しく生きて死にゆくさだめ
どこまでも空疎に生きて死んでゆく始まりと終わりそれだけがある
ばらばらに砕けて降って落ちてくる雨も光も空も世界も
スマホ持ち短歌をメモる短冊を手に発句した芭蕉のように
はらわたが苦手だからか見限られ秋刀魚を食べることもない秋
目映さに世界が霞む瞬間は老いてくるほど眩しさを増す
ひょろひょろとただ一本で深くまで伸びてゆく根の所在のなさよ
がさがさと頭の中に入り込み苦々しさを投げ付けてくる
いつの日かあの門の前に戻るときまだその先に道はあろうか
特別は何処にもなくてすべてみな普通の偶然でしかない
破壊され置き去りにされて忘れられ静かに森に眠る鉄屑
公園で遊ぶ子供を眺めつつ昔懐かしむだけで不審者
ゆっくりと評伝を読み確かめるわたしが何で出来ているのか
夏至のころ圧縮をした掛け布団霜降る前に復活させる
平板な古いタイプの世界から暗く湿った秋の日をみる
冷え冷えと秋は深まる神無月白き名残を道路に留めて
人でなき仮面を被り舞う人もあるようでない神無月かな
沢山のちょっと前とかもっと前ふわふわ連れてもぞもぞ生きる
ふやふやと柔らか過ぎて焦点が定まらないし掴めもしない
ぼさぼさでぼってり丸く我らはみんなロバート・スミスになってゆく
継続は何とかなりと追い続け老いるショックもサステナぶって
秋深し更けゆく夜に語り合う本覚坊とミルトニアの花
ぶちまけてトマトスープを頭から空の上から外気圏から
お囃子とお囃子とお囃子とお囃子が辻で奏でるポリリズム
提灯の海が波打つ一番街屋根より高く人形がゆく
秋の実を規律をもって奪い合う祭りめかした鳥たちの声
果てるまで悩み苦しみのた打って鳥が囀り歌う世界で
6Pのチーズの紐が端に逸れ唯それだけで暫し格闘
どれくらい座ってじっとしていたか下の階から遠く離れて
所謂ね理屈じゃねぇんだよなのよ生きるか死ぬかそんな問題
どうかいと昨日のわたし問うてくるどうって事はないと答える
パチンコがやりたいだけであんず飴いつも狙いはみかんだったが
秋晴れの陽射しが戻り久々に暑さも戻りエアコンつける
ぽんぽんと祭りの朝の号砲の響きを耳に二度寝などする
爪先が木の枠に触れことことと昔と変わらぬ乾いた音が
がたごとと音を立ててた物たちが今ではひそり静物化して
燃え上がる仮面をつけた肖像の青白き火に冷気を感ず
幾つもの重なり合った世界から何故かはずれを何時も引いてる
起こさずに寝かしつけとく神無月もっと弛めと思し召すのか
焼きそばの赤いビニタイ捨てられずぴんと伸ばして雑魚寝させてる
錆び付いて崩れ落ちてく寸前の境界線の外側の町
掘り返し壊してはまた掘り返す記憶失う記憶が残る
あの家は消えて跡地は駐車場こちらは見慣れぬ三階建てに
薄汚れ沈みゆく町どんよりと静かにじっと往時を想う
狭いとこ通り抜けてく綱渡り誰も気付かぬちっぽけな危機
麓までなかなか光差し込まぬ山高くすることばかりして
雨上がり鳥がさかんに会話する誘い合わせて何処へゆくのか
快く思わぬ思い貯め込んで溢れ出てくる小さな身振り
凍りつきこごえる程にぞっとする乾いた驚きスキン・ディープ
スノッブなピテカントロプスエレクトスの胸の内アルミコンクリ
目の色はグリーンだけどそのうちにまた赤になる渡すよ渡す
いつまでも夢は続いて続かないおやすみを言う電話ボックス
闇のなか燃える頭に口ひとつその感覚はまだ藪のなか
いつまでも息の仕方がわからない冷めてしまった溝の狭間で
流れるともう止まらないぶらぶらとみんなおんなじになるイージー
落ちてゆく間のびしてゆく細くなる声ささやかに息切れてゆく
掴んでる縮む指先あるナイフ何がリアルで何がフェイクか
物干しの竿に幾つかぶら下がる水の雫を見て雨と知る
飛ぶようにどんなに深く潜ってもガラスの下の狭い部屋まで
もう二度と話し掛けてはこない今けれどもいまだ呼ぶ声はする
両の手をぐっと絞って胸のまえ気楽なところを一生懸命
どんよりとこの上もなくのったりとロバヲが歌う撓む終末
年老いて沢山のものうしなって疲れ果てたる沈みゆく星
危機迫り未来の底が見えている逃げも隠れも出来ぬ終末
マーラーの第九静かに響く中消え入るようにすべてが終わる
同じいま生きているから響く歌ゆっくり沈む暗き深みへ
独りきり取り残されて空の下終わりの歌が終わった後に
さっきよりそれはすっかり近づいて星々は落ちみな燃え尽きる
気がつけば全ては崩れスカとなるコギトエルゴスム空しき響き
夜鷹そば主は家で夜食喰い夜鷹じゃきっと病いになろう
人間になりかけなのか人間が薄まったのか半分人間
何時だって周りとペース合わないで気づけば遠くコースも外れ
どうやって此処まで歩いてこれたのか此処から先は何処へ行くのか
いつの日か拾った石を差し上げるいい石きっと探し出すので
今日もまた由と刻さる手作りの少し歪んだ茶碗で食す
僅かでも隙あるならば戻り来る秋の夏日の空を見上げる
陰影の変化のうねりに掠われて漂うように光へ闇へ
誰からも気づかれぬままひっそりと人知れず咲き草臥れてゆく
近くても遙かに遠いものもある距離を感じるならまだ近い
あの曲の歌詞もビートも憶えてる狭い通路の奥の右側
あれこれの答えの出ない問いかけがあの頃のままループしている
空白は黒々とした影である見える世界を語る言葉の
見えている世界をぐるり裏返し見ているものの空白を見る
二つある顔と顔とが向き合いて二つで一つでもなく舞いて
たぶんそう見えているのだ明日また今日と変わらぬ生きるがあると
閉じたまま端と端から塞がってあっちとこっちいつか繋がる
唇は乾涸らびきって閉じたまま声にならない声を叫んで
吹き抜けて三十三の輪を描きまたモノクロの建物の中
崩れ去る瓦礫と瓦礫ごつごつと打音とノイズの深き浸透
蛇含草出さずに終わる蛇含草餅目一杯鯉昇の至芸
ぼんやりと過ごしてしまう雨の日も歌を詠んだりすることはする
書き込みのない古本の奥付に買った日付と書店の記録
何回も終わりの歌が響く中ひとりで戻る消え入るように
何回も通ったような道だけど最初が何時か記憶にはない
色のない世界もやがて海になる静かに靄る緑に埋もれ
波は寄せ砂降りかかり色を変えやがて朽ちゆく世界が咽ぶ
きっといるまともなものをもつものが何処にも居ない人を呼ぶ声
熱中症にインフルに注意の表示出続ける世界を生きる
あくまでも自分としては澁澤は川越の人だと思ってる
湿り気のある音立てて駆け回るはらわたに棲む暗き苦虫
ホメロスが胡桃殻から飛び出して鬼ヶ島行き鬼退治する
中秋の名月の頃まだ夏で十三夜にはフリースを着る
夕時はさすがに半袖一枚じゃ全く足りぬ寒露やや寒
側溝に溜まった水に写る影溝蓋越しに烏訝る
靴下がひっくり返る最初からひっくり返して履いていたのか
迷路から記憶の地層取り除き被いを外し何処を見晴らす
能面の外にはみ出すぶよぶよの顎のラインは夢か現か
冷たい雨は止んだけど戻れば少し行き過ぎる寒露の初候
悄気たよに冷たい雨を滴らせじっとしている青き柳葉
ドリップの重い苦味と再会しさらば水出しまた会う日まで
気付いたら上四枚も着込んでる下は何故だかまだ短パンで
ばらばらに飛び散るものが通り過ぎ私は何処に消失したか
始まりは見えない点で順々にそこから全て並べられてく
ぱらぱらと雨ふきつける夕時の秋と思えぬ暗さと寒さ
鉢植えの葉が外を見るカーテン越しに秋雨が濡らす緑を
トレーナー着込みたくなる肌寒さ三十年も着てるディスカス
わたしの胸のうえの汗目を閉じてあの新宿の夜の窓辺に
色々な感情混じる声もれる遠い昔の己おもえば
この皺くちゃを広げてみせる悲しさも皺くちゃな悲しみとなる
ほっとくと指すり抜けて逃げてゆく空白という不在なげすて
もう少し遅く起きたら今はないそうだとしても居ないよりまし
アンテナの上に佇む独りきり雨にも負けず雉鳩が鳴く
毛布から手を出せぬほど縮こまる本も読めない雨降りの朝
雨の中萎れて小さくなり濡れる褪せて白けたピンクの薔薇よ
蛇口から生温かい水が出る冷えた手先を残暑が洗う
秋寒の助走短き深まりに雨降りそぼりどがちゃかになる
見るべきものを見てないでそこにないもの必要以上に見たりして
しとしとと降ったり止んだり窓の外目白の声が近くでしてる
憎しみは形にならず噴き出してまだその辺に漂っている
カーテンの手前の黒い物の影もう夕方か二度目の起床
十月が暗く沈んだ顔見せるそういう所むしろ好きです
雨が降り気温が低く快い後は湿度が何とかなれば
掃除機が近付いてきて一瞬で外側のビニール袋失せ
ほぼ空のタンクが息を吸い込んでかさかさになる落下しながら
ぽんこつなふりをしているだけなので飛んで来たらば撃ち落とせます
専門の人たちだけで是非どうぞ勝手に動員されちゃかなわぬ
この肉も大きく動くサイクルの一部であるとどうしてわかる
雲間からあやしく滲む朧月ほんとと嘘が交じりあう夜
鼻糞をほじって丸めテーブルの上に並べてゆくような歌
無駄だって知っているけど本当はリスキリングで何がどうなる
元気よく蛙が鳴いてうっすらと明るさ残る真夏日に幕
雉鳩の鳴く声耳にするだけで何故か心が穏やかになる
絶え絶えの息がいつまで続くのか頭の上を救急車ゆく
光受け高き所の葉は白くその木陰では目白囀る
あの空が白々しいほど青々とすればするほど胸が戦慄く
土ぼこり乾いた水の表面に沈んだ記憶散り散りに舞う
表面に波は立たねど全体はうねって動き湧き流れ出る
見上げれば上弦の月冴え冴えと白く輝く透き通るほど
流れてく滝が全てを引き込んで黙ったままで遠くだけ見る
先を行く世界にいつも置いてかれ遠きサイレン滲んだままで
ヘリコプターが飛んでいるばこばこと空震わせて溶けてなくなる
秋の空遠い目白の囀りも何か寂しい涸れゆくときに
真っ直ぐに黄色くなった葉が落ちるはっとするほど趣もなく
飛び立つような気配も見せず地面の上でじっとして蹲る
それはただ張り出すように乗っていて転げ落ちずに斜めに歪む
推されずば何も動かぬ世になりて生うも枯るるも一方ならぬ
祈るたび小さくなりし声も身もただ見守ってほしい一念
大河にて近ごろ耳にする声が鶯の地鳴きであると知る
諦めず何処も彼処も赤錆びた開かずのドアのノブを掴んで
満ちるまで半分までも足らぬ月されど大きく明るく高く
何もかも青から黒へ沈みゆく深い記憶の底に還って
太陽の角度が下がり射し込んで来たる光も長く厚くに
あったかも知れぬ世界を夢に見るけれどもそれは夢のまた夢
ガウン脱ぎ真っ赤なタオルごしごしと静から動へ燃える闘魂
猪木も死んでひとつずつ明かりが消えてゆくような黄昏れる秋
猪木死す昭和の終わり終わりゆく今より後の世をいかにせん
猪木なら病にだって勝つのではそんな風にも思えたけれど
暑いくらいの昼はすぐ暮れて日に日に夜は長く深くなる秋
少しだけ窓を開けると一面に金木犀の香りが満ちて
ちょっと調子が悪いだけ大袈裟に弱気になってしまえるぐらいに
圓生が協会統一するなんて考えてみりゃ落語みてえだ
六代目円楽が逝く円窓の死から半月でげに無情なり
あの時のイカンガーとの激闘が今も瞼に焼き付いてます
長月はあっという間に過ぎてゆく日ごと季節を変化させつつ
烏瓜置いたところにそっと当て扇子くわえてふうっと一服
弱弱と豆粒放り投げたとて見える範囲に落ちるだけなり
手ですくい掻き出すように書き出して何だか少し軽くなる朝
ひんやりと世界隔てる透明にかつんと当たる中指の先
五百グラムのコーヒーが小さくなってお得感すっかり目減り
いつだって何者なのか教えてくれる立ち入り出来ぬ線を示して
まだ足らぬふわっとしててすかすかな羊雲では沈んでしまう
目を閉じてもう一度あの虚しさを再生させて味わってみる
晴れたそばから薄曇る古本の小さな文字もすぐにぼやける
草はらや秋の田んぼに群れて飛ぶ蝶や蜻蛉の気忙しさかな
秋の空真ん中すっぽり被いたる羊の群れのうっすら白く
はたはたと揺れる葉ながめ秋風のそよぐ世界に耳を澄ませて
鈍磨して上がってこない両の腕生きる気力の抜けきった朝
朝方の近くまで来た救急車雨戸の外に雉鳩も鳴く
約束をされてる動きゆったりと何度もなぞり浮き出すように
撫でるよな優しい音色アコーディオンぽろぽろ零れまた降り掛かる
