共通テスト 試作問題 数学IA 解答解説 わかりやすく丁寧に
こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として、小中高生を第一志望合格に導くべく活動している者です。
本記事は、大学入試センターが公表している「令和7年度(2025年度)試験 試作問題 数学IA」において、新課程の内容が盛り込まれた「第2問〔2〕(データの分析)」と「第4問(場合の数と確率)」について、くどいくらいに丁寧にわかりやすく解説するものです。
一部の難問については、ただ答えをお伝えするのではなく、実際の試験でどう考えるべきかの道筋を具体的に示していきます。理解するだけでなく、あなたが"本番で解けるようになる"解説にしています。
試作問題の「第2問〔2〕」と「第4問」を、25分測って解いてみた上で、本記事の解説を確認してみてください。
なお、試作問題のその他の問題は2021年度の本試験そのままですので、そちらの解答解説は下のリンクなどでご確認ください。
■第2問〔2〕データの分析 15点満点
過去問の傾向として、「データの分析」のリード文に「データの総数」を書いていることが多いです。本問もそうなっています。他の情報はどうでもいいですが、「データの総数」だけは拾っておきましょう。
(タチ)四分位範囲 2点──解答1,2
以下の解答では第1四分位数を$${Q_1}$$、第2四分位数(中央値)を$${Q_2}$$、第3四分位数を$${Q_3}$$としています。
四分位数を求めることができるか、そして四分位範囲の定義を覚えているかの確認です。
四分位数の求め方が怪しいという方はお手持ちの参考書で可及的速やかに復習してください。この問題は絶対に落とせません。
また、今回問題にはなっていませんが、ついでに四分位偏差の定義は大丈夫ですか?
(ツ)外れ値 2点──解答3
外れ値は、問題文にて必ず定義されるのでしっかり確認しましょう。
問題文の定義に従って外れ値を求めるだけです。これも落とせません。
(テ)箱ひげ図 2点──解答2
散布図が3つあります。
問題文3行目後半(「また、〜」)にて、平均値と、それを散布図の実線にて示していることを伝えられますが、これをどう使うかは(現時点では)よくわかりません。一旦「ふーん」と読み流しつつ、しかし、忘れないようにしておきます。
(テ)の問題は正しい箱ひげ図を選択するものです。
この問題に限らず、「正しい図(グラフ)を選べ」という問題は、何よりも先にまず選択肢を見てください。選択肢を見比べて、「何がわかれば正解を特定できるか」を考えます。
箱ひげ図から読み取れる情報は、最大値・最小値・第1四分位数・第2四分位数(中央値)・第3四分位数です。本問の選択肢は、最大値・最小値にはそれほど違いがありません。
したがって、明らかに差が出てる四分位数を手掛かりにしていきますが、四分位数の中で求めるのが一番簡単な第2四分位数(中央値)で攻めてみます。中央値が約2であれば①か②、約3であれば③、約4であれば⓪か➃に絞ることができます。
では、中央値を求めていきましょう。
本問の箱ひげ図で扱っているデータは、「『所要時間』を『移動距離』で割った『1kmあたりの所要時間』」となっています。「1kmあたりの所要時間」なんてものは与えられていませんので、何かしら読み解く必要がありそうです。
とりあえず「所要時間」と「移動距離」が両方とも絡んでいる図1に注目します。
しかし、図1を見ても「1kmあたりの所要時間」がどこに表れているかよくわからない…
この問題に限りませんが、問いの概要がいまいちよく掴めないときに大事にしてほしいのは、「具体例で考えてみる」という姿勢です。
具体的に、例えば点Bに注目してみましょう。点Bは(移動距離,所要時間)がおおよそ$${6,36}$$。つまり点Bの「1kmあたりの所要時間」は$${36÷6=6}$$。
