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「AIR JAM」が鳴らした、”未来”への号砲

【9/9(日)「AIR JAM 2018」 @ ZOZOマリンスタジアム】

僕たちは「AIR JAM」という伝説のイベントに、エアジャム世代のアーティストと観客たちが築いてきた、燦然と輝く歴史を想い重ねてきた。

しかし、今回の「AIR JAM 2018」は違った。

青春と栄光の「過去」を顧みるため"だけ"ではない。

そして、2011年以降の「AIR JAM」がそうであったように、数々の災難が阻む「今」を鼓舞するため"だけ"でもない。

「過去」と「今」を繋ぎながら、これからも続いていく物語の「未来」を見据える。

今年の「AIR JAM」に漲っていたのは、そんなポジティブなバイブスだったように思う。

The Birthdayのチバユウスケは、ステージ上で「まさか『AIR JAM』に出ることになるとは」と呟いた。

2000年代はじめの音楽シーンには、大きく二つの潮流があった。一つは、Hi-STANDARDをはじめとするパンク/メロコア勢の台頭。そしてもう一つが、チバが率いるミッシェル・ガン・エレファントが中心となり巻き起こしたガレージ・ロックのムーブメントだ。

当時、決して交わることのなかったように思えた両者が、長い年月を経て、同じステージで邂逅する。

日本最高峰のラウド・ミュージックのフェス「AIR JAM」は、ジャンルの壁を越えて、その先の新たな可能性を模索しているのだ。(その意味で、KOHHのステージも今年のハイライトであった。)

そして、このフェスが越えようとしているのは、ジャンルの壁だけではない。

トリ前という重要なスロットを担ったのは、04 Limited Sazabys。

彼らは、あの会場に集ったハイスタ世代の"次の世代"を代表する存在としてステージに立った。

「もうやるしかない」というGENの決死の覚悟は、極めて鮮烈でありながら、誰一人置き去りにしない包容力を兼ねたバンドアンサンブルを生んだ。

「AIR JAM」の精神性が、たしかに受け継がれていることを証明するステージングに、心を動かされた人は多かったはずだ。

そして、Hi-STANDARD。

「ジャンル」と「世代」の壁を越えていくという、今年の「AIR JAM」のテーマは、やはり3人の力強い意志に裏打ちされていた。

パンクロックの未来へ、これからも突き進んでいこうとする彼らのその姿勢に、僕はとても感動した。

そして、多くを語らずとも、しっかりと大切なことを伝えてくれる歌と演奏に、ひたすら興奮した。

18年前のマリンスタジアム公演から今日に至るまでの間に、変わってしまったことは、数え切れないほど多いかもしれない。

失くしたもの、忘れてしまったもの、もう取り戻せないもの、それでも、だからこそ新たに得られたものもある。

そうやって一つずつ年をとっていく僕たちは、「輝くことを忘れないで」と伝えてくれるHi-STANDARDのロックを、これからも求め続ける。

そして、求め続けてもいいんだと、今回の「AIR JAM 2018」を観て思うことができた。

アンコールの"mosh under the rainbow"は、「未来」に向けて鳴らされたからこそ、3万人の心を一つに繋ぐアンセムとして響いたのだろう。


※本記事は、2018年9月19日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

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松本 侃士
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