本当に正しい人はどこにもいないオンベレブンビンバソワカ
雨戸を閉めて電気をつけるまた過ぎた意味もなくただ一日が
散歩する保育園児のおしゃべりに茶々入れるよに鴉が騒ぐ
ゆっくりとカーテン越しに降りてくる秋の日差しの澄んださざめき
少しでも希望があればこの道を真っ直ぐ進む何処何処までも
あの角を曲がれば何かあるのかも真っ直ぐの道たのしからずや
もう少しあと少しだけ手を伸ばし何か掴めるものがあったら
沢山の下らぬことを話したが今となっては聞く人もない
まだ何もお知らせできることはなく申し訳なく思っています
何もない紛れることもないままで空白のまま今だ変わらず
何もなく何の進歩もないままの半年でした極まりが悪い
たった独りでいるのにはまだ慣れなくて話す相手がいないので
半年が過ぎました何だかとても変わったような何だかとても
国葬でもうこれっきりさようなら過ちはもう繰り返さない
国葬でこれっきりだと思うなら少し気分も晴れるか知らね
国葬は終わりの終わりもう終わり頁めくって新たな章へ
どことなく未練がましき残暑かな国葬までも空の器で
もう後戻り出来ぬと言うか国葬儀涙ぐましい猿芝居
秋晴れの十三里先の空の下なんか国葬してるというが
国葬のこの字も見えぬインスタに初めて心地良さをおぼえる
遠くあり近くにもあるいつだって千秋楽もまたすぐ戻る
遠くなる近づくことは出来なくて薄らがぬよういつも思って
そうやってみんな段々薄らいでちょっぴり遠く離ればなれに
何も思わぬ様になる相撲を少し遠ざけているからかもね
薄らぐものは様々でどちらかと言えば相撲を見ていないのだ
あの日から千秋楽は三度目でやはり段々薄らいでゆく
秋場所の千秋楽であったけど特に何にも思うことなし
待て残暑名残を惜しむ寒蝉の幕下ろさせぬ大喜利の声
秋晴れの日の夕時に蛙鳴く雨乞いの歌テンポは速め
塀際ににょきっと生えてた雑草も葉を赤くして見る影もない
ひぐらしの高き所で鳴く秋の青く晴れたる陽光の下
マカロニパスタ茹でてたら一本ペンネ混じりたるようこそと言う
目の前に放り出されている世界巻き込まれては放り出される
最初からちっぽけだったそれなのにもっと萎んで言葉も出ない
のろのろと蛞蝓みたいに這ってゆく塩振られたり疎まれながら
負の面を描き出すのも優しさで調理次第で美味しくもなる
役割に合わせて合わす場も無くて見えないくらい透明になる
幾らでも変な形の石はあるそれなりにみな砂利石になる
がたがたな掛け違ってるボタンでも掛かっていれば及第となる
飛んで行け何時か何処かでもう一度不意に芽を出す事もあろうて
雨音と行方不明者アナウンス強くなったり弱くなったり
粉々になって染みいるあの色の記憶またたく時の間の
二つ目の台風去って濡れ布巾二度拭きをして秋を招ずる
秋分を過ぎてもいまだ雷のごろごろと鳴る雨の土曜日
降りやまぬ台風の雨ざあざあと歓喜に震え鳴く雨蛙
触れないでただ傍らで眺めやる近くで見たり離れてみたり
ベランダの庭屋根にして斜面の上の小さな隙間入り込む
何気ないだからどうした手にとってさらりと風に吹かるるままに
書いたって何のあれにもなりゃしないなのにどうして無駄と知りつつ
春はなかなか脱がないで秋はなかなか着込まない素直じゃないね
秋分の曇った空の灰色のひんやりとした静やかさかな
台風が次々と来てしつこい残暑蹴散らすも湿度下がらず
じょぼじょぼと降り注ぐ雨暗い朝落ちてくる音流れゆく音
落ち込んでばたりと倒れ寝て起きて少し浮かんでまた沈みゆく
上がったり下がったり基本的には沈んでばかり底の底まで
挫折するまだこの歳で日に何回も挫折する残念な人
市松だったミライトワソメイティ白でないのは見ての通りで
青み濃い高い空から塊で光る空気を投下する秋
遠い目をして目の前の鏡に映る遠い目をした誰か見る人
可愛い犬の画像見て独りおかしな声漏らす世界が凍る
みんな失敗だったのよ失敗を成し遂げた人だめだった人
誰にでも読めて通じる字で書いてそれでも通じず読まれもしない
求めつつ捨て去るような離れ業ようこそと言うようこそと言う
政党やカルトのロゴを見てみれば当てにならない日光もある
山葵と芥子鼻に詰めてる太夫あり夢と現の二種免許
日めくりアニメ無い理由考えて仮説を立てて夜は更けゆく
暁の曙光が逆に降りてくる巻き戻されて歴史が沈む
何もない所に誰か火を灯すいつかは消えてまた暗くなる
やわらかに木々の梢に降る光りしずやかにあう秋のおとずれ
ぎりぎりで乾いてないのでまだ夏か彼岸花とて盛期過ぎるに
ざわざわと色めく頃は飛び去りて燕尾を振って晴れて曇って
蛇口からぬるく感じる水が出る秋めく空気と残暑の名残
二つ頼むと一つ必ず忘れるといつも言ってた言われてた
近くのとても遠いもの見ようとせずば見えぬものでも人は人
猛烈な風吹き荒れた夜なれどピンクの薔薇は何処吹く風で
風向きが変わって白く曇りだす雨にもけぶる窓ガラスかな
台風が遠くあってもざっと降り遠離ってもまだ雨が降る
もろともに夏の名残は去りたるか秋の台風一過の黄昏
実体はほんの小さなものだもの可哀想だよ大人なのにね
全身に病抱えたこの星のどの心臓もステージIVで
直観をベルクソンの言う絶対を思索/詩作の基礎の哲学とする
試論からぐるりと周りまた試論終わりなく読むベルクソンかな
また戻るベルクソンへと回帰する思想と動くものⅠを読む
大型の台風とても大部分人の手になるものと思わば
あの頃に霞ヶ関ビル何個分消しゴムのかす生み出したろう
どういう訳か災難続き知らぬ間に罰当たりなことしたかしら
窓ガラス激しく雨が吹きつけてごぼごぼ沈む水滴の底
屋根の下避難してきた蚊がいるか何だかとっても足が痒い
北上す湿った空気雨降らし束の間晴れて曇って降って
雨上がり熱帯思わす風の朝水滴らす青き木瓜の実
風強く雨突然に強く降る息苦しさに臥せる朝方
独り静かに日々過ごしてる強風は殊の外おとろしい音
何もかも型通りでは味気ない型が無いのは丸で台無し
雨音が強くなったり弱くなったりどちらにしても気が滅入る
灰色の湿った空にごうごうと遠雷響く秋の台風
じっとりとしている空気不快なり季節も気候もまともではない
表面がかさかさになり剥げ落ちる穴を穿たれてもまだ生きる
悲しみはとても薄くてぺらぺらで有るか無いかも判らぬくらい
圓窓は最初に見たピンクの人子どもはやはり小円遊推し
古本の頁の地層に埋もれた京王線の切符発掘
鶺鴒のちいちいと鳴く窓辺かな疲れて臥せる寝ぼけた耳に
何も無い誰も見てないとこでなら四回転半跳ぶよばっちり
見えるもの見えることまで見えぬもの見えてくるまえ見えることあり
石のうえ影をそのまま刻んでもそこから何が聞き取られよう
満々と膨れ上がった世界とていずれ萎んでゆかねばならぬ
ナンマドル何の因果で曲がってくるか最大級の勢力で
コバックの後におおぎやラーメンが来ると来ないじゃ大違いです
曼珠沙華すべての人が息絶えた後の世の野に咲く赤と白
カーテンに波打つ光真っ白な雪降り積もる花柄つけて
見上げれば高くて青い空の下白く輝く雲の放牧
窓抜けて生活のあと染み込んだ床照り返す白くて淡い
押し出されほんの一瞬噴き出でる動かなくなる内面に散る
年老いた自由の亡霊ふり払いそろそろドアを開けるころでは
すべて詠め犬の記憶が目を醒まし這い回る道見えてくるまで
ジャスパージョーンズよりも草間彌生の方がひとつ歳上である
松本さんの研修が終わるというが人生はずっと研修
弱く降る光の下でぼんやりと白けたように黙る世界と
とぼとぼと薄暗い道歩いてる頭の上から降る当て擦り
コーヒーの後味の奥ふと香るチョコの風味のソフトクリーム
幾つもの袋小路を避けてきて理想を追って瓶の中へと
転んでもただでは起きぬ人よりも転ばぬ人にわたしはなりたい
消費期限を十日ほど過ぎたジャムパンあまり食べない方がいい
国葬儀みな柳陰九郞判官義経にして吉野山
アベノミスクウそれなのにああそれなのに怒るのは当たり前でしょう
何も無い呑気な時は何もせぬ呑気な人でもいいのだけれど
この星のすべての人が愛する人に愛される日がきますよに
ひらひらと飛ぶ蝶を目で追ってゆく上り下りでリットルと書く
日陰だけちょっと涼しい風が吹くまだ夏去らぬ九月のなかば
じっと耐えようやく暗くなってくる明るい昼は疲れるだけで
木の上のチンパンジーが熟れた木の実に手を伸ばすそういうレヴェル
どこ見てもこんからがって絡み合い結び目のうえさらに結び目
膨大ないろんなものをやり過ごしほかの誰かに任せっきりで
押し潰されてしまわぬように少しだけ楽しいことを考えて
残暑厳しき昼日向高き所でひらひらと舞う黒揚羽
残暑なり西日のあたる外壁にしがみつきたるつくつく法師
窓の外鶺鴒の声ちちちちと数日前に聞いたきりかも
考えているうちにみな後ろの方へ流れ去る何も残さず
細々と歩き続けてきた道が追いかけてくる瓦解しながら
空間をもたぬ言葉に風穴を開けて見晴らす新しき道
短歌とは余計な言葉付け足した野暮なやつ詠む川柳なるか
ゴダールを何本か観て煙草くゆらせ分かったような事を言う
稲刈りを終えた田んぼに残暑の陽射し傍らに白彼岸花
まだまだと夏の袖引き追い縋る義太夫節を唸る寒蝉
こまごまと角度を変えてあくまでも感覚的に動く指先
そのうちに爪を切るにもまず先に老眼鏡に手がのびる
川ならば流れ流れてゆくものを堰をつくって世界距てる
星が舞うひゅるひゅるひゅると四方から咳き込むだけで世界が歪む
すとんと落ちてゆくだけの誰の目からも弾かれる味気なきもの
河竹は元杢網の死後五年経ちし頃に生まれた黙阿弥
終わりが見えぬ残暑とは返し切れない過払い金のようなもの
パヴロワを和辻が観じた百年後キーウの夏のシェフチェンコを見る
いつからか戻ってこないどの人も踏みつけるだけ踏みつけといて
歌にならないこと歌にするそんな野暮とて歌なれば出来ること
911は歌にならない映像を見るだけでそれで充分
言葉では追いつけなくて鈍足で掴まえられぬ悲しみの歌
あちこちの羊の村が創生し隣の町の延長になる
名月を詠ず言葉を引き廻すみな同じ月見上げるがゆえ
月見する座もない上に揃うよな顔などもないさんご十五夜
外に出て見たのではなく屋内で座ったままでテレビで月見
名月にあざらしの顔見えてきてちょっと楽しい気分になれた
物干しの竿のまわりで蜻蛉まう秋の日なたで休むことなく
黒い雲吹き払わんと昼寝する夏の疲れがぶり返すころ
追い込んでどんどん隅に追い込んで辛い思いをさせてるのでは
何処に行くかも知らないし此処が何処かも判らないもう日が暮れる
重陽の夏めく空と菊の花ひと目逢いたい宵待の月
足許で丸くなってた毛布を手繰り寄せて寝る白露の朝に
背景が動いてくだけ物思う心はいつも遅刻してくる
全てみなほんの一瞬だけのこと見えてるものはもう過去のもの
悲しみに打ち拉がれていた夜も明けてしまえばもう過去のこと
ひと息に踏み潰されてぺしゃんこでうじうじ臥せる虚しき夜に
座り込み立てた膝にはペンと紙まだその声に耳を澄まして
戴冠と跨がるメリル背徳を目の当たりにした映画プレンティ
草の露白くつきたる朧月赤みを帯びてゆく季節みる
蒸し暑さ居座れるのもあと少し秋が本気を出してくる頃
驚いてぴょこぴょこぴょこと物陰に子供の守宮長生きしてね
借りるねと肩に額をのせるとかそういう事が重要なのだ
気分どうその角を曲がった先の転がっている名もなき石の
向かい合う大きく高い壁と壁噴き出す熱が伝わる距離で
何かこう駄目な所を武器にして立ち向かえるといいのだけれど
押していた自転車に乗るその刹那よっこいしょって言っちゃったかも
何もかも受け入れるのはまだ浅く許し認めるまでもなく在れ
どんよりと土色混じりの夕時に照葉もしずむ雨の鏡花忌
慌てるな豆鉄砲を食らっても不貞不貞しさも顔芸のうち
すっとした一直線じゃないとこにらしさがみえる掌のうえ
一歩ずつ麓に降りてゆく小径やけに静かで薄暗いとこ
円安で数年後には焼け野原宇田川町のあのレコ屋街
全てみな終わった後に問うたとて誰も答えてくれはせぬけど
広告やコミュニケーションもアンビエントねえイーノこれでいーの?
