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Sagesse Sauvage〜サジェス・ソヴァージュ〜 〜内気で開放的なクオリアと自由意志のフラクタル〜 4章 13年前の佐藤ツヨシの思考

4 世界の中心でアイを叫んだケモノ  ― she cried at the center of her world. ―

その人がどう世界を認識していくのか。それはクオリアの範疇であり、その認識された世界に降り立ち、振舞うのがアイデンティティである、ということをこれまで述べてきた。僕がクオリアによって認識した世界の中で僕は「ある僕」として振舞っているのだが、僕らは内部にあるそれぞれのクオリアの差異によって世界認識が違うため、全てをわかりきることができない。しかし、言葉や振る舞いや経験を通して、わかりあおうと不断の努力を重ねている。全てがわかる世界であれば、人間の努力はなにも生まれなかったのではないか。クオリアとアイデンティティの違いが世界認識を可能にしたとも考えられないだろうか。そして、世界認識の違いが僕らを知への旅に誘っているのではないか。自分の世界を周りにも認識して欲しいがために、人間は知への旅に出て、他の世界とつながっていこうとするのではないだろうか。

4−1 自分という名の何かについての三位一体モデルを通しての一考察

― trinity in my world attacks to you!! ―

またしても、よくわからないキーワード が登場した。三位一体モデルがそれである。三位一体モデルとはキリスト教に由来した考え方である。しかし、キリスト教の難しい話は一切出てこない ので安心して読んで欲しい 。

三位一体という発想はキリスト教に強く見られる思想であり、一種の思考モデルである。簡単に説明すると、<父><子><精霊>の三つの組み合わせである。中沢新一は著書「三位一体モデル」において、この図を3つの円のベン図によって表現している。では、この三位一体モデルを構成する要素を簡単に説明していこう。まず、<父>とはあるものごとに一貫性や永続性や同一性を与える原理のことである。次に<子>とは神(三位一体モデルでいう<父>)と人間(世界)のあいだをつなぐ媒介のはたらきをするものである。最後に<精霊>とは<父>と<子>の働きによって価値を増殖するものである。<精霊>=「価値を増殖するもの」とはなんだろうか。それは「父」が与える意味によって変わるのである。つまり、<父>が与える原理を増殖していく、ということになる。例えば、「資本主義」という原理(父)を子(資本主義を勧める人々)が媒介になって我々(資本主義という考えを受け取る人間)に伝える。そして、その<父>と<子>の働きによって、新たに資本主義というものに溶け込んでいく人間が増え、資本主義の価値が増殖(=資本主義が発展)していく。また、教育というモデルで考えると、「教育内容という父」が「教師という子」によって生徒に伝えられ、「教育内容を伝えられた生徒という精霊」が増殖していく。このようになにがしかの事柄をこのモデルに当てはめて考えることも結構楽しい、のかもしれない。

では、僕をこのモデルに当てはめて考えるとどうなるだろう。僕の思想(思考)を「父」、行動する僕を「子」とすると、サブゼミや授業で発表した僕の考え、アイデア、思想は「精霊」として増殖していくことにならないだろうか。僕自身が所有する知識・思想が増殖し、洗練されるとともに、僕から出た知識・思想がみんなに伝わることによって、僕の考えを持った人も増殖し、その人の中でもその知識は増殖していく。無論、僕の考えを持った人の中で全てが肯定的に増えていくのだとは考えない、否定的であれ何であれ 、頭の中に僕の考えが住み着くことによって、精霊は増えていくのだ。

続く

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