また、点Cは(移動距離,所要時間)がおおよそ$${10,12}$$。つまり点Bの「1kmあたりの所要時間」は$${12÷10=1.2}$$。
「1kmあたりの所要時間」が図1のどこに表れているか、見えてきたのではないでしょうか。
そうです、「1kmあたりの所要時間」は、各点の$${y}$$座標を$${x}$$座標で割ることで算出されるので、原点と各点とを通る直線の傾きであるということです。
つまり、求めたい中央値は、40個のデータをおおよそ二等分するような原点を通る直線の傾きということです。中央値が2、3、4のどれに一番近いかを知りたいので、原点を通り傾きが2、3、4である直線を図1に書き込んでみます。
傾き3、傾き4の直線は、ともに明らかに直線の上側に位置するデータの数が少ないですので、データの数を二等分するのに適当なのは傾き2の直線であることがわかります。すなわち中央値は約2です。
これで①と②まで絞れるので、再び選択肢とにらめっこ。①と②で何が違うか、何がわかれば解答できるかを考えましょう。
①と②も、外れ値とはされていますが、6(分/km)にデータが1つあるのは同じです。
注目すべきは2番目に大きいデータで、①は約3(分/km)ですが、②は約5.5(分/km)となっています。図1で「2番目に大きいデータ」を確認してみましょう。
箱ひげ図のデータは図1における「原点と各点とを通る直線の傾き」でしたから、傾きが大きいものに注目します。すると、「原点と点Bとを通る直線」と「原点と点Aとを通る直線」の傾きが最も大きいとわかります。
それぞれ傾きを求めてみます。「原点と点Bとを通る直線」の傾きは先ほど求めましたね、6くらいでした。
また、点Aは(移動距離,所要時間)がおおよそ$${12,72}$$。よって、「原点と点Aとを通る直線」の傾きは$${72÷12=6}$$。
「2番目に大きいデータ」が ①3 と ②5.5 のどちらかがわかれば終わりでしたね。後者の方が近いことがわかったので、正しい箱ひげ図は②となります。
以上のように、「正しい図(グラフ)を選べ」という問題では、選択肢を見比べて「何を調べるべきか」を考えるところから始めるのが肝要です。
本問を解く上で選択肢の違いを先に確認しないと、「箱ひげ図だから最大値・最小値・第1四分位数・第2四分位数(中央値)・第3四分位数をすべて求めて書いたら解けるぞ!」なんてことになりかねません。
時間の制約が厳しい共通テストでそんな悠長なことをしている余裕はありません。図(グラフ)を"書く"のではなく"選ぶだけでいい”メリットを存分に享受していきましょう。
(ト、ナ)外れ値 2点──解答0,1
(テ)で正しい箱ひげ図は②とわかりました。
外れ値は「1番大きいデータ」と「2番目に大きいデータ」ですので、(テ)での議論から点Aと点Bであることがすぐにわかります。正解は⓪、①。
配点は(テ)で2点、(ト、ナ)の両方正解で2点、となっていますが、完璧に繋がっていますので実質的には配点4のようなものですね。
(ニ)散布図、標準偏差、相関係数 3点──解答6
一番の難所。解答箇所は1つですが、この問題の3点をもぎ取るためには正誤問題を3連続正解する必要があります。難易度と労力を考えると、本番では$${\frac{1}{8}}$$に賭けて捨てるというのも戦術として十分にあり得るレベルの問題です。
ただ、標準偏差や相関係数への理解を深めるいい問題ではあります。以下の解説はしっかりと確認して欲しいです。それぞれ見ていきましょう。
まず(I)。これは簡単。問題文で「費用」と「所要時間」に触れていますので、その費用と所要時間の散布図である図2に新空港のデータをプロットしてみます。
問題文は「新空港のデータは、すべての◯よりも費用(縦軸)は高いし、すべての◯よりも所要時間(横軸)は短い」と言っていますが、どう見ても全然違いますね。(I)は誤り。
次に(II)。ここからが難しくなります。
上で新空港のデータをプロットした際、それが図2の実線の交点になりましたが、ところでその実線って何でしたっけ?