哀感を漂わせつつ引き延ばすつくつく法師のアウトロ芸
わらわらと動き出してる世界より動かぬままが心地よいかも
このへんでぐちゃぐちゃしてるものをただ掴み出しては放り投げてる
細長く両の端から丸まった乾いた茶色枯れ果てた葉
断捨離で摘まれてしまう芽もあろう混沌であれほったらかしで
人類がみなゴーグルで沈潜すメタバースごと地球脱出
ヒンナムノ夏の眩しさ連れ戻す雲流れゆき照る葉は揺れる
何処までも沈んでしまいそうな夜スマホ掴んでシュノーケリング
ころころと蟋蟀たちも鳴初めて稲田にそよぐ純情の風
浮き立たぬ心を千切り歌にして海に放てどみな沈みゆく
知ってるよ誰もがみんな我々は愛ある世界信じていると
ひととせが過ぎるころには剥げ落ちてさくらやもみじもくすみたるかな
万葉の歌をディグした実朝に光り降るよなBGMが
全体に茶色強まり両端が丸まりだした葉の枯れかけの
黄色から薄い茶色に色深め退く緑ゆらり枯れゆく
畦へだて秋のみのりを眺めやるぴょんと突き出た白鷺の首
静静と寄せては返す波のよに粋な節つけ鳴く秋の虫
チョコチップクッキー食べる日曜日寒蝉の鳴く残暑の日暮れ
雲低く日を遮りて寒蝉の膝代わりの声処暑も大詰め
人ひとり這入れるほどの細い穴上り下って角が取れてく
ゆっくりと歩いて行くよもう誰も待ってくれてる筈もないから
どの辺が平均なのか分からないどちらを見ても極端すぎる
歪みたる世界を覗き見るだけで目はぼやけるし背は丸くなる
色褪せてごわごわになり重力に引き寄せられて離れ離れに
ごわごわの中にも残るしなやかさ枯れかけた葉の黄色と緑
蒸し暑くエアコンしてる窓越しに虫の鳴き声秋フェイドイン
メタバース芭蕉庵にて隠棲し十七文字の宇宙を旅す
昨日まで転寝で寝汗かいたのに毛布なしだとあちこち冷える
手のうえを通り過ぎてく一瞬の眩しいものと出来のよいうそ
鉢植えの花がそこから旅立って野に咲く花となる夢みるか
終わりゆく夏惜しみつつコンフューズじじじじ響くあの蝉の声
雨に濡れぷっくり育つ木瓜の実の淡き緑も色滲むよな
これはみな贋物ですよ本当は本物なんて本当はない
青々と夜が視界ににじみ出す洗濯物の影にもひそむ
混沌がメタ化してゆく迷界でまことのひかりゴーグルで見る
手の中に何も無いから両の手で地球をすくう妄想をする
斑になった雨雲の群れ通過中途切れ途切れの雨模様
古くから縮み志向というけれど縮みきる日もそう遠くない
ダイナーでクラムチャウダーが通じない記憶に残るあの名場面
雨上がり夕方の雲見上げると蜻蛉がすうっと空を横切る
雨粒に打たれて揺れる濡れた葉がダンスする朝ほらもう九月
空洞にふやふや浮かぶ言葉たち塗り潰されて沈んでゆくよ
値上げじゃないの財布の中の百円に百円の価値ないだけよ
このままでゆるゆるずっと運ばれて流れ流れて何処まで行くの
雷に頭ごなしに怒られて小さくなって昼寝している
腰痛が季節を跨ぐ頃合いを見計らうよにまた顔を出す
もう花火あげられないよ指先であの八月はゆめまぼろしに
息をつく隙間を風がすべってく葉月の終わり夏がほどける
雨に濡れ所々が凹む田も陽光受けてきらきら光る
ゴルバチョフ帝国を去る永遠に不滅なる歌ペレストロック
夏らしいこと何かした?ええしましたよ花火とかラインのメモで
夏休み最終日からが夏休み時間を逆に生きる太夫よ
何もしてない夏なのになのに疲れがどっとくる凄く眠たい
遠離る時間が去って忘れてく何も残さず消え行く世界
エアコンが静かになった宵の口虫たちの声もう外は秋
ばさばさとうるさいほどに睦まじい番の鳩に起こされる朝
敗戦の直後に前座つとめてる小金馬こそが金翁である
読む人が楽しい気分になるような短歌詠みたい気分であるが
ツイッターフォロワーまたも減っている下らぬ短歌のせてるからか
どこでどう化けるかなんてわからないエランヴィタルは予測ができぬ
なだらかな平坦な道日々歩き登ってないのにもう下山道
その淵に近づくことも厭われる黒く濁った流れない川
日が翳り寒蝉の鳴く窓の外葉月の色が沈みゆくころ
天も地も遠退いてゆく逃げるよに取り残される衰えしもの
この壺を売りつけられた者だけど大きいのに替えこれ下取りで
もし何か手を伸ばす先掴めれば世界はもっと意味ある場所に
気をほぐし楽しく和歌を詠めたなら金槐集は如何に在りしか
寂しさもひたひた胸に迫り来る終わらぬ夏のラインの花火
だぼだほなズボン引き摺りレイヴオンマッドチェスター令和ヴァージョン
この夏も飲むことはなく去り行くかシトロンを浮かべた薄荷水
一瞬で世界は息を吹き返す沈みし炎また沈むまで
胸の奥ずんと重たいまま覚めぬ戻りたくても戻れない夢
真っ白ななだらかな丘温々と突っ伏したまま寝ていたような
雨の朝涼しげなれど蒸しているエアコンつけて二度寝に挑む
風呂上がり自動でつけてたエアコンが部屋暖めていて汗をふく
水滴のいっぱいついたコップあり夏の空気が居残るをみる
まだ暑さ長く尾をひく八月の終わりに何か気が抜けたよな
真っ暗なスマホ画面に映り込む最も深い闇の相貌
真っ暗な宇宙の果てに果てはない電源OFFしたスマホの画面
このひどく味気ない日々その先に何かあるのかないままなのか
暑さ増す令和の夏にしんみりと昭和と金馬に思いを馳せる
涼しさがところどころに秋の朝うどんこのせた葉と曇り空
あのときにああしていてもいなくてもまあこうなるよそれがさだめだ
夏休み残り僅かで宿題をやっと始めるつくつく法師
背伸びするお年頃ではなけれどもまだ手を伸ばし踵をあげる
うねうねと気持ち同士がぶつかって肋骨の下ただならぬ熱
まだ何も言われる前から悔しくて非力さゆえに何も言えない
繋がってみんなと同じ相貌でラブラブラブと合わせて歌う
どこまでが私なのかをはかるのは私であるか私以外か
願掛ける口もと寄せる十の指そろえて合わす叶えたまえと
取り憑いて伝染してゆく似非リアルインスタントなさめた恍惚
本物は今年一度も見てないがラインで今日も花火大会
ざわめきは増幅されて荒ぶりて黒く波打ち指先を発つ
人らしく生きてみたいと思わねば焦燥の火も燃え盛るまい
中心のない夜の闇まるで夢たまの晴れ間もまた夢である
青き葉の下で枝垂れる稲穂かな夏の終わりの黄緑の田に
吹く風に涼感が増し処暑となり漸くのこと寒蝉が鳴く
威勢よくつくつく法師鳴いている夏の終わりの夕暮れの音
夜はもう涼しいなんていうけれど未だむしむしで不快度高い
ここも旅また行く先も旅なれば果てなき旅に浮かぶ瀬ぞある
にわか雨濡れた緑はきらきらと光り輝くげに蒸し暑い
意味もなく花火の事を歌にする打ち上げるためラインのメモで
四つ角で祝儀不祝儀ぶつかってともに羽織でお茶屋にあがる
四つ角のアイスクリームを売る声に短き夏の夜は更けゆく
夢に出たオビオトシなる姓のこと少し気になる蒸し暑い朝
綿の花開く頃には暗い夜地下鉄道が風追い掛ける
何ひとつまともに出来ぬものなれどただ徒に夏は過ぎ行く
水無月の酷い暑さに始まって漸く処暑よよく生き延びた
穏やかなむしむしとする処暑なれどざわめくような胸の内なり
実りたる稲穂の上にとまる技わかき雀らぱたぱた競う
庭先の餌を啄む鳩たちの食いつきぶりに秋めく世界
夏場でもかさつく手ならニベアなど少し塗り込み何とかなるが
処暑だけど夏らしいことしたいので花火上げますラインでそっと
蒸し暑さまだ残りたる処暑なれどさめざめとして思いは晴れぬ
心ならぐづぐづである私にもあわれがわかる和辻で読んだ
変化とは次から次へ襲い来るその渦中にて何かを物す
結局は全て低きに流れゆく人で無しこそ能く生き残る
下を見よ空を仰いで両の手を広げているとカルトっぽいぞ
夢の中お伽話がまぎれ込む中途半端な夢らしい夢
夢の中寝ぼけ眼で電車乗る良くも悪くも夢らしい夢
虫刺され痒くて掻いて痛くなるそのうちそれも忘れてしまう
一寸だけ気分があがるそれだけでラインの花火を何度もあげる
手の中のおとぎ話の世界からみんなやさしく微笑むけれど
意味もなく火照った肌が汗ばんでやさしく癒やすエアコンの風
もうずっと喋っていないこのままじゃもっと喋るの苦手になるな
善哉と比企尼の場面完全にアナトレントのあれだと見たが…
酔狂な詩人が出鱈目呟いた雑居ビルこそ世界の縮図
雑居ビル五階で今日はいつもより高い酒飲む金はないけど
出鱈目な酒場で今日も出鱈目なブルース唄うぐでんぐでんよ
出鱈目な世界に今日も出鱈目な酒場が開くみんな出鱈目
酔人が「こんなとこでは終わらない」調子外れのブルースがなる
一句詠む仕草がすでに白じゃない見えない扇子手拭い見える
独りきり花火の音も聞こえないいつも通りの閉め切った部屋
ラインにて花火の短歌メモしたら打ち上がったよちょっとむなしい
ちっぽけな深い沼ではあるけれど水面乱せば底まで響動む
インスタよこんな私にどうしろと黙っていいね押せってことか
幇間の何とも言えぬ厭らしさ裏の裏ありその裏もあり
ホヤの花のべ四箇所で咲き継いでひと月半の大ロングラン
透明な光降る庭じっとして在るように在る秋の息差し
飛び込むか飛び込まないか進むのか引き留まるか土壇場に立つ
手の中の世界を見つめ同期する網の目ならぶ面上の点
求むるが強きところに必ずや道は開ける大いなる慈悲
情け無き事と映るか朱儒の目にまだ諦めずしがみつくもの
俳句の日季語打千切りだらだらと短歌詠んでる粋じゃないやつ
空青く色濃く高くすっぽりと光を砕き降りまとうよに
無茶苦茶な隠居でさえも肯首した杢助こそが化け物なのか
もやもやとどこ見てみても何ひとつしっくり来てない金曜の朝
騙るなら騙られたとは気付かれぬ位でなくちゃ騙り語れぬ
昼寝して汗ぐっしょりとはならず夏の終わりをひととき感ず
薄暗い夕方の部屋ひとりきり二色のパンのクリーム食べる
母が着けてた麻の葉模様に蝶が舞う絹のスカーフハナエモリ
暑雨晴れ間いの一番に雉鳩のとぼけた調子の鳴く声ひびく
今日この日生き延びるので手一杯それでも吾はもちすぎなのか
復活のツイートに見る文菊師高徳な僧生き返ったよな
黄金の透けたる熊が腰掛けて奥にいるよと教えてくれる
インスタでいいねいいねってしてるけど実在するのああいう世界
インスタでいいねいいねってしてるけどこういう人たち実在するの?
