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「イッテQ」にも!カタルーニャのネギのBBQ祭

バルセロナから西に100キロ弱のところに位置するバイス(Valls)という町。ローマ遺跡の世界遺産で知られるタラゴナからは北に20キロほどです。ここで毎年、Gran Festa de la Calçotada(カルソタダ大祭)というネギのBBQのお祭りが開催されます。

9年くらい前に「イッテQ」で宮川大輔がこのお祭りの「カルソッツ」と呼ばれるネギの大食いコンテストに参加したこともあるので、見たことがある人もいるかもしれません。大食いコンテストの様子は一番最後に。


「カルソッツ」とは?

19世紀の終わりにバイス(Valls)の白タマネギを育てていた農夫がいました。その農夫は収穫した白タマネギを土に埋め、生えてきた部分の根を切り落として焼き、油、酢、塩を混ぜたソースにディップして食べたところ、タマネギよりもマイルドで美味しかったことから気に入って栽培を始めたそう。このネギが「カルソッツ」(Calçot)です。

市場で売られているカルソッツ

白タマネギの種を年の終わりに植え、夏の終わりに収穫した白タマネギを数か月保存してから、それをまた土に植えるそう。カルソッツの語源はカタルーニャ語の「calçar」で「土をかぶせる」という意味があり、その言葉の通り生えてきた部分を土で覆いある程度の長さになったら収穫します。今では、「Calçot de Valls 」という原産地呼称になっており、品質が厳しく管理されています。

カタルーニャの伝統「カルソタダ」

20世紀の初めには、冬の祭日にバイスの農家の間で広く食されるようになったカルソッツのグリル。1940年代頃からバルセロナをはじめカタルーニャ州内に広まりました。

もともとは、家族や友人が冬に農場で集まり春の訪れを願いつつ、ブドウの木の枝を燃やしその上でカルソッツをグリルしたものをコースの最初に食し、そのあとにグリルしたソーセージ等の肉類と共に楽しむのが「カルソタダ」 (Calçotada)。現在ではレストランなどでもカルソタダのメニューがあります。バルセロナでは町内会ごとに通りや広場で開催され、町中でも時折見かけます。

バルセロナ市内のカルソタダ

11月から4月までが収穫の時期で、カルソタダはカタルーニャ全土で冬の風物詩となっています。冬にバルセロナを訪れレストランで食べたという人もいるのではないでしょうか。

バイスのカルソタダ祭りへ!

カルソッツ発祥地、バイスでは1982年からカルソタダ大祭、Gran Festa de la Calçotadaが開催されていて、その歴史は40年以上。毎年1月の最終日曜日に開催されます。何年か前から訪れたいと思っていて今年やっと実現しました。

今年のカルソタダ大祭のプログラム

バイスへはバルセロナからの直通電車で訪れました。電車の時間が少ない上お祭りは午後2時までには大体終わるので、まだ真っ暗な時間にバルセロナを出発し、1時間半強で到着です。

バイスの鉄道駅

会場のある町の中心までは徒歩10分弱です。まだお祭りの開始前なので町はひっそり。主催者がカルソッツをもうグリルし始めていて、近くの通りにも煙が充満して白っぽくなっています。

煙で白っぽい通り

特産品やそのほかの食品を売るマーケット

何カ所かにちょっとしたマーケットがあり、オリーブ、干し鱈、ソーセージ、チーズなどのこの手のお祭りではお馴染みのお店が並びます。

カルソッツ入りの丸いパンとクロワッサン。緑色で気になりましたが、カルソタダが控えているので眺めるだけ。

カタルーニャやバレンシア州などでよく見るピザパン風のコカ。左手にカルソッツのコカがあります。

バルなどもカルソッツ・コロッケ、ソーセージとカルソッツのエンパナーダなどのスペシャルメニューを提供しています。こちらはベルモットのバル。カルソッツを焼いて提供しているバルやレストランも多数ありました。

お店ではカルソッツのキャラが!カルソッツのぬいぐるみに惹かれたのですが、日曜でお店はお休み。こういうグッツをマーケットで販売してほしかったです。

カルソッツの品評会とソースのコンテスト

市庁舎前の小さな広場ではカルソッツの品評会とカルソッツのディップ・ソースのコンテストが開催されていました。

Salvitxadaというカルソッツのソースのコンテスト

主にオリーブオイル、アーモンド、ヘーゼルナッツ、トマト、ニンニク、トーストしたパン、ñorasというチリペッパーが入ったソース。家庭やレストランによって微妙にレシピが異なるそう。同じくこの辺りが発祥でカタルーニャ中で使われるロメスコソースと似ています。 

カルソッツの品評会は、束になったカルソッツがずらり。細めのもの太めのもの、下の方が丸っこいもの、緑の部分がすこし茶色くなっているものなどありますが、素人目にはあまり大差はありませんでした。

審査員が品評しています。番号しか見当たらないので生産者の名前を公表せずに審査しているのでしょう。どういうものが美味しいカルソッツとされるのか気になりました。全体的にバルセロナ市内で売っているものより青々していて新鮮に見えました。

味見して比べられたらもっと楽しそうです。

昔ながらのカルソッツの調理を再現

市庁舎前広場からすぐの広場でカルソッツの昔ながらの調理を再現しているというで行ってみました。

カルソッツの山。日本だと地面に直接置いたりはしないでしょうけれど、こちらは誰も気にする様子はありません。

カルソッツをグリルするのに使用するブドウの木の枝も山積みになっています。

昔ながらの赤い帽子とベストを身に着けカルソッツを焼いています。

外が焦げ焦げになるまで焼きます。

辺りは煙でいっぱい。

待ちに待ったカルソタダ!

