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【エッセイ】夕方の店当番#8
おめでとう。ある日僕は初めてお寿司を完売できました。フードロスのない喜びと自分は商売が向いているんじゃないかという自己肯定感で幸せでした。
でも気づいたのです。
お寿司が完売するということは、僕の賄いがなくなるということ。そして無料でヨーグルトをもらう口実がなくなるということ。お寿司を完売しても僕にボーナスは出ないということも。
完売のジレンマが生じました。
もうそろそろお寿司当番につい
【エッセイ】夕方の店当番#7
魚や動物の命を奪って、最終的に行き着く先がゴミ箱なのは虚しすぎる、せめて他の生物の糧となって欲しい。
この頃、売り物のお寿司の廃棄が目立つ。これをどうにかしようかと悩んでいたら救世主が現れた。
後ろから、隣のアイスクリーム屋さんの店員さんが話しかけてきた。ブロンズヘアの美人のお姉さん。名前はイリーナというらしい。僕らは軽く世間話をした。
「もしお寿司が余って廃棄するつもりなら、私たちに無
【エッセイ】夕方の店当番#5
枯れ葉が風に引きづられて、地面這いつくばう。放課後の四時過ぎあたりは小学生から高校生までの子供その親で、隣のアイス屋さんが賑わう。
「こんな寒いのにアイスか」
目元を覗けばフリーザーに入っているお寿司。どちらもあまり変わらない。お茶漬けでも提案してみようかな、、、
僕のお寿司屋さんはメルボルンで高級住宅街の部類に入る街で営まれている。ほとんどの子供がクレジットカードを持っている。僕は大学生にな
【エッセイ】夕方の店当番#4
僕の働くレストランはお寿司販売を始めて、「寿司売り当番」「寿司メーカー」の二つの雇用を新たに生み出した。当然今までの人数で賄えるわけもなく、新しい従業員を雇った。そして来たのが「おばちゃん」です。おばちゃんは以前お寿司ショップで働いてた中国人で、寿司も握れて寿司の販売もできるハイテクおばちゃんでした。いつもニコニコで面倒見もいいです。僕は中国語を一年だけ勉強していたのですぐに気に入ってもらえまし
もっとみる【エッセイ】夕方の店当番#1
静寂の始まる午後3時から5時のたったの2時間。僕はお寿司の店頭販売をする。
メルボルンに来て1ヶ月目の時に、家賃を払うのに十分な収入がなかった僕は、中国人が経営する日本食レストランで働くことになった。給料は時給$20。この国では決して高いと言える金額ではないが、経験重視のこの国で、尻の青い19歳の僕にとっては、労働機会を与えてくれるだけ有り難かった。レストランなのに賄いもない。他のレストランで