見渡せぬ突端に立ち項垂れる信じていると心はさけぶ
風呂上がりひんやり涼しい室内に夏の終わりをひととき感ず
へぼ共が地獄の沙汰も金次第菩薩の慈悲で湯治場行きよ
おお我をお救い下さい我だけを残りの人はトリクルダウンで
今ここであれかこれかと問われてもみな散り散りに消えてゆくのみ
手を伸ばし闇の中から取り戻す取ってはならぬものを取るもの
火の如く右手を柄に伸ばしてもその先はない抜けずの刀
凍てついた直線だけで描かれた深い谷間の白い悲しみ
切れた電球よく見たらずんぐりとしたパルックボールさようなら
誰からも見捨てられたと思うとき侘しさのそこ大きな悲あり
釜の蓋開いてもなお煮え滾る真っ赤な門の閻魔堂なり
夏空がうっすら白い雲かぶりごうごう響く行きも帰りも
ぽろぽろと溶け落ちるような花を見て弱き西日に侘しさが増す
藪入りの夕時くらく字が読めぬ京の送り火ねずみはいたか
戦争や殺戮わすれ夏期休暇ひとつの星の隔たる世界
いくつもの暗い地獄が底抜ける静かな夜に跡形もなく
花は咲きいずれ散るとは知りながら落ちた花見て身じろぎ忘る
濛濛と立ち籠めていた湿り気がぷすっと抜けてほんのりと秋
平然と心沈ませずたずたに引き裂いてゆく青い封筒
蝉の声エアコンの音五分ほど進んだ時計真夏の真昼
学研のおばさんだった同級生のお母さん弱くつながる
いくつもの暗い地獄が底抜ける静かな夜に痕跡もなく
詩の心それがどうしたそんなものどこまでいっても一人相撲よ
鼠穴見つけてするり這入りこむ夢にも見れぬおっかねえ奴
雨戸閉めずっと昼寝をしてたよなすべてがすべて夢と過ぎゆく
夏休み埼玉の子が見守った手に汗握る浪商上尾
雨は去り記憶となりて日の影に昨日の空は流れてめぐる
滔々と講談風に喋ること今ではこれを伯山という
空想の世界でいうと日曜はこのままずっと引き延ばされる
台風の通ったあとに滑り込む秋めく夕の涼やかな風
寒蝉の声が沁み入る山寺の風情に遠き油蝉の音
蝉の声暑苦しくも侘びしげで夏と秋とがせめぎ合う様
黙しても何も映ぜぬ空白を瞑ぜぬ世界見る右大臣
見るほどに透明になる右大臣眺めて見るになきが儚さ
風強く雨降り頻る砂浜に波打ちつける黒き唐船
物干しに滴る水の幾粒も蝉鳴き立てる嵐の前に
土砂降りや風が吹く音悍ましきどうともできず為すがままなり
いつ見ても逆巻くような波が立つ暗雲の下しずかに瞑す
目を閉じて横になる静かに休む湿った風が二度寝妨ぐ
金ローで一之輔さんラピュタ観て叱言をたれて子ほめを褒める
山奥の急な斜面で救助するヘリを見ていたあの夏休み
限界で悍ましく鳴る強風にがだがたしつつちょっくら昼寝
あれはそう高校二年の夏でしたラピュタ見ないでディヴァインを見た
みんなして陽性ですとは何事かこんなことでも除け者になる
だらだらとのんびりしてる様子見て相変わらずと嘆くでしょうか
ぽそぽそで芳ばしい味ライ麦のロールパンにはアイスコーヒー
この脆さ儚さこそが世界なら押し流されて何が残ろう
圓生の乳房榎に人間の業の深みを聞く圓朝忌
小三治の死神をみた衝撃も元を辿れば圓朝の作
風はあるあまり心地はよくはない汗と気力を搾り取る風
迎え火を水掛草でけす風情禊ぎの萩もなき盂蘭盆会
好かれるヤツほどダメになる然りとても一度ぐらいは好かれてみたい
あれだけの準備期間があったのにまだ走れない立ててもいない
孤独こそ騒がしき世を強烈に生きるバネだと判ってるけど
酷暑にもかなかなかなと寒蜩の鳴く声あらば秋は来にけり
吹く風はさっぱりなくて涼しさは何処へやらなり自ずから汗
突然に大きな黒いピリオドを打たれて悲し望まれぬ幕
ゆるゆると目に見えぬもの追いかけてぼんやりしてて御免なさいね
自ずから涼しくあらん夏衣ひと雨ほしい酷暑の夕暮れ
酷暑にてエアコンきかぬこと暫し三十度以下で涼を感ずる
喜寿越えて一生背負うと言われても老い先長きを祈るばかりよ
優しさをもつものとなる名を受けて未だ世界と折り合えぬとは
百年後滅びゆくものその土台今まだ若くスウィングしてる
全成の木彫り人形実朝も幼き日には玩具にしたか
そよ風の誘惑かかり号泣すラジオはエモし原爆の日に
もう誰も呼ぶことのない名前なら名乗ることすら最早あるまい
立春が寒さの底であるならば秋が立とうが暑さは退かぬ
自力では熱処理できず酷暑日は保冷剤にて命を繋ぐ
ぽろぽろと剥げ落ちてゆくだけの日々いつか世界は空白になる
その門をくぐるな決して近づくな生きるの中にその道はある
フィジカルで身体が動く人となら言葉はいらぬゲリントゥアニマル
うつし世のふんわりとした構造に棹をさしたり慰められたり
あの日から遠く離れてまだゆくの届かぬ場所のことば求めて
誰にでも優しくあろうとしてきたが独りではもうすることもない
どれほどの余裕があれば明日への希望がもてるこの世界にて
人はただ動物らしく生きるものかなしいほどに動物らしく
風もなくじっとしたまま照りつける陽光のした脈打ついのち
きょろきょろし見様見真似でやってみる人間はそれ猿真似という
浅はかな知的退廃ちょうなうい及ばざること知性のごとし
黄昏れて泣くも笑うも独りなり月夜もいずれ夏から秋へ
歳なのか世代違えど胸に沁み大江千里の曲で涙す
週末の夜に賑わうツイッターTIFのある夏華やぐ世界
いよいよと色を深める八月の涼しき風も吹きいたるころ
いつだって洞窟の中暗がりで壁に向かって独り言つ日々
夏らしきごくりと息を呑むような一瞬もなく新涼のころ
陽翳れば新涼の風感ずるが未だ陽は高く夏の空なり
風が吹く時間の外に消えた街祈りよ響けあの夏の日に
言葉では辿り着けない色までも閃光で焼き灰にするもの
ケルベロス穢れしものの肉を食め世界は覚めぬ悪夢のなかで
死の灰が地表を覆いひび割れる知的退廃とどかぬロゴス
空仰ぎ両手を広げ光乞う眩き夏に恩寵ぞ降る
ひとらしい物のあわれを知るならば気づかれぬよう船降りるまで
熱い風黒い涙と泥の海世界はそれをまだ望むのか
ぐらぐらと揺さぶられると痛み出す頭の重みさかさまの空
夏の朝艶やかなりし朝顔の蕾を愛でる原爆忌の句
夏の朝いろ艶やかな朝顔の蕾しおらし原爆忌かな
暑くてもそうでなくてもあれこれと心配事はやって来るもの
このままで歩いて行けるわけもなく何かミラクル起こらぬ限り
嘘をつけ自分の声が唆すどれがほんとかもう分からない
これまでに何度バットを振ったのかまだ一本も結果が出ない
曇りたる鈍い色した空のよに不安が広がりあわれに濁る
ひとごろし何度も叫ぶ上意討ち人を殺さぬ殺しの極意
少しだけ気が抜けちゃってマイナスに飛び込んじゃって浮かんでこない
百日紅もえ立つように夏に咲く個人的には白いのが好き
生存に感けてられた酷暑から一転寂しい夏の雨降り
雨音に混じり蛙の歓声が夏のたそがれ照らずも風情
俄雨ときどき降ってくるような夏ではないと風情どころじゃ
生きるとは簡単なことではなくて何か頼れるものが無くては
遠くの空でゴロゴロと中途半端に凌ぎやすくて拍子抜け
曇天が眠気を誘う夏の午后すずしいうちに寝溜めしとけと
意気込めど身体がついてゆかぬ夏生存かけた不調のサイン
これはもう戦争ですよ見えぬ敵居場所が常に最前線に
酷暑にも年毎に慣れ鈍感になってゆくのか狂気の歴史
焼けるよな暑さに水を浴びたいが酷い大雨は願い下げなり
地震だの雷だのというけれど夏の暑さもほんとに怖い
寝苦しく朝の四時には目が覚める圧倒的に睡眠不足
少しだけ陽が翳ったら蝉が鳴く炎天下では調子が出ぬか
酷暑なり史上最高来年も史上最高そのまた次も
振り向けばべたり張り付く老いがいる鬱陶しいが黙らしちゃ駄目
凌ぐのが精一杯となる夏に追い打ちかけるあれやこれやよ
この夏を幾度わたしは浴びたのか苛烈なまでの光の充満
青青と尽きるまでにはほど遠い生い茂る葉の耐える灼熱
暑過ぎて何もする気が起きなくてホヤの開花をじっと見る午后
俺たちは昔も今も十二歳大人にならぬ王国の民
冬の日にじっとしてても汗が出る真夏の暑さ懐かしんだが
これやこの夏の三日月にじむころ色も朧気だらり鈍磨す
閉め切った暗い部屋から灼熱の明るい地獄に思いを馳せる
猛暑日にムシムシとしてこの地獄サウナ以上にサウナだろうよ
何故かしら悲しくなるほど暑くってレプリカントに転生したい
熱こもる暗き部屋にて座り込む何とか隙を突く時を待つ
耳許に蚊の羽音がす葉月かな寝ているうちに吸い上げられて
闇雲に斬り掛かりくる侍が儘よとほざくマザーファッカー
木の陰の涼やかに鳴る鈴の音に春めき和する菩薩の心
静けさや眩しき大暑の苦界なり蝉も蛙も黙りこくって
濁り水ずっと沈んでいたものが今さら浮かんで何ができよう
闇夜ゆく足元照らす灯が無くも吾を導く名号の道
これまでのあらゆる道で躓いたもうそのままであがりを目指す
重心が内の奥底動くのか此処より外に離れゆくよな
この星のフリックスワイプ止まらないスマホの如く熱くもなろう
声明を唱えるイーノ末法の鐘ぞ響かんアクロポリスに
形なく崩れるほどに深く落ち地蔵となりてただ独り立つ
雲霧と同じ眼をした安部式部朱に拘わりて真赭となりぬ
一人では何もできない腑抜けども群れる時代は終わるというに
花が落ちまたその下からも次の花返り咲くとはホヤよサイサイ
無常なる現世ならば自ずから流れはうねり大海に咲く
「灼熱の」なんていうのはサバンナやサハラ砂漠のことだったけど
熱に溶け内奥部から解体す意味と無意味がそこに湧き出す
強烈な晝の陽射しに干涸らびて草も腐らず蛍も飛ばず
土潤うゲリラ豪雨は今日はまだ然しそれでも蒸しっと暑い
するすると寝床に戻り二度寝するエアコンしてももう寝苦しい
がらがらと雨戸をあける夏の朝まだ寝足りない二度寝三度寝
ネオコンとカルトが振ったネオリベの旗はためいたことの顛末
なんでこんなに暑いのかよ孫に聞きたい気分だが子供いないや
目が痒い稲の花粉かどうしても目を擦っちゃう感染怖い
西麻布地下に沸き立つ満場の歓喜の黄色ラヴセンセーション
波打つ手歓喜とともに弾けたる黄色く照らす愛の感覚
いつ何があったとしてもおかしくはない生きた心地のしない日々
埋もれて忘れ去られし地蔵尊掘り返す人なくも微笑む
刻刻と形を変える夏の雲眺めていると時を忘れる
ずっしりと重い身体を立ち上げる気力も失せて石と化す晝
陽が翳る少しホッとす直ぐに照るどっと疲れる夏の毒心
赤道の向こうは逆に極寒で異常気象はとにかく脅威
熱帯夜睡眠時間削られて疲労蓄積燃料切れに
憐れなる哀しきものが人であるそれゆえ憎む慈悲の心で
街はまた色満ちるまま荒廃し路地遡る闇市の頃
黒々と空を写して流れゆく音を立てずに移動する水
憐れむか気を逸らすのか閉ざすのかあらゆる醜を集めたる音
好き勝手鈍ばかりを振り回す困った人では困るのですよ
大暑にて漸く布団圧縮す霜降るころにはまた見えよう
乾涸らびてかさかさになった頭こそ粘つく邪念が沁みいるものよ
すいすいと盥の中を泳ぎたる金魚眺めて涼む夏の日
捨衣昔でいえば角力取り今でいったらラウンドガール
夏の夜お風呂上がりに母の手でぱたぱたされたシッカロールよ
全身の力を抜いて無となりて世界を離脱したものとなる
ギャルピースできれば小指立て気味で下品下生の手の印にて
束の間のくぐもる晴れ間蒸す大暑じっとりとする肌着替えたし
もしここが行き止まりならこれまでの全てがここに寄り集まろう
夢なれど優しき人と触れ合いて涙を流す夢としる夢
何もせず暑さに耐えているだけで疲れ果てたる夏の一日
こんな日はライヴカメラで上高地高原気分とまではゆかぬ
口笛を吹いて空き地へ行くような呑気な時代呑気な世代
現実か蜃気楼かも分からない眺めつづけてまだ分からない
炎天の息苦しさに目を閉じる風にそよぐ葉色鶸萌黄
クレマチス白く咲きたる赤坂で河童忌おもう万太郎かな
大相撲千穐楽の日はなぜか何故だか少し哀しい気分
茹だるよな暑さに茹だる河童忌に団扇手放せず何も書けない
団扇手に食べたそばからエネルギー燃やす夏の日ビバポトラッチ
分断を燃料とする戦争にどう落とし前つけるというか
慈しむ心忘れて戦えばそれはすなわち戦争である
眠るよに寝言を吐いて過ごせれば悪夢でしたで済まされるのに
来年は鰻食べたい土用にはお願いします奢りでどうか
土用にはうのつく旨い食すべしなんにもないが胡瓜浅漬け
世の中とまるで足並み揃わない土用といえどいつもの土曜
この街は砂漠に埋もれ崩れ去る過去の栄光こぼれ落ちる手
桐の花実を結ぶころぼんやりとひとり座って外を眺める
微風あり時折雲が陽を阻む干した布団がいや気にかかる
沢山の取りに行けない忘れ物忘れることも忘れたような
寝汗かく頭の重い目覚めかな桐も実ろう暑さの盛り
熱中症感染症に御用心さっしゃりましょうさっしゃりましょう
なぜ生きるその問いかけは慈悲なるかその価値なくも好きに生きろと
なぜ生きるこの儚き世晴れる日も曇りも雨も日日是好日
なぜ生きるこの混迷の渦の中どこにほんとの生きるがあるか
なぜ生きるさあなぜだろうわからない逆に聞くけど知ってどうする
なぜ生きるそう問う人に問い掛けるなぜ人は死ぬ答えはひとつ
