【連載小説】転送少女症候群、もしくは黍島柘十武の長い回想 #09
大学に行っても、僕は、まるでうわの空でした。
授業では、講師がいつもの真面目そうな顔で、この世の決まりを話し続けていました。それを真剣に聞いている学生がいました。食堂では、誰かが笑っていました。あちこちで何気ない会話が聞こえていました。皆が皆、当たり前の日常を生きていました。
でも、僕の日常は、遊が引き裂いた。その裂け目からこの世の秘密が、暗い液体が、滝のように流れ出して、僕の身体を濡らしていました。
日常はフィクションだった。それが単なるフィクションだったとして