そして場所を移動して数分行ったところにある農協の駐車場へ。ここはカルソタダをするスペースで、実際にカルソッツを食します。

前もって市庁舎でチケットを購入したので、それを持って列に並びます。渡された紙袋の中にはカルソタダの一式。

こちらが中身の全容。

ビニール袋に入ったまだ温かいカルソッツ、カルソッツのソース、水、ハーフボトルのカヴァ、パン、オレンジ、ビスコッティのようなお菓子、人間の塔博物館の割引券、エプロン。これで15ユーロでした。

カルソッツのビニール袋を開けるとアルミホイルに包まれたカルソッツが出てきました。実はカルソッツを食べるのは今回が初めてで、思ったより焦げている印象。

外皮を剥いて食べてみるとなるほど、水分たっぷりでとろけるようなネギ。日本のネギよりもネギの風味は控えめで甘く普通に美味しいです。ソースは意外と味が控えめ。ナッツの風味が◎ですが、もう少し味が付いていても良い気がしました。結構単調で4本くらいで飽きてきたので正直1人でこの量は多かったです。2人でそれぞれ1つ購入したので、1セットはお持ち帰りとなりました。

カルソッツは特有の食べ方があるので、こちらの女性のビデオでどうぞ。空を仰いで食べるのがお決まり。

手袋持参のグループもちらほら。かなり焦げていて素手で外皮を取るとなるとかなり真っ黒に汚れるので、なるほどと思いました。

11時開始に合わせて行ったので最初は空いていましたが、30~40分もするとこの人出!

グリル一式があって主催者がカルソッツを焼くのかと思えば、一般の人が持参した肉を焼くグリルでした。カルソッツを焼いている人たちもいて、材料や飲み物を全て持参してグリルだけ借りるという裏技なのでしょうか。

この場所で肉類を販売していなかったのが残念。あとは手袋、ワイングラス、ウェットティッシュがあったら良かったです。

キリスト生誕の再現模型もカルソッツ

クリスマス前から2月初めまで飾られるキリスト生誕の再現模型、ベレン。バルセロナのクリスマスの記事で紹介しています。

人間の塔博物館に大がかりなベレンがあり見学してみました。一見普通のベレン。

生まれたばかりのイエス・キリストのシーン。

畑をよく見るとカルソタダをしています!さすがカルソッツ発祥の地。

地中には地獄のシーン。ベレンで地獄のシーンは初めて見ました。

なかなかユーモアに富んでいて、今まで見た中でもトップ5に入るベレンでした。

「イッテQ」で宮川大輔がチャレンジ、カルソッツ大食いコンテスト

そして待ちに待った「イッテQ」でも紹介された大食いコンテスト。大きな広場で開催され凄い人出です。

広間の真ん中にはコミカルな顔のカルソッツのヒガンテ(巨大人形)がいました。

ユネスコの無形文化遺産になっている人間の塔で知られるバイス。コンテストの開始とともに披露されました。

20人ほどの挑戦者で、細い人から大きい人、女性まで十人十色です。

焦げている外皮を剥かないといけないので手もあまり休められません。

空を思いっきり仰いで食べる人は見ていて気持ちいいです。

ポロン(porrón)と呼ばれるカタルーニャ発祥のグラスから赤ワインを口を直接付けずに仰ぎます。これもカルソタダのお決まり。水もありますが赤ワインを飲んでいる人がほとんど!

最後の方はかなりペースが落ち、終了5分前くらいにはギブアップの人も。ラスト10秒のカウントダウンです。

優勝者はムキムキのこの男性。

この手のイベントはスペイン語ではなく必ずカタルーニャ語なのでちょっと定かではありませんが、1000グラム代からはじまりこの男性は3000グラム代ほど食べたよう。

いつも訪れるような地方のお祭りは外国人はほとんどいないのにも関わらず、このお祭りに限っては外国人がかなり多く日本人も数人見かけました。バルセロナの英語の情報誌にもこぞって載っていたので外国人コミュニティである程度知名度のあるお祭りようです。

初めて訪れたので全体的に楽しめました。規模もそれほど大きくはなく、日曜日の半日だけのお祭りなので存分に楽しめないのが残念。そして、もうちょっと食べ物やグッズを売るお店があっても良かったなと思います。


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