なぜ生きるその問いに値するほど生きてはいない恥ずかしながら
なぜ生きるこの生き地獄で死んだとて毎度馴染みの地獄の旅路
なぜ生きるいつの日か生きた心地がする日があれば答えられよう
なぜ生きる何もわからぬこの凡愚なぜに答えるすべをもたない
なぜ生きるそう問われても今はまだ何の答えも手の中にない
愛が世界を満たしても平和を破る愛もあるウィッシングウェル
八面で六臂というが暑いとき団扇使えぬ忿怒の二面
こんな街飛び出したくもなるだろうどこに行ってもウィッシングウェル
洗濯でシャツが縮むか肥満だかお腹出ちゃって布袋みたいよ
沈み込む沈むとこまで押しつけて左を下に短い昼寝
お蔵にもキープもされず残るものそいつのどこがちょうどいいのか
ここにいる時間はとても短くてぼやぼやしてる暇はないのに
ちょうどいい歌がなかなか出てこないお蔵にしたりキープにしたり
愛なんて平和に満ちた世界でなくちゃ意味がないウィッシングウェル
お腹って空いちゃうじゃないどうしても食べちゃうじゃない痩せないじゃない
気がつけば随分長い夏休み宿題もせず怠けてばかり
西に陽が傾き落ちるころになり漸く蝉がジジジと唸る
虚しさにひとり寝床に倒れ込む埃がたって咳しか出ない
気の抜けたコーラのような毎日も何もないよりまだましだろう
あの世まで虹のかけ橋渡りゆく嗚呼サルソウルビートゴーズオン
壮大ななぞなぞ遊びの最中にてなぞかけ違い収拾つかず
本当は謝りたいと思うこといっぱいあるよほんとごめんね
信西の誰でもよいは末法の救いなき世の魂の声
ホープにも希望がもてぬ悲喜劇にブラヴォーというあわれなるもの
多層なる多様性では意味がないフラットじゃなきゃ多様ではない
愚かなるものは頭で考える身構えてまで愚に堕するなり
組む手をば普段と変えて伸びをするただそれだけで目先は変わる
すぐ外はジャングルだっていってたね最早隈無くジャングルなのよ
踏みつける舗装道路の下の土熱中症でのぼせておろう
切られても根から新たな芽が出でる屹然と立つ小さき生命
いつだって実のない話うんうんと聞き流してよ暗き空洞
ずるずると重い足取り気がつけば十字架の荷も背負い込みしか
川柳にめくじら立てる人もあり川の柳を諌むる痴鈍
カトレアは冬の季語だというなれどミニカトレアは夏も華やぐ
スーパーの中国産の鰻でも躊躇するなり令四土用
ひとりとて半分だけの独りなりどうでもいいと思われしもの
これからの持続可能な社会では負けず嫌いは流行りませんよ
どれほどに時計の針を戻してもいずれ必ずここに戻ろう
誰も彼も生きてるだけで手一杯んなわけないか余裕がほしい
日々変わる思いを言葉に込めたいが剥がれ去るものつかまえたとて
夏バテてまた梅雨寒が戻りきて頭痛がするは風邪か気圧か
四個入り百円しないヨーグルトマニアの話お聞きした後
切った枝ちゃんと払ってゆかぬからまだらに枯れ葉まじる文月
何となくあらゆるものが何となく揺れ動きつつ枠を外さず
ざんざんと雨降りしきる文月にたよりなき手をじっと眺めん
ああシンディ吾が願望を悉く感じておくれケンルウダブで
この森が出来た時から知っていたいつかお前がここに来ること
熱き夜ヒツジ数える間にも火は燃え盛りめらめら迫る
日々思う楽しいことは少なくて楽しむの気が老いさらばえる
匂いなり熱さだったり近づいて初めてわかる感覚もある
とらえたるその瞬間に逃げてゆく欠片を拾い集めるパズル
独りだと思えば思うほど独り思わなければ気にもならぬか
鷹はもう羽ばたき出すというけれど吾はまだまだ学びの途上
きっかけがどこであるのかわからない掴みどころが見当たらぬのよ
ゆっくりと今とまろうとしているよもうとめられぬ打つ手ないから
ざわざわと心乱れて波立ちて水出しのみて苦みに瞑す
見たくなくても見てしまう全ての隙間埋めるもの浅ましきもの
音なきものを見てとるか千の目で書きつけられた思い聞くべし
あの頃にインスタグラムあったなら今頃はもう白けきってた
あの頃の一部であったものが去る残されし今すべて薄らぐ
ぽっかりと心に空いた穴だけど身投げするにはちょうどいい穴
全身の力を抜いてただ座る無駄な思いを溶かして流す
雨宿り民家の軒を借りる兵ミサイルが飛ぶ市街地眺む
浮き草もついふらふらと寄り来たる誘う水なる弁天の井戸
合掌しただ目を瞑るそれだけで組み合わすより優しい気分
影を読む光の中に浮かびたる手の上にのる密なる無限
手の中の光を受けて洞の奥焼き尽くされて灰となるだけ
眠れ眠れといわれると眠りたくなくなっちゃうよお生憎様
目黒にて秋刀魚食べたり死んだ鴨生き返したり殿大暴れ
存在に気づいたときはライドンで初めて行った中野サンプラザ
もうそれは見えないとこに沁み込みて大転換を待ち構えてる
六度目の年男だと笑遊が卯年生まれでまだらぼけかな
六度目の年男だと笑遊が一度目はさて零か十二か
灰色の空から雨がまた落ちる梅雨呼び戻す蓮の花かな
鋳掛屋が棒振り回し熱心に辻でソーシャルディスタンス説く
力技折角書いたものだけど指先ぽちり三千字消す
ぱっくりと開いて咲きしホヤカーリーどろりと垂れる赤錆びた汁
目もくれず放り出されて嘆くとき交わりを絶ち晴れやかなとき
濡れた舌押し当てられて流される暗がりの奥線状の痕
雨が降る猛烈に降る叩くよに水の礫で懲らしめるよに
雨が降る蛙が騒ぐ生きるとはそういうことの連鎖そのもの
蓮の花黄丹の光侍らせて天上の空押し上げるよに
インスタでもう散々に蓮の花開きはじめを見た寺の池
重き雲ずるずる下に降りてくるレーダーで見る回向の行方
覗き込む黒く濁った水があるやっとのことで見つけた井戸に
このままでいいのかさえもわからずに手探りでゆく裏寂れた道
小さきをわれ慈しむその心を以てしても慈しめぬもの
一票も一つの命も銃弾も同じ重さか吹けば飛ぶよう
温き風吹き抜けようと鬼灯の実に照り返し雲ぞ湧き立つ
縮こまる身体を広げ反らしてく裏返るまで息になるまで
このところ心が沈んだままだった落語はいいね小三治は不滅
何かこう徹底的に新しい生きるのかたち模索するべき
小三治の鹿政談のふわぴしの軽い枕についつい笑う
流されてまた流されて卦体なる船乗せられて地獄巡りよ
小三治の枕を聞いて頬ゆるむ久方ぶりの感覚である
あの色はみな消えてゆく雲あつめ高々と飛び落ちてまた飛ぶ
目を瞑る開けても閉じても変わりない一寸先はまだ深き闇
鳥の声木陰に動くちらちらと黄昏れるとき明日はどっちだ
見上げれば青々とした空なのに汗噴き出して心も濁る
吸い込んで軋む身体で息をする横臥したまま染み入るを待つ
吸い入れて生き返りゆくししむらにまた無為に過ぐ一日が待つ
傘のよに頭の上に広がってみなぼやけゆくここは何処か
ここらまでトリクルダウンしてたならお礼のひとつも言えたのだけど
今回のことがあってのことじゃなく最近ずっと危機だったよね
この夏もいつかは遠きあの夏となりて静かに忍ばるるはず
木瓜の実も健やかに育つ夏ひくき所で慎ましやかに
画面越しライブカメラで拝んでも一割くらいは御利益あるか
猪牙にのりお暑いさかりに涼みたい四万六千ご縁日なり
ばらばらのちりじりですよもうそれはどれがどれやらいうもむなしい
枯れるとは青く茂りし時ありて初めていえることであろうて
ぷぷぷぷぷ手と手を合わせて転失気想定外の底知れなさよ
南より温き風吹くためなるか実に騒がしく唸る室外機
臼井さん研修ログの終わりばな薄いコメント期待してたが
温き風あとからあとと人の死に観音様に手を合わす夏
弥陀の手を煩わすのも忍びないどうにかしたい人間世界
何という深き響きをもつ言葉「どうしようもない人間世界」
明滅す大日の智がつなぎたる一瞬の輪と常しえなる無
夏空に鬼灯市の店がたつライヴカメラでそれを見守る
飢えた地に無駄に汚れた血が流れまた再びの悪夢が廻る
できるなら世界の平和願いたい自分のことの後でごめんね
温き風至りて来たる苧殻売り迎えの火たく魂祭りかな
降りそそぐ妙なる響きアズメソナピアノ誘う夢アズメソナ
堕落なり仰る通り堕落なり堕落した世がまずあるゆえに
天高く腕を伸ばして押し上げるその先にある何もない空
乞巧奠ベガアルタイル眺むれば少しはまともな歌が詠めるか
小暑とは小さく暑いことなれど小さく笑うは小笑なりけり
風が吹き墨色の雲立ち籠めてがらり剥がれる夏生の仮面
木瓜の小さく地味な葉の陰に青くて硬いぼけの花の実
目に見える部分はおまけボーナスでなければないでどうにでもなる
消えてったあれやこれやがまたひとつ時代の変化手の先に見る
ただ独り暗き荒野を彷徨っていつか必ず仕返ししたい
サイクルをサイクルさせぬ末端のほつれとなりし昭和の残滓
この暗い深い谷間の奥底でまだ足りぬのかまだ足らぬのか
この河を歩いて渡る危うさよ両岸からの声に護られ
べっとりと張り付くように横になる鈍くうごめく煤けた鉛
清らかな白きフレアが輪をえがく分け隔てなく焼く火の中の火
床屋結婚家建てるどれもまったく出来てない正直いって
朝見ればひとつ開花すホヤカーリーその日のうちにすべてほころぶ
吹き上がる黒点の熱猛る龍エレクトロンを琥珀に結ぶ
赤玉に竜の涎の香り立つ虎の化身かエレクトロンか
いくつもの道に咲きたる青き花ともにさそわれ騙される夏
御題目唱えて下りる青柳の鰍沢では伏して念じよ
ひらひらと舞う蝶のそば纏いつく邪魔する蝶か囃せし蝶か
弓の弦引いては戻るその合間鳩降り立ちて何をか伝えん
光とはどんな闇をも支配する闇がなければ光もなけれど
水音がばしゃりと響く曇天に蒸し暑き風サマータイムよ
一瞬で角曲がるよにあの朝はもう戻らないサマータイムよ
泣かないで夏には表も裏もあるいいことばかりあるわけないよ
あの夢の呼びたる声は吉兆と勝手に信ずる卑しさたるや
早く早くと急かされて頻りに呼ばれ出られない夢もぐずぐず
運命が変わるといわれ呼ばれるがなぜか出られず有耶無耶になる
これしきはまだ末法の序の口と悪しき夢見る土蔵の疲れ
心得ぬ緩みのすき間ねずみ穴あの三文も三つの蔵に
手を合わす祈るともなくただ合わす時々祈る下世話なことを
千三つおもしろいのは三つほど千も二千も詠んだところで
ほど近くいつもいるのに気がつかぬ手と手が出会う温かさかな
何もかもスローダウンし夏弛む風も言葉もめぐる生命も
ゆっくりと暮れてゆく空なだらかな丘の下より黄櫨に輝く
あなたの手しかと掴みて御案内道連れとなる喜びの庭
何も見ず独りでいれば動ぜずに清々しい日過ごせたまうか
願うても願うだけでは触れられぬ手は届かない願うしかない
吹き上がりまた降りてきて地面を満たし戻りきてまた吹き上がる
あなたの手しかと掴みて連れ立って迎え入れらるる喜びの庭
手と足が重く痺れて動かせぬ息苦しさものしかかる朝
ただ見れば暇人なれど水鳥よりものめのめと足掻くわれかな
陽気より熱い甘酒かっ込んで涼をとるたあ恐れいったね
半夏生夏の盛りもすぐ過ぎる後ろ姿も表の暑さ
半夏生夏の盛りもひと時と思いたけれどまだ半分か
おはじきに埋もれるほどにもがきたる険しき道は黒門町へ
お祭りだワビだサビだと言いながら世界平和も願うハロプロ
半夏生見上げるほどに陽は高く井戸に蓋して野菜は避けよ
独りきり暗いところに投げ出され誰の名前も声には出せず
何もかも本のせいではないのだと言いたいけれどやっぱり本か
本ばかり読んでるせいでちゃんとした大人になれぬ哀れなるもの
ささやかな喜びすらも手にできず生きる希望も見当たらぬまま
ささやかな喜びだけで人間は生きる希望を抱けるものか
並ぶ窓入れ替わりつつ誘わん閉め切るそばでまた開く窓
文月のじりじりと照る陽を忌みて餓鬼の後方に額づく如し
迷い込み分け入る先で辿り点くぐずぐずになる貴賎の上下
現実の世界は遠く隔たりて今だけ見れるいつかの今を
コーヒーに砂糖を入れて飲みたい気分これはおそらく夏バテだ
思い知るディスチャージが歌うことちっとも古びて聴こえぬ不幸
すぐ廃棄もったいないけど全部ゴミみんないらない面倒臭いの
今もなおなお悪き世に突きつけんディスチャージなる物の道理よ
少しだけ地球が暑くなりました浜の真砂も熱く焼けよう
両の手を大空に向け振ってれば見えるのかしらゆらりゆらりと
凡愚ゆえ何もなしてはないけれどそれでも祈る浅ましさかな
生きたいとまだ生きたいと祈りたる何かなしたることもなけれど
ささやかに祈りたててもどれほどの救いとなろう小さきものよ
アナーキー社会実現するために敷かれたレールごとごとゆくよ
生きている価値もそんなにないものが何をそんなに祈るのだろう
探してる意味やら価値やらそんなもの生きてゆくのに必要らしい
探しても見つからぬのは最初からそんなものなどなかったからか
灼けるよな熱を伴うこの光あふれ返りし叡智の憩い
熱中症危険度ランク第一位この過酷な地に神の加護あれ
降りそそぐ正義の炎悪しき世を焼き尽くさんと慈悲なき暑さ
崖の上ぎりぎりのとこなのにまだじりりじりりと進もうとする
熱中症危険度ランク第二位でどうすりゃいいの一位目指すの?