・・・・・・
そういえば、(2)のリード文にて、散布図における実線は「平均値」を示していることが言われていましたね。すると、新空港のデータは、「費用」と「所要時間」が40の国際空港のデータの平均値であるわけです。
もしやと思い、新空港の「移動距離」を見てみると22(km)。これまた40の国際空港の平均値に一致していることがわかります。
新空港のデータが、40の国際空港のデータの平均値そのもの。これに気がつくことが出発点です。
平均値ぴったりのデータを1つ新しく加えると、標準偏差は変化するかどうか。これが(II)で問われていることになります。
移動距離のデータの詳細は(1)で与えられているので、その気になれば「40の国際空港のデータの標準偏差」と「新空港を加えたデータの標準偏差」を求めることはできます。ただ、計算力に超人的な自信がある方ならともかく、私のような常人には時間的にしんどすぎます。
問題が難しく感じたときに試して欲しいアイディアの1つは、「自分で勝手に簡単な例を作って考えてみる」というものです。
例えば、次のように考えます。
元のデータが$${(1,1,4)}$$だとすると、平均値は$${2}$$、分散は$${2}$$、標準偏差は$${\sqrt{2}}$$。
このデータに平均値を1つ新たに加えると、データが$${(1,1,4,2)}$$となります。平均値は$${2}$$、分散は$${1.5}$$、標準偏差は$${\sqrt{1.5}}$$。
元のデータに平均値を1つ加えると、標準偏差は変わることがわかります。よって(II)は誤り。
もちろん、自分の作った簡単な例で標準偏差が変わったからといって、本問のデータでも同じことになることの証明にはなりませんので、これが記述問題であれば解答としては不十分です。
しかし、マーク問題だとこのような考え方は有効ですし、また、記述問題でも取っ掛かりとして非常に役立つものです。問題の言っていることがよくわからなかったらとりあえず簡単な例で考えてみる癖をつけてみてください。
本問の厳密な理解は次の通りです(飛ばしてもOKです)。
標準偏差の求め方を確認しておくと、
$${標準偏差=\sqrt{\frac{\lbrace \lparen 各データ \rparen- \lparen平均値 \rparen \rbrace^2の和}{データの個数}}}$$
ここで、
$${\lbrace \lparen 各データ \rparen- \lparen平均値 \rparen \rbrace^2の和}$$
は、新しく平均値を加えても変化しません。
平均値を加えても新データの平均値は変化せず、
$${(平均値)-(平均値)=0}$$が足されるだけだからです。
しかし、データの個数は当然1個増えますので、標準偏差のルートの中は、分子は変わらず分母は変わるということになります。よって、値が変化することがわかります。
最後に(III)。
平均値を加えたときに相関係数が変化するかどうかという問いです。
『図1、図2、図3のそれぞれの二つの変量について』とありますが、新しく加えるデータは「移動距離」も「所要時間」も「費用」も平均値ですから、図1、図2、図3についてすべて同じ現象が起こるはずです。したがって、図1のことだけ考えればOKです。
これも「元の40個のデータの相関係数」と「新しい41個のデータの相関係数」を求めるのは現実的ではないので、やはり簡単な例で考えてみましょう。
元のデータ(移動距離,所要時間)を
$${(1,4),(3,6)}$$
とすると、移動距離の平均が2、所要時間の平均が5、移動距離の標準偏差が1、所要時間の標準偏差が1、共分散が1ですので、以下の定義より相関係数は1となります。
$${相関係数=\frac{共分散}{移動距離の標準偏差×所要時間の標準偏差}}$$
元のデータに(移動距離の平均値,所要時間の平均値)の新データを加えると
$${(1,3),(4,6),(2,5)}$$
となります。
同じように各値を求めると、移動距離の標準偏差が$${\sqrt{\frac{2}{3}}}$$、所要時間の標準偏差が$${\sqrt{\frac{2}{3}}}$$、共分散が$${\frac{2}{3}}$$ですので、相関係数は1。
よって、新データを加える前と後とで相関係数は変化しません。すなわち(III)は正しい。
以上より(I)(II)は誤り、(III)は正しい、なので(ニ)の解答は⑥。
(III)の厳密な理解は次の通りです(飛ばしてもOKです)。
平均値を加えると、(II)で見てきたように、標準偏差のルートの中は「分子は変わらず」「分母は40から41に変わる」。
共分散についても、移動距離も所用時間も平均値である新データを加えると、「分子は変わらず」「分母は40から41に変わる」。
これらの情報をもとに、新旧の相関係数を計算してみると
$${元々の相関係数=\frac{\frac{不変の値A}{40}}{\sqrt{\frac{不変の値B}{40}}\sqrt{\frac{不変の値C}{40}}}=\frac{不変の値A}{\sqrt{不変の値B}\sqrt{不変の値C}}}$$
$${新しい相関係数=\frac{\frac{不変の値A}{41}}{\sqrt{\frac{不変の値B}{41}}\sqrt{\frac{不変の値C}{41}}}=\frac{不変の値A}{\sqrt{不変の値B}\sqrt{不変の値C}}}$$
相関係数は前後で変化しないことがわかります。標準偏差のルートの中の分母や共分散の分母は変化しますが、それらが同じように変化するのなら、相関係数としては約分されるだけなので不変ということです。
(ヌネ、ノ、ハ)仮説検定 4点──解答5,8,1,1
仮説検定の問題です。 まず初めに確認ですが、仮説検定をどういう流れで進めていくか、あなたは説明できますか?
