読書はたのし「白痴」(ドストエフスキー 木村浩訳)
春夏秋冬些事である。熱帯雨林でもドストエフスキーだ。
オラつきウータンで登場した。
当然である。来たのだ。
わたくしの元に。
ドストエフスキーが!
正確には、文豪とアルケミストというゲームキャラのドストエフスキーが来た。
誰だ「それは来てねえ。液晶挟んでる」とか言うヤツは(枝を揺さぶる威嚇行為)。
わたくしがこのドストエフスキーをゲットするために書いた記事を見ろ。
ほら、無関係に通帳が紛失されているだろうが!
これはもう、キャラのモデルたるドストエフスキー先生の著書を紹介する他あるまい。
それもマイベストドストエフスキーだ。
ドストエフスキーが乱立して訳がわからんだと!? 文アルをやれ! わかる!(木の枝を揺さぶる)
「白痴」(ドストエフスキー 木村浩訳)
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例によって多様な訳が出ているドストエフスキー先生。
各々お好きな訳でご覧あれかし。わたくしは木村先生訳で読んだ。
あらすじ。
無垢な美青年ムイシュキン公爵。
その無垢を知力の劣等と見なされ、精神療養所に入っていた彼が、ロシアに帰国したところから物語は始まる。
冒頭の列車で、悪性の象徴的俺様系美青年ロゴージンに「おれはあんたにほれちまったよ」と初対面で告られるのを発端に。
無一文の身を老将軍に預かられたり。
小心者かつ嫉妬深い男の憎しみが愛に変わったり。
相続問題でもめた美少年を素で籠絡したりする。
純真天使系美青年総受BLである。
ん? なぜ嘘つきやがってなどとおっしゃるのか。
もしや、網膜に深淵を貼り付けておられぬのか。
お気の毒に……。
気の毒すぎるので、「ゴールド・フィンチ」(ドナ・タート 岡真知子訳)より表現を借りる。
「この主人公はいつもいいことをしているのに、そのせいでいつも悪いことを引き起こすんだ」である。
記憶に頼っている故、少々文章が違うやもしれぬ。ご容赦.
さて、重要な話をしよう。
BLに女が入っていいか問題だ。
この問題はあまたの学級会を引き起こし、注意書きに「モブ女が迫るシーンがあります」とPixivキャプションに付けさせ、あげく公式ヒロイン登場が地雷という猛者まで登場する重要度である。
わたくしの好みを言えば、受には女にモテてほしいし。むしろ毎週違う女と寝ていた過去がある受が大好物なのだが……。
この問題は「俺の好みだから言わねえ」で済まされぬだろう。
わたくしも「Sな男の娘責めと見せかけてMでおぼこい女が受でした」という展開なら、先に言ってほしいのが本音である。
何の話かわからない? わからないままの方がよい。
要約。
ムイシュキン公爵もロゴージンも、ナスターシャという女に惚れるのだ。
ムイシュキン公爵は毎週違う女と寝ていない。
が、ナスターシャは毎週違う男と寝てそうである。
ナスターシャを奪い合うムイシュキン公爵とロゴージンの愛憎が、この小説の骨子である。
ここで重要なのは、愛憎しているのはロゴージンからナスターシャへの感情であることだ。
ロゴージンからムイシュキン公爵へはひたすら愛である。
恋敵なのにどうなん? と思う。
いや、一応ちゃんと恋敵っぽい嫉妬はする。
する。するのだが。
私と結婚したかったら10万リーブル持っておいで!とロゴージンに告げ。
ロゴージンが必死にかき集めた10万リーブルを、火の中に投げ込んだナスターシャの強烈さ。
比べると……。
その……。
……ムイシュキン公爵への嫉妬……かすむ……。
むしろナスターシャへの「愛する者よ死に候へ」的感情にやつれたロゴージンの。
救済者がムイシュキン公爵だと思う!!
BLだと思う!!!
ムイシュキン公爵もムイシュキン公爵で、破滅するために生きているようなナスターシャを救いたいという気持ちが、恋愛感情の元であり。
共に破滅へと転がり落ちていくロゴージンも、もちろん救いたい対象だ。
なので、愛憎渦中の恋敵同士でありながら、十字架を交換したりするのである!
マリみてじゃねえか!
このシーンがしこたま燃える。
詳しくかつネタバレを防ぎつつご紹介申し上げる。
ナスターシャへの愛憎にやつれたロゴージン。
心配して家を訪れたムイシュキン公爵に告げる。
ナスターシャが愛しているのはお前だと。
二度もナイフに目を向けるロゴージン。
怯えながらも、ナスターシャとロゴージンの結婚生活が幸福であるようにと、祈りを捧げるムイシュキン公爵。
「きみの恋は憎しみと少しも区別がつかないものなんだね」
ムイシュキン公爵は去ろうとする。
ロゴージンは引き留める。
ムイシュキン公爵は、落ちぶれた元兵隊がだまそうとして売りつけてきた、すずの十字架の話をする。
ロゴージンはその十字架と自分の黄金の十字架を取り替えてくれと頼む。
2人は十字架を取り替える。
「これで兄弟の契りができたじゃないか!」
ばっさばっさばっさ。
失礼。何度読み返してもツボすぎて、枝を揺さぶってしまった。情緒不安定だが威嚇ではない。
都合よくBLに編集もしていない。
BLに見えた、おかしい、けしからんと思われたのなら、あなたの網膜の問題だ。
深淵の芽吹きである。
されど省略はしてある。
なぜなら、ドストエフスキー先生は丁寧に丁寧にこのド耽美シーンを描かれている。
具体的には、46ページにわたって描かれている。
46ページの耽美だ! 味わえ!(激しく枝を揺さぶる)
このように最高のBLである。
シベリアに流刑されていくロゴーゾンの胸にあった、スイスの療養所で微笑む白痴。
救済者ムイシュキン公爵。
やつれた2人の再会が、わたくしの網膜にはっきり映る。
はっきり映る。ただしこの3行はわたくしの妄想である。
とかくこれだけは伝えねばなるまい。
妄想を超えて、文アルのドストエフスキーは素行が悪かった。
CV.森久保祥太郎(オーフェンの声の人)だった。
この粗暴な博打狂、美青年大好きなんだよな。
と、妄想(公式でない)してニヤニヤするためにこの「白痴」、いかが?
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