照りつけて全て干上がり乾涸らびる求めよ然れどもう戻らない
照りつけて全て干上がり乾涸らびる与願と施無畏の印に挺す
朝寝坊しようとしても阻止される猛暑が削る睡眠時間
保冷剤両手使える腋の下いい感じだが無憂樹なムード
何もする予定はないし酷暑だし跡形もなく蒸発しそう
この世界長い悲劇の中にある幕は近いがすぐ次の幕
岩肌の黒を深める夜の闇遠き雲間に黄白の月
ちょっとだけ動かすだけで風が吹く団扇のように生きたいものよ
むっとする夏の大気の暑さまでわたしのことを責めているよで
この暑さちょっと酷すぎ危険すぎ正気を保つ自信があらぬ
足りないといっているので見てません大谷選手もう見てません
飛び込み営業電話が多すぎる!ちやほやされてるうちが華やぜ
なんにもできないすごく暑すぎて団扇でぱたぱた溶けてしまう
結局はなんの進歩のあともなくいつものようにデンソングラス
熱中症危険度ランク第三位微妙な上に嬉しくもない
いつまでも変わることなき揺動を不具というのか青さというか
ゆっくりと動かぬままに朽ちてゆく放擲されし辺境の肉
飛び込み営業電話が多すぎる!そいつあ誠に結構なこって
暑さとはひとをひとりにさせぬものまとわりついて発き乱さん
少しずつ生き返りゆく忘却の遠くの川の流れは紅く
からからになりし心をさておいて暑さ烈しく肌は汗をふく
片目では余白が出来る真っ白なけちけちせずに両目をあけよ
短梅雨やなんて言葉でこの梅雨を万太郎なら詠むであろうか
何事もあなた任せといいながらあれやこれやと足掻いてばかり
午前中涼しいうちになんてこと言えた時代はもう遠い過去
名の響き記憶の中で掘り返すあの呼び声を思い出すため
無重力手をのばすさき宙返り光と闇が入れかわる場所
石鹸をコンマ一ミリ程度まで使い込むのもなんか侘びしい
風呂上がり暑いじゃないの何かこう缶ビールでも飲めというのか
もし何かあったらそっと伝えてよ風の噂で構わないから
お助けを手と手を合わせ祈りても利己なる願い届くはずなし
スッポンにニワトリの紋これ如何にああ猿若の丸に柏だ
右足は前に進んで左足後退りする打っ倒れるぞ
環境に順応したる新人は毛で皮膚被う多毛種だろう
にこにちのケイト・ブッシュに寂光院の焼け仏おもわず涙
菖蒲さく冷房つけて寝ているとそのうち風邪をひくぞわずらう
見えている名も無きものが山のよに光の下に放り出されて
がんがんにつけてはいても室温は三十度越え気休め程度
竹の子や生まれのままに重ね着て釜茹でにされ衣を遺す
気晴らしは救いだけれど晴れただけ暗雲戻りまた塞がれる
願っても聞こえぬくらいひっそりと小さき声をよく聞くと聞き
砂山の上に佇みいくつもの砂山を見る崩れきるまで
目が霞むそいつはたぶん藁ばかり食べてるからだまるで馬だね
みぎひだり手相の違い生きてきた世界の深み顔に出るよに
散漫に浮かびあがりしことどもが焼き落とされてまことに哀れ
暑すぎてエアコン効かず団扇持ちあおいでるので何も書けない
ホットホットソーホットアイムホットシーイズホットソーホットソーソーホットあまりの暑さにウィリー・ニンジャ
軟弱なヒトという名の生き物で自業自得でにっちもさっちも
双葉より芳しくある栴檀は楝ではなく白檀のこと
ぐるぐると渦巻き状に廻るだけ掻き回されてゆっくり堕ちる
右の手と左の手とが語り合う愚痴や不満を聞いて欲しくて
手と手とが言葉を交わすぴったりとくっつき合ってぬくぬく話す
一瞬でこの火は消える何ごともなかったように吹けばおしまい
淡々と積み上げられる重きいき身動き取れずこうべを垂れる
どれほどの無駄な言葉を書きつけた忘れ去られて朽ちゆく指で
冷え冷えと先の方から痺れたる待てど暮らせど吸えど届かず
暑さゆえハッピー・マンデーズ歌うイピイピヤヤヤイピイピヤヤヤ
シナリオはもう書き終えた無意識に惑星レヴェル大スペクタル
深くまで身体の奥へ降りてゆく省察の海すべて知るもの
マスクして頭が痛くなったときミントがいいと今さらに知る
窓の外ひどく暑そうだらだらと腰を上げずに時間を潰す
正直なところをいうともう何も張り合いがなくすべて虚しい
この星はもう悲しみで満ちていてデブリが蓋し息ができない
勿忘草の小さな花の淡い青はかなきものよ想いとは
勿忘草の小さな花の淡い青母のセーター思い出す
勿忘草の小さな花の淡い青さっきのあれは何だっけ
勿忘草の小さな花の淡い青思い出せるはひと欠片
勿忘草の小さな花の淡い青ラッシェンの歌思い出す
勿忘草の小さな花の淡い青いつまでもすぐそばにいる
勿忘草の小さな花の淡い青耳を澄ませば呼ぶ声が
勿忘草の小さな花の淡い青思い出されぬわが想い
勿忘草の小さな花の淡い青侘びしかり露と消えゆく
確かそう喜瀬川さんはこちらですお見立て通り寺の墓見世
動かざる大いなるもの流れ出す夜明けの空にのぼる光輪
瞬間の密度は高く反対に希薄とならん気散ずるもの
手に持った小さなノートより薄いはったりかます虚仮威しメモ
あの頃はアトモスフィア・ストラット見つけただけで鼻血出ました
うにょうにょとアダムス師匠弾きまくるクラウド・ワンは衝撃でした
傾いて回ってるだけ昼なんて短くたって構わないのに
わたしには語ることすら出来ませんこの語りとてすべて無である
水瓶にどぼんと沈め知らんぷり算盤はじき裏ないざんす
気がつけば袋小路のどん詰まり向き変えるほど風もない谷
ふんわりは底の底までふんわりとしていなければふんわりじゃない
油かす五升をおごりこの辺にするめ巻いても根が浅いのは
見下ろせば揺れ動きたる白い影旧懐の街大輪田の笛
島々を小さき船が行き来する運べることは限られてても
鼠とり忠なるものに十五円藪入りの日に親子鼠鳴く
妙薬につかりし目玉飛び出さん怨めしいやらスホンキリイル
いつまでも見守りたいの一念で目だけを残す親心かな
音羽屋をほめてるうちに幕となりばつが悪くて幕もほめとく
音羽屋と掛け声かけてにっこりすにっこり返ししっこりとなる
梅雨を病む偏に気圧低気圧生きる気力も大暴落よ
斜向かい壁に打ち込む長い釘こっちの壁に出てくる不思議
はじめから調和しないとわかってた形の悪い幽境の月
西行が歌に詠みたるあの富士の煙のなびき大河にて見る
その辺に寝かしておくと跨いだり始末に悪い釘にかけとけ
いつまでも耳を真っ赤にするほどにはにかんでいて眩しいほどに
あの細い急な坂道降りてゆく玄碵坂のそぼ暗き谷
谷底の釣り堀の音目の前に聞く奥の部屋藪下の車庫
風呂上がり冷房きかせぼんやりと短き夜にアマガエル鳴く
どれほどに想いを込めて書いたとて削除は易し消え去る軽く
どの顔も無惨なまでにひび割れて排水溝の戯言のまま
人間は十分待てぬ生き物と尾瀬のニュースでカルガモも知る
いつだってわたしはわたしと話しますわたしになったあなたと話そう
そこここで時代の流れが求むるは班田収授じゃないかいなあ
まわるうた強弱つけてトリルする中心点へ円環狭め
よく晴れた真っ青な空白い雲見れば即座にアムネシアだね
もういいよそのゲームには混ざらない専守防衛沈黙で撃つ
こんなにも無茶苦茶なことし放題なのに地球はとても優しい
目に見えぬ繋がりありし六本木プラトニックラヴあの坂降りて
波打ってがたがたになる親指の爪なでなです可哀想にと
晴れたるも不快増したる水無月のべたつく顔を撫で回しつつ
揺れ動く落ち着きのない球体の表面につく汚れのような
エアコンの音騒がしく聴き取れぬアンビエントもまたアンビエント
葦生いて水音かすか草いきれ震えるように陽光ぞめく
はてさても頭が重い目覚めかな前線迫り身構える梅雨
何回もおんなじことを言い続け言うこと無いと言うことが無い
正楽の揺れ動く肩めじるしに鋏の神が天より降りる
若竹の鮮やかな色見ゆるとき海の記憶が頭をよぎる
ダメなときダメと言えるか言えないかそれだけだけど大きな違い
オリオン座タンホイザー門みんな見た外の宇宙はまだ外じゃない
道灌の橋のたもとのよろず屋に提灯借りに来るものあるか
二段橋あの水の音忘れじや空突くようなだいたらぼっち
ユーチューブ画面を通し手を合わす観音様の御縁日なり
オリオン座タンホイザー門窓の外インジゴの雲惑星のエコー
飛ぶ雀いえをえたりと画聖いう駕籠かきならば浮雲も添えよ
風もなく波も立たない底の底枯れ枝折れる音も立てずに
王族と下々のものトランプを封建的と批難して切る
右の目に赤い血流れ左には青い血流る混ぜこぜに見る
調和とは玉虫色したエレガンス抽出された呪文の縛り
近頃はどんな動きも騒がしくアンビエントに浸りきりです
この傷はもう癒えないよ血が流れ涙に濡れるこの深き傷
もう駆ける気分じゃなくてぼやぼやと取り残されて砂を噛んだり
目の前に抜き身の刃突き付ける凡夫の目も抜くインスタグラム
アカウント削除するよに吹き消える美味しいとこを摘まみ食いして
歌声の深く響くは沈黙の焼き尽くされた道を行く船
薄暗い夜道の坂で見落としたあの曲がり角あの分かれ道
ごきごきと何処も彼処も軋みたる錆び付きたるは内も外もか
いまここにこうしているをよろこびとわがよろこびとだれがおもおう
ぽっかりと口を開けたる空洞はだいたらぼっち歩いた跡か
何もかも直ぐではあるが少しずつまたよみがえる調子を替えて
透明な冷たく冷えた水底の得体の知れぬものとなりはて
隕石や小惑星がぼんぼんと落ちるわ落ちるネットスケープ
針のせたあの瞬間を覚えてるG7のクイーン・イズ・デッド
森を出て内なる森に迷い込むぼんやり動く光は遠く
木の床に油べっとり染み込んだそんな電車にまた乗りたいよ
七つもの大きな目玉照りつける軸の歪んだ非場所の世界
一日はあっという間に過ぎるもの日に一ミリですぐ一メートル
もうかなり耐久性がついたかなふとしたことで水泡に帰す
両の手を頭の後ろ組みながらぷらぷら歩く顔引き攣らせ
七時まだ日の落ちきらずちび子株手の平反らし欠伸いでしか
哀れなるフランツもただ夢をみて取っ組みあって挫けた童
錆びた鉄轍は遥か遠くまで単一の時来たる一極
聖霊は祈りて歌う臭い肉泥に口づけ昏睡の夜
見よまるでヤマザキマリは戦士なり砂の女の女は詩なり
塀越しにグラブ突き出し捕球するマーク・トラウト千両役者
ゆっくりと名前を名乗る二度三度何故にだったか夢の中ゆえ
大門をくぐり高みに上りゆく胸三寸にもゲートウェイかな
ジャンケンポン遠巻きに見た小舞台おぼんこぼんの賑やかす声
噴き上がり空に散りゆく滝壺に深く潜りて陽光をのむ
足り過ぎは苦なり足らぬも苦なりただ慎ましく生き程良く笑う
越後屋のこいに隔てはありますか憚りながらこいまみれかな
泥のよな世が書き残す何かしら黒きピートに記憶とどめん
静寂に佇む景色飛び去りぬいつか来るときまた帰るとき
立膝で生えるそばから老いぼれた足の爪切る苦しき姿勢
天上のそのまた上のエンピリアン光と影が混ざりあう空
葉に問うて根に問いかけて暗い坂流れ落ちたる充溢の水
気分だけがちゃがちゃずれるトランスファー危うさひめた狭き平衡
断絶の後にできたるこの道をこの細道をこの荒れた地を
見よしかし聞くことはない名も知らぬ待てど暮らせど空中の城
力とは堕落であって嘘であるふんわりそっと為すが賢明
加速するいいねが世界駆け巡る情報瀑布冷たい蕩尽
黒き窓静止のヴィジョン冷ややかに方向も無く離反する線
この針が重なり合うときまみえたる憤怒の夜と叡智の明るさ
ストロベリーの時期だから苺月されどこちらはしゅと犬ムーン
ヘナヘナでペラペラしてるそれこそが君たちヒトのご先祖様だ
帝国はもう動かない外郭の円環にだけ雨降り続く
老い柏ささくれだった囁きに正気を保てハーブに酔て
神様が長生きすると崇められ話して書いて地に足がつく
表面はうつろなる部屋月影の沈黙が生む儚き崩壊
千葉テレビ秩父のドラマ思い橋テレ玉見れば韓国ドラマ
だってさあ誰かの役に立つことを書くというのが一番苦手
散々に迷い倦ねたその先も苦難ばかりで情けねえやら
円環の外側にある円環に雨は降らぬか転置の永続
ホヤの花どうやら二箇所で咲きそうだ実朝ばかり見てる間に
胸騒ぎすべてを賭けてなにを得る雨に洗われ正体を出す
投げ上げて空に溶けゆく飛翔体あの蟻塚にまた帰られよ
えいやあと開けてみたらば案の定やっぱりハズレ意地悪すんな
絶え間なき循環の束循環す大きな機械軋みおらぶる
わしらもう相対的に低水準令和枯れすゝき見ればわかろう
力んでは何しようにもままならぬ乱さぬように濁さぬように
間隔はゼロとなりけりキャミタマがキャミト~ルしてキャミガミの声
円となり円と円とで溶け合いて内在たるが至福とならん
時を超え透明な文字打ち寄せる月影と舞うネレイドの歌
掴めない指先すらも触れられぬ近づくだけで崩れる世界
軒先に集いし騒ぐ雨音も道明け渡し恩寵は来る
異星より降り立ち根づくマハラジャ王アンテナ広げ交信してる
流されて暗く冷たい星の上また投げ出されホーミータイト
身を低め徒徒しくもよたよたと執濃く追って逃げられる鳩
六月が思いのほかにプレミアムたか子達郎ヤマザキマリって…
情けないまだ望むのか飽きもせず願い立てても無駄であるのに
問いかける何も応えるものはない来るはずのない時をただ待つ
平然と分かったようなことをいう分からず屋なる店あるという
筆先で描き下ろす線追いかける軌跡を残し今が逃げゆく
有るは無い有れば有るほど無いは有る無いが有らねば有無も言え無い
穏やかに心を無駄に動かさん小さな声で波鎮めるまで
去るものはすぐまた還るなにもかもでもここにいて世界は廻る
わたしとはわたしではないその逆はあなたはあなたわたしとならぬ
倒れ込み朽ち木のように眠りたる腰掛け椅子に使うものある
手も足も歯も立たなくて空回り哀れなるさま曝け出すのみ
重き荷を背負うていても行く道は一つにあらず迷え迷い子
何もないとこに出たけどどうすれば生きて帰れる気のしない道
現実は星の数ほどあるもので下手に繋ぐと光の外へ
咳をして咳をしてまた咳をして視界の隅に星が飛んでる
微視的な小さきものも耳寄せてその声聞けば中から響く