・・・・・・
怪しい方は先に下の記事をお読みください。
本年度指導している浪人生が、共通テスト模試で誤って新課程の数学IAを解いてしまったということがありましたが、仮説検定の問題を完答していました。彼は浪人生なので仮説検定のことは初耳でしたが、「問題文を読めばわかった。ただ、時間がすごくかかった」とのことでした。
その場での対応で解けなくもないが、背景を理解しておけばより確実により素早く解けるようになる、ということです。したがって、仮説検定の流れはしっかりと理解しておくべきです。
では、仮説検定の一連の流れはわかっているという前提で、問題を解く上で実践的な解法をお伝えしていきます。
問題文で確認しておきたいのは次の5点です。
この5点を確実に読み取りましょう。
反論(帰無仮説)を論破できなかった場合、「何も言い切れない」という結論になります。「反論(帰無仮説)は100%正しい!」とも「あなたの主張(対立仮説)は100%間違ってる!」ともならないことに要注意です。
■第4問 場合の数と確率 20点満点
続いて第4問です。第4問は「場合の数と確率」の単元から出題されますが、本問は確率をメインに構成されています。頑張っていきましょう。
(アイ)反復試行の確率 2点──解答3,8
(ウエ)反復試行の確率 2点──解答4,9
(オカ)期待値 2点──解答3,2
期待値を求める問題は、表にまとめることを習慣にしておくと間違えにくくなります。
期待値を求める上で、当たる本数が0本である確率は求める必要はありません(どうせ0をかけて消えるから)。ただし、上の板書で書いた通り、確率の合計が1になっているかは確認した方がよいので、本問のように簡単に求められる場合は求めておきましょう。
(キ)期待値 2点──解答1
(クケコサ)条件付き確率 2点──解答2,7,5,9
(シ)読解問題 3点──解答3
(ス、セ)期待値 4点──解答2,3
(ソタチツ、テ)期待値 3点──解答7,5,5,9,1
■共通テスト対策としておすすめ問題集
本年度(2025年度)の高3の受験生の共通テスト対策は、過去問を演習するだけでは不十分です。本記事で扱ってきた「外れ値」や「仮説検定」、「期待値」が過去問に収録されていないからです。
次の記事でもお伝えしていますが、「本年度受けてきた共通テスト模試」や「共通テスト用の問題集」を活用していきましょう。
「共通テスト用の問題集」は河合塾、駿台、代ゼミ、Z会が出していますが、本年度に関しては河合塾のものが一番おすすめです。「外れ値」「仮説検定」「期待値」の問題が一番多く載っているからです。
以下、各問題集における「外れ値」「仮説検定」「期待値」が関わる問題の収録数は次の通りです。それらを少しでも扱っているセットをカウントしました。
■最後に
共通テスト 試作問題 数学IAについて解説してきました。いかがでしたでしょうか。
試作問題を解いた時にはよくわからなかった問題が、以上の解説を通して解けるようになっていたら嬉しく思います。
共通テストに限った話ではないですが、過去問演習で大きな成果を得るためには「十分な解説を受ける」ことが大事です。赤本などの過去問集の解説は必要最低限で簡素に済ませていることが多く、それを読むだけでは十分な解説を受けたことにはなりません。ひいては過去問演習の効果が低減してしまいます。
私は単発の授業のご依頼も受け付けております。「もう塾に通っているからこれ以上授業は増やせないけど、この過去問の解説だけみっちりして欲しい」などのご要望も大歓迎です。下の記事からぜひご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
あなたの受験がうまくいくことを心より祈っております。
それでは!