ようようと天つかんほど噴き上がるげに逞しき闌ける実朝
地の底の井戸の奥底覗き込む水流れゆきまた川に出る
一ミリも動かざることまるで石このかたまりし弦よ震えよ
難しいことではなくて当たり前それすらできぬものは埒外
正解はひとつではないそれなのにその幻を追いかけている
あれやこれ試みたけどさっぱりでさすがに少しへこたれている
考えてみても到底わからないでも信じます生きてる限り
明日なき世界約束の時ぞ来る唱えよマーシーの合言葉
梅雨時に今年もなったそう思う木村カエラを聴いて実感
芋俵夜食に一つ拝借を何か出てきたガスでよかった
目の前の数十センチだけを見て生きた言葉を歌にできるか
細い糸かすかな光その曖昧さ勘違いの波と岸と
結ばれず不飽和にして睡るもの新たな朝がなみなみと萌ゆ
百兆の桁であろうがなかろうが円の面積しかと解らぬ
落ちてます気づかない程ゆっくりと落ち行く先は推して(落ちて)知るべし
つやつやと若き緑のなめらかさ無慈悲なまでに優美なるもの
あの朝に波長が合うて変調すジェニー讃えるロックンロール
黒々と塀が迫った狭い道その先にある忘却の庭
その昔ここらも人が暮らしてたそんな時代もあったんだよね
ぽつねんと過ぎゆく日々を繰り返すわたしの後ろホーリーシット
一文字も動かすことのできぬよなそんな文など人に書けるか
哀れなる黒き惑星置き去りに西へと走れまだ見ぬ浄土
加速した世界の一部覗き見る地獄巡りのインスタグラム
慎重に(リ)スターティング・ブロックをセットしないと大怪我するぞ
垂直に伸びたる枝が最早茎三代目ゆえ実朝と呼ぶ
曲がり角鉢合わせするユニコーン飛び出し注意それうにこうる
出しゃばらず控え目にして様子見る周りの子らの邪魔とならずに
まだ其処にそのままに在る遠き日の思い出せない有るの痕跡
絞り出すまだこれからと振り絞る何かあるよなフリをしながら
何もかも分かっていたらつまらない歌など詠んで膿も吐かない
線を引き括弧に入れた自然なら相互に利するリズムで生きよ
畦の上でっぷりとした饅頭か昼寝している合鴨である
影もなく尾羽うち枯れてただ独りどんな気分と問うボブ・ディラン
沈みきり侘びしき場所で独りきりどんな気分と問うボブ・ディラン
曇天に何をどうしていいのやら明かり足りぬと文字も見にくい
光差しその眩しさに背を向ける幻影の舞ことごとく夢
低く鳴る羽音のように持続する唸り高まりノイズ閃く
ざわざわと耳に届くは川や風木の葉や虫のうわさ話か
掠れたる囁き声は虫喰いで明るみになる貴種の品格
美しき天使の瞳覗き込むそこに映りし見知らぬ男
指先で見えない四角描いてみる同じ四角を向こうでも描く
ぷすうっとまるで空気が抜けたよに横倒しです梅雨寒の午后
手を借りて助けを借りて生きたいが頼れるものは弥陀の手のみか
何もかも積み重なってゆくだけで風吹き止まず死せるものなし
皆が皆そう在る様に在れば良いただ在るだけでそれで良いのだ
光あり誘われるまま煽ぎやり刺激に応ずフォトカタリシス
中空に浮かぶ楼閣見返さんどぶはお歯黒夢ぞ果敢なき
安っぽい歌の文句を暗唱す黄金に染まる大地に立ちて
まだそれは息があるのかしかと見よ折り曲げ捩れ未完の躯幹
舞い上がる金色の塵愛が溶け鎧が溶ける戯言の雨
太陽は去りしが戻る何度でも警句とともに息絶えるまで
混沌のうねりが人を翻弄す欲望の果て調和ありしか
空しさを歌う人あり悲しみを笑う人ありまだ虚は虚
飛び上がる波の際から風の果て空の向こうにまだ空がある
落ちかかる雲を染めたる鈍真珠イリデスンスにあそぶ光線
ガタという雨戸と風の小競り合い一回きりの須臾の偶然
蝋燭の炎の生命売り買いすナイフの上で廻る世界よ
何もかも普通にできる人ならばもっと普通に悲しめるのか
泥と石積み重ねゆくひたすらに何ができても泥の山なり
炮烙が粉々になり御目出度い追放されし陶片ぞある
それほどに冒涜的であったとは何もできぬはもう処罰なり
何度でも消えてなくなる流されて遠ざかりゆく遙かな大地
ずぶずぶと窪みに落ちる虫のよなこの存在の憐れなるさま
気がつけば歩きにくいねこのあたり泥濘んでるよまた雨降りか
さめざめとまだ降りしきる焼け落ちた神の家にも琥珀の涙
心の火ひんやりとした灰の底ふりつもりゆく嘘も本当も
底の方どこまで潜る深い河くずれた岸が飲む濁る渦
巡る因果の荒れ野なり選択は正しくもあり間違いもある
まだ何もできてないから焦るのか今のままでは悔しいからか
生きること生きたるものが踏みつける蹴り込まれたる石沈めつつ
太々とサバイバルする松葉菊そっと咲かせる紅きぎらぎら
降る光受け止めきれず撥ね返す青き叫びの光輝ぞ燃ゆる
その刹那わたしは誰か知らぬもの見たり感じて覚えるを見る
空遠く大きな車輪動きたる星々を載せ星座が廻る
海の底深く沈んだ魚あり光届かぬ宇宙にあそぶ
もうここに見晴らす大地すらなくて薄暗がりが広がるばかり
この星の上で見上げる大宇宙吸い込まれそう向こう側まで
鳴り止まぬバルカンブラス飛び廻り続く反抗ファシストに死を
何よりも輝いているものがある眩しくて目が潰れるほどの
待ち時間無駄に過ぎゆき伸びぬ影いまだ名を呼び刹那を待ちぬ
最高はもうそれだけで最低で世界はとてもインスタグラム
長き影冷たい砂の一粒に回って帰る星の再生
オクタビオそれに触れると光差すわたしに勇気与える言葉
母の夢なぜだかいつも箸のある食べているかと問いたるものか
人は人それでも人は人をして同じ人だと見えぬことあり
たんぼ道走れば後を追いかける水面をかすめ風きる蜻蛉
苔珊瑚苔ではなくて苔もどき珊瑚色した実が珠綴り
思い出す遠いあの日が蘇る手を触れないでそのままにして
先行馬ほら見ろやはり沈みゆく束の間の夢逃げゆく先に
あれこれがみんな我が身に報うならきっとそうならあれもこれもない
結局は自分さえよきゃそれでいいそんな浮世にゃ浮かびたかねえ
正解はないだがしかし結局はその輪は閉じてまた最初から
恐れるな期待はきっと無駄になるもう時はない迫りくる声
僧のもつ鋏を前に凜と立つ白蓮の花永き一瞬
白菊を切りたる鋏進み出て動きを止めて四方を合す
与太郎のその目に映る世の移りつまらないよとようつべを見る
いつの日かこの細道を抜けた先もうないこともあると見れるか
全員を篩にかけたようなもの受かる漏れるは運次第だよ
埋もれてもぞもぞしたる土の中ひとり静かに球根夢む
この迷路どこに出口もなかろうに入りしところそこが出るとこ
もしいまもそばで待っててくれるなら何を語ろう今日も明日も
犬がいて頻りに散歩行きたがるでも靴を履くとこまでの夢
無智を識り隠されたるが総べてなり確かな不覚無は有りに在り
ゆっくりと動き続ける砂の海さらさらさらと大地蝕む
希望の灯どこかに見える丘がある道なき道を駆けあがりゆく
誰かしらわたしではないわたしの手ことば書きつけわたしと歌う
われわれは慰め合って生きるもの地層となった芥屑のうえ
雨が降り冷え切る体心まで星を引き裂き世界は睡る
まだまだだわが心臓は脈を打つみな嘘だらけ焼き尽くされる
刺すような西日遮るカーテンの青白き襞薄目にて見ゆ
形なく揺らめく調べはがれてく光吸い込み時間も消える
燃えたてる月の光に導かれあさに迷いしものも静まる
みんなのようにできませんできぬのはできないようにできているから
人らしく人が生きるを妨げるあれやこれやに取り囲まれて
今さらながら然りながら世間にひとり棹さして何処に流れる
この世界もともと有って無きような思い浮かべて沈みゆくだけ
入れ替わり立ち替わりして飛ぶ蝶に陽も降りそそぎ生命寿ぐ
漠として掴めないものばかりなりみな夢のようリアルなれども
川縁で桜撮るふりして撮った後ろ姿を探しにゆくよ
晴れて照り緑眩しい季節なら亀盤を聴き生命寿ぐ
ほそみとはかるみとはなど言いたれど令和の世ならいかに詠もうか
なぜかしらかの深淵にわれ墜ちんああ古のパンセの淵に
混ざり込む必要なもの押し退けて赤き虚ろがぐるぐる巡る
ほらそこに何かあるぞと鉈でうつ削り出されしゴツゴツの澱
微睡みて深く沈んでゆく体圧し付けられて夢で溺れる
道もなき未開の地でも誰かしら迷い込みたる似たものぞある
馬と猿ともに力を合わせれば一人前にはなろうものだが
蝶のよにふらりふらりと飛び回り選り好みして石に取りつく
清めかはもう進めない塞がれて身動き取れず立ち尽くすのみ
今日もまた歌ばかり詠む素寒貧馬と猿とで掛け合い遊び
歌詠んで伝わるものがあったとて人は九割話し方なり
歪みとは罪なものなりいつだって反りが合わねばそろりとゆかぬ
屑を切る嘯きシェイク鬼札引いてものにするわたしの獲物
今月の日記をまとめて保存するいつかデータ消えわたしも失せる
起きながら夢に彷徨い耳澄ます黙せる調べ地平も淡し
最後にはフェイクまみれで現実を見ずに済んだと感謝するのよ
時ならず場をも違えて生えたるか日陰で独り倒れ萎びる
ただの歩は狐なぞではあるまいな戦語りを次の歩にさす
斑の入りし布袋葵や涼しげな可愛らしいが水槽がない
もろともに大きな網にかかりしも食えない奴と捨てられてポイ
丘を駆け坂道を駆け辿り着くあなたとわたし極まれる善
丘を駆け坂道を駆け辿り着くあなたとわたし問題はない
透明な心にぽわり波紋たつ露の世なれば世を儚まん
何もかもあっけらかんと過ぎにけり我立ち止まり風に吹かれる
真っ暗な底へ落ちゆく頭から足踏み外す飛び起きる夢
弱弱と起ち上がりしもそれだけで何かが変わるわけもなかろう
ひたひたと夜は静かに迫り来る怒濤の如き不安とともに
吹き抜けて風青葉を揺らすそれだけでわがこころざわと虞れる
ただ独り取り残されて茫然と初夏の陽射しが照る窓の外
世の中の道なき道を思い入る山深くでもいいねつきたる
わたしとはメタな分身メタバースそこにいるけどわたしは未在
透明な虚ろにありし何ものか見よ指を折り思い吐かるる
その辺り少し前までありました砂に描いたわたしの顔が
もろともに突き落とされん称名と見聞きするもの知るひともなし
静かに御座す阿弥陀仏いつもわたしのそば近く手引きしたまえ
欲を捨て植物化する人類に動物族がミサイルを打つ
どんよりと足投げ出して座ってるだらけてる間に陽は落ちてゆく
人なれば殺したくない人ゆえに想像をする人の気持ちを
暑いのうやってられんはこんにゃろうそれでもひいひい言いつつ書く
賢者なら雨にも負けず濡れてゆく見るものないと走り出すかも
草の根をぶつ切りにする草の根がありばらばらの根腐れの痕
人は人わたしではないだからそう軽い気持ちでいいね押したり
神様にお願いしますお願いをするまでもなく手を差し伸べて
何もかも人ごとのようぼんやりと眺めているともう日曜日
断ち切らるあれら全てが吹き溜まるじめじめとした肚の底から
わたくしはベズイミアニと申します名があるようで名のないわたし
赤と白白と黄色の混ざりしか眩しき西日ほやの葉照らす
ここからは一人旅です果つるまでわが存念が足手纏いか
激しい雨もあなたを足止めさせぬなら打たれ叩かれ歩み去れ
痩我慢いきに見えたるあんたの時代その意気地知るものもなし
鉛色したソルドルの水面におつる緑の森と尖り屋根
物騒な話だね然れどフィクションもっと奇なるは現実世界
途切れ途切れのオルガンと靄がかかりしドローンの音海に没す
逆立ちしてもしなくてもそれほど大差ありはせぬ人は人なり
ずっと荒れ野が続くのかこの先なにかあるのならまだ進むけど
相応しい人に認められそれに即すと心得る正誤は追って
灯が消えて暗い夜道を歩くのも自分ひとりで行かねばならぬ
月の出の遅きを嘆く青蛙豪雨雷じっとやり過ごす
雨はやみやがて消え行く水たまり二つの世界の交錯点
どうして人はこんななの違いを違いと認めないそれでも人は
にぎやかな雛たちの声耳にする人間歩く糞よけながら
入り口に雨戸立てかけざあざあと腰巻ひらり行水ざんす
頑張ればわたしにだって手が届くそう思えれば気も楽だけど
ただのらりくらりとしたいぼけ鯰触れて起こすな旭光無用
この声が聞こえるならば応えてよ我が問いかけを我のみぞ聞く
もしかしてこれ明後日の方向か仕方がないな先を急ごう
疑いの色を刻する顔の海わたしは溺れマリアンの声
枝垂れ咲く枝垂れ枝垂れて腰が折れ泥濘に顔突っ込んで咲く
自らことの姓名はゼレンスキーのウォロディミル怒風激しゅう
もう三十年以上も聴いているのにさらに深く歌が沁みる
やっぱりね琴線に触れるわけなの初期のミッション涙なくして
みんなサボテンとか好きなのかと思ってたけどそうでもないんだな
サボテンの花インスタグラムフェイスブックにあげてみた無反応
歌を詠んでも愚痴ばかり嘆いてばかり明るく陽気にいきましょう
出会いと別れ繰り返し飛び石伝いに歩みゆく時の間に間に
一瞬で時はどこかへ飛び去るか飛び石伝いに出会い別れん
一瞬で命は尽きて一点に凝縮されし過去と未来と
ものを見て時に喜びまた憂いただくるくると目を回してる
ばかばかしいと思うだろそれでも詠むよ這ってでも愛は言伝
何となく分かっているよ一応ね何となくしか分からないけど
サボテンの花が咲いたよなんてこと一番最初に教えたいけど
殻ありますよ分厚いのみんなそうだと思ってたそこをなんとか
どれほどに削り出しても広げても分かり合えないあなたとわたし
小指の先が触れ合いしあの人は誰遠きあの日と夢現
飛び込むか飛び込まないかなのだけど飛び込むほどの意気地ない
吹き飛ばされてもう終わり呆気ないほど簡単に消えてなくなる
白紙のようで白紙ではない大事なことが書いてある読めないか
真っ暗な絶望の夜のその底にいつものように朝は訪ずる
今年の皿を見せたくてやっていたよなパンまつり春はかえらぬ
起きて見る手の平につく爪のあと寝ている間にも堪えて怺えん
傾いた茎より上に真っ直ぐに独りのびるは侘びしからぬか
しみるのはエモいからならそれもよし響けば響くそれだけのこと
悲しみの上澄みに少ししみてくエモい言葉がわたしを癒やす
不安だらけに決まってるだろどこまで行けば少しほっとできるの?
ほぼ繋がって枡掛と成りました百まで続く長き道のり
人生に上がりはあるかあるのなら何も持たぬは上がりじゃないか
どこで白旗振ればいい世間知らずで負けの作法も知らぬのだ
人生は儘ならぬものもっと気楽に生きれたらバカにすんなよ
人生なんてそんなもん悟ったようにいうけれどバカにすんなよ
陽が落ちてじき暗くなる舞台転換いったん沈みまた浮かぶ
ゆる短歌そんな感じでいきたいがいかれたんかと言われますかな
ずぶずぶと沈み込んでく絶望の淵はぬるめでそう悪くない
簡単に壊れてしまう簡単に動かなくなるみんなそうだろ
ああごめんネジが一本外れてた道理で人と馴染めぬわけだ
なにもかも中に眠っているのなら起こしてみたいものは試しだ
鉱脈に一つ一つ墓標を建ててはきりがない拡げつつ掘れ
バンバンと撃てばいい玩具のピストル突きつけてさよなら退屈
光が弾け飛び散るをただ浴びているだけなのに身じろぎできぬ
不思議なことが何もなくなる未来なら驚くほどにひまだろう
日があらたまり夜が去り雨戸をあける自転する星に寝そべる
どこまでも遥かに遠く大地は続く果てなきゆえに人は泣く
佳林師匠の顔芸の精度の高さ別次元芸道の極み
踏石のある戸を背に座りぼんやりと眺めてる最初の記憶
自分とは違う世界を覗き見る魔法の道具インスタグラム
人間が地球を悼むその前に自然宣う人間要らね
本当になにもないのよ何ひとつ本心を詠む意気地すらない
みんな同じじゃないけれど人に上下はありませぬ悲しませるな
尤もらしい曖昧さ確かなものはなにもない今日も明日も
くるくるとまわりまわるよドリームマシン時を越え響く魂
乾いてく見れば見るほどからからに干涸らびきった心で見たい
お昼どき昔いいとも今は大谷いつの時代もショータイム
それはもうすぐ手の先だだから君はもう未来だ架け橋となれ
見上げてもどんなに高く見上げても見えてくるのは見えぬことだけ
おめでとう次元も価値も人間もあらゆるものが磨り減っただけ
幾つもの山々越えて駆ける風関東平野を吹き渡るかな
わたしって誰だったかしらメタバースどこにもいない誰かがわたし
時が流れ雨粒が頬を伝うそぼ降る涙いずれ消えゆく
飛び去った言葉がそれを追いかける掴んだ尻尾じっと眺める
何からわたしは逃げているのかもう取り囲まれて袋の鼠
われもいつかは白きはぎ見て落ちるかな色めきたつもべかかうか
さりなれどどこまで腕を捻じ込めばわたしもどきがわたしとなるか
底石の上を治むるマハラジャよみなブルージーンの家の中
ボディロックはジョマンダでシュビドゥビドゥ愛は魔法と歌うはバノア
熱きもの急いで飲みてヒリヒリとこびりつきたる舌の感覚
よく見れば月の溶岩の欠片かゴツゴツしてて触れやしない
道の下暗渠となりし川の下泥に埋もれる郷土の歴史
なんてことないなんてのはないからなちょっとのことでちぎれちまうよ
走り出してはいないのにもう止まらないこの先ずっと下り坂
ぼんやりと意識がふらり歩いてるそのうち消えるもう足がない
亀のよに首引っこめてもぐり込むおびき出してよもので釣るなり
無駄骨を折りも折ったり複雑にまだまだ折ろう音が上がるまで
乾き切り喜捨を乞わんと歌を詠む賤しき歌に聞く耳はなし
風の香に青みがかかる五月かな薔薇の花落つ十両返せ
ほらまるでまだいるように声がするここからあちらとらばーゆだね
眠くなる面倒臭いのばかりなのやりはじめてはほっぽらかしに
散ってゆく集まり来ては通り過ぐのろまを馬鹿にする影法師
ゴロゴロと角つきあわすさざれ石千代に八千代にもう砂の海
戒めに角生やされしものがいて何のことなく今日も今日とて
グラグラになりしもいまだしがみつくいつ落ちるかと突かれながら
静けさの底にうごめくものぞある時を早めて滅し浄める
慌ただしいの苦手ですのんびりしててすみませんご機嫌よう
誰もみな死ぬるの上に生きるなり生きて死にゆき死して生かさん
人さし指と親指で輪をつくり覗いてみるよ別の世界を
うとうとし怒鳴り込んでく夢をみるわが心根は荒み果てしか
白々と幾重にもある薄き膜身を守りしか目を曇らすか
何度でも這い上がれると信じてる遂にアイ・アム・ザ・リザレクション
間違っておかしな方へ来ちゃったよあの分かれ道前前前世
振ってれば紛れ当たりでホームランなんて僥倖なかなかないね
傘の骨折れ曲がりしをそのままに素地を透かして歩みゆくなり
羽根がなくって骨ばかり立って歩いてウロウロとまるでひとだね
半世紀ぶりに家族が顔を揃えて一家団欒笑い声
見つからないよ何をどうすりゃいいのやら空白だらけラララララ
問題がどこにあるのかわからないそれくらいには問題だらけ
何げなく水に流しているけれどもしかしてこれ間違いですか
さあ選べ二つに一つなんてとき乙なやつとる粋狂なしと
生きながらもうなきものになりしかや気楽なれども怨めしいかな
言葉にできないからってララララララと歌うより発句をひねれ
あの頃は決して消えない灯りがあると信じてた油断大敵
今の世に西行の如き聖いて鼓ヶ滝でタンポポ詠むか
今の世に龍馬の如き人ぞいて数歩先ゆく世界を見るか
尾が曲がる雀動ぜず逃げもせず獲物をせしめ武功を立つる
ドーナツといえばやっぱりジミードーナツ様式美だよ様式美
波は寄せ波は返すよ順繰りに返したそばからもう寄せている
ナムアミダ和尚の読経を聞きながら歌を詠んでるこのバチアタリ
雨上がり照る青葉五月の風に吹かるる一遍まだ半乾き
雨に濡れ反っくり返る薔薇の花あらぬところを見やる輩
前にも見かけた気がしたんですよね由比正雪が中川正軒
あちこちが黒く汚れてちと愉し安ボールペンのインクどぼどぼ
もうにどとまみえることなきものたちへここにいたことわすれないから
いつまでもここにいたいとおもうならそうすればいいいついつまでも
なにもかもそうあるようにゆきすぎるそれでよいのだよいのだそれで
この世界思うようにはいかぬもの歩いてるよでずっと足踏み
草臥れて立ち枯れてゆくこの血肉かの嫩黄も懐かしきかな
ほら見なよあいつ朝からさっぱりだ釣りする馬鹿を見て笑う馬鹿
ゆっくりと染み込んでゆき奥の奥ぐずぐずにして内より崩す
歌になるどんなことでも詩になるその思い出は記憶にかわる
まだ誰も見たことのない景色なら捕まえないで逃してあげて
いつからか彷徨い歩くあの声は魂の声嘆く産声
病院で久方ぶりにお見かけす生存確認憂虞は残る
挨拶も筒抜けてゆくメタバース灯りのついた誰もいぬ家
陽が差してもわもわとする仄暑さ頻りに蛙が試し鳴きする
アンナカキグナハジメイはアンナカコバネハクチョウの新属新種
映画より映画みたいな現実に未来を賭けた引金をひけ
ああこれもそれもあれもすべてがみなわたしであってあなたでもある
愚禿なれなどと言いつつ我が髪はほぼ大長髪となりにけり
華やかな世界はまるで知らねども逢魔時はなお暗かりしか
散々な春であろうがパンまつり四の五のいえど皿は三枚
耕した田んぼの土も乾きそむ田植えの前に芽吹く雑草
どこまでもメタな宇宙はでたらメタあるもないデータ・サラダ
せくなもうもっとゆるりといきてゆきたいすみしこころでよをみたい
むなしさはみつるをしるがそれゆえかたるをしらずばじゃくじょうなるか
ハードコア・パンクからポジパンへその後ハウスに流れ着く王道
ここはどこぞと漕ぎ手に問えばみんな射られて返事なし壇ノ浦
夢の中かつてのままの友の声記憶装置の爪を折しか
窓の外ほったらかしのおぼろづき白く可憐な花のさかりか
何回もワン・オブ・ザ・ピープルを聴く青山の地下ループは深し
縮み志向にジャンケンにわれらに恨の文化を説いてくれた翁
おんやまあホムンクルスってなあにそれ家紋の久留須の一種か何か?
伊勢湾の下340kmフォッサマグナを越えて震える
どうにかせんと思い立ちやってみたらば逆効果どうすんだこれ
おかしなことをいってたらだれもみむきもしてくれないどうすんだこれ
ホルムンスクの町でホムンクルスがホルンムスクなる笛を吹く
シベリアにホルムンスクという町がありホムンクルスが棲むという
おめでとう間に合ったのねよかったねうらやましいよ正直なとこ
すべてムダだといわれても生きていたいと思うのよ生きものだもの
日曜の夜のホームで見上げたる西武の上の白いたなびき
薔薇なれば標的ぞある門付るあの優作の怪演を懐う
すず風金魚師匠にフォローされたら無視はできない不義理はできぬ
息をするように短歌を詠み泄らすそれだけのことだからどうした
おでん屋を翻弄する書書き散らす厚恩の人亀田鵬斎
春先は温かだった十九度曇天の初夏ちと肌寒い
結末ががっかりだった夢を見ていやに寝覚めの悪しき日曜
打ちごろを真心こめて投げ込まんストライクとは慈悲なる心
場違いと気づいていますインスタを見ているだけで悲しい気分
黒ずくめ早くはこない待たされる手もちはわずかただ待ちわびる
じっとりとして汗臭い夏は来ぬ布団にもぐり冬眠したい
嘆いてもどんなに深く嘆いてもこの世界にはキムテリがいる
精神はもっていますよひとだもの上にサーヴィスつけるのは下手
出し抜けに井戸の茶碗は手にできぬ先ずは汚れた仏像を買え
これとかね深いなあって思うわけ安吾でしょうかいやよせのこと
わたしたちおちるとこまでおちるのね人間なんてただの膝代り
ささくれた指先ちくっと痛むとき孝ならんこと責められている
邪魔なのは間とりもつ言葉かは見るは知るなり知るは見るなり
伏して見よ山の長老ビンサバー目を見たものに戻るものなし
すこしだけよゆうができたらしてみたいちょっとぐらいはひとらしいこと
多様性一様なるも多様性許されざるも多様なりしか
気がつけば徳兵衛かしら船頭は櫓に遊びがねえ船徳いかだ
たれかしら岸田に投資するかしらそれでトリクルダウンするかしら
まだ誰も見てないようだ書きつけろフューチュラ2000になった気分で
切りし爪どこかに飛ばん指先を離れて竟にいざ新天地
かさぶたがかゆいのとてもきになるの自己治癒力に生き死にを見る
好楽のらしからぬ顔らしさ見えわき道をゆく美学を想う
鴉山迷いし人に告げやらん細道を行け細道を行け
露の世を逸つさりながら転げ落つそしらばそしれぐうたら蛙
みどりの日ライブカメラで眺めやる賑わう仲見世はためく幟
項垂れて暫し打ち遣れ桜ばな散れどまた咲く因果なるかな
ははのひのはなをながめてしみじみといちどくらいはかえばよかった
下の句が決まりすぎても上のらずマダムといえばエドワルダだろ
なんてことないことに躓いて躓きつづける下り坂の道
ながめやるさきになにかがみえしころやはりまなこはくもりけるかな
飲み込んだ叔父さん全部飲み込んだ霊岸島を見習わないと
雷が雲海かける天かける娑婆では下衆がびくりとすくむ
五月雨やみだれみだれてめためたに頽れてしまえ沈んでしまえ
不意を打つ興津要が落款と署名に一驚古書通販
ポイントを集めようにもおあしレス尻すぼまりし春のパンまつり
ひまつぶしうたばかりよむすかんぴんれんきゅうですよすっかりずっと
ウがさきかリがさきだったかマリウポリじしんがなくて口にだせない
みえたならなにがととおうえいえんにさめてもさめるひかるそのさき
たりぬのでつかめやしないなにもかもみているつもりでなにもみてない
こわいけどたずねてみます歌にしてあなたにもこれ伝わるかしら
息抜きにキーボード街を散歩してあたま山にて葉桜を見ゆ
長かりし卯月も残りわずかなりあければ皐月また長かろう
まだまだとやせ我慢するいじっぱりやいとめらめら芯からもえる
午後からは雨の予報と確認し早めにヤオコー行けど降られる
三どめのワクチン打ちて三日経ちようやく横臥し寝そべるしとね
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