魂の殺人
※かなりえぐい性的表現ばかりです。苦手な方は読まないことをお勧めします。
私は二度殺されてる。
処女は高1の時に男友達に奪われた。捧げたんじゃなく、奪われた。
その頃私は、彼女がいる人を好きになってしまって、でも人の幸せを壊してまで自分の幸せを手に入れたいとはどうしても思えなくて、その人に気持ちだけ伝えて、自分から連絡をしなくなった頃だった。
落ち込む私に、新しい恋しなよって、友達に紹介されたのが、その男友達だった。
その子とは、映画を見に行ったり、何度かデートらしいことはしたけど、友達から発展することはなく、でも何となく他愛ない連絡を続けていた。発展はないと分かっていても連絡を続けていたのは、失恋の痛みから目を背けたかったからなのかもしれない。
「ちょっと悩みがあって、相談乗ってほしくて」
そうメールが来て、学校帰りにその子の地元に会いに行ったのは、11月の半ばだった。静かな所で話したいって言われて、彼が漕ぐ自転車の後ろに乗って、気づけばどんどん人気のない所に進んでいった。
自転車を降りた所は一面田んぼだらけで、その田んぼの奥の、四方のうち1箇所だけ壁がない納屋のような場所。
その日は、まだコートを着るには早くて、でも、カーディガンがないと寒い、そんな気温だった。
何でこんな所に?と一抹の不安を感じて振り向く。
その瞬間、無理矢理キスされた。
私の頭を掴む手を振り解いて、顔を背けると羽交い締めにされて、一段高くなっている板の間に押し倒された。
何で?って、友達だよね?って、ずっと頭が混乱してた。
こんな広々とした田んぼの奥で、助けてと叫んでも、誰も気付かない。
暴れても、男女の力の差は歴然で、押さえつけられれば、身動きも取れない。
柔道をやっていた彼の身体は大きかった。
脱がされていく制服、下着、雑に扱われる身体。
入る瞬間、やめてって泣いた、でもやめてくれなかった。
痛い、嫌だって泣きながら、無理矢理押し込まれて、寒空の下で私は処女を失った。
彼は別に私のことを好きなわけでもなかった。
ただ単に性欲の処理のために、都合のいい存在だったのが、知り合って何度か遊びに行く程度の仲の私ってだけだった。
幼い頃から親の愛情に飢えて育った私は、いつか出来るであろう、大好きな彼氏とセックスをするのが憧れだった。
痛いって聞くけど、きっと愛しい痛みになるんだろうって思ってた。
その夢はあまりにもあっさり打ち砕かれた。
その男友達を紹介した友達に責任を感じさせたくなくて、誰にも相談出来なかった。恋愛に発展しなくても、気兼ねなく話せる男友達だと彼を認識していた私にとって、裏切られたという気持ちは強かった。初めてのセックスがレイプでしかも外なんて、これ以上ないくらいの辱めだった。
汚れてしまったと思った。こんな身体を誰が愛してくれるんだろうって。癖になっていたリスカに拍車がかかるようになった。
それでも、そんな私の事情を知った上で、好きだと言って、付き合ってくれたのが、高2の春に出来た彼氏だった。
それからしばらくは、高校生にしては遠距離恋愛ながらも、穏やかに生活出来ていた。好きだと言ってくれる人に抱かれる幸せを実感していた。
そんな幸せに大きくヒビが入って、今でも心に治らない傷をつけられる事件が、自分の身に降りかかるなんて、その時は微塵も思わなかった。
私が処女を失った日から、1年後の同じ日に、今度は全く知らない人に車に連れ込まれて犯された。
当時の彼氏の家に行った帰りだった。
去年のことを思い出すのがつらくて、少しでも会いたいって言って、その日塾の予定があった彼氏に気を遣って、私が彼氏の家に行くことを提案した。
彼氏が塾に行くまでの2時間だけ、彼氏の家で会った。
当時の彼氏の家から自分の家までは電車と徒歩で約1時間半。
地元の駅に着いた時には、もう21:00を回っていた。
田舎の夜は暗い、夜中になれば人も車も通らない。
でも、17年その地域にしか住んだことのない私にとって、それは当たり前のことだった。
それでも、なるべく大通りを選んで、歩いて帰路についていた。
視線の先の路肩に黒いワゴン車が止まっていた。
その横を通り過ぎる時に、後部座席の扉が開いて、中年の男性が地図を持ちながら「道を教えてほしい」と声をかけてきた。
私は何の疑問も持たずに男に近づいた。
今思えば1人しか乗っていないのに、何故後部座席にいたのか、不審な点はいくらでもあったのに。
髪は薄く、歯がいくつか抜けていて、小太りの男。
腕を掴まれて、引きずられるように車の中に入れられた。
扉が閉まる。車内はタバコの臭いで充満していたのが強烈に印象に残っている。
混乱と恐怖で身体が震えて止まらない。
肩を掴まれて押し倒されて、ナイフをちらつかせながら、言うこと聞かなきゃ殺すって言われて、怖くて抵抗できなかった。
無理矢理重ねられた唇から舌が侵入してきた。男の口の中は車内同様タバコ臭かった。
ワイシャツのボタンは引きちぎられて、下着は上下剥ぎ取られて、身体中を舌が這いずり回る。
痛いほど胸を鷲掴みにされて、乳首は取れるんじゃないかってほどの力で噛まれた。
身体中好き勝手にいじくり回された後、加害者は私の顔の上に跨って、口の中に無理矢理自分のものをねじ込んで舐めろと言った。
少しでも歯が当たれば頰にひんやりとナイフの感触、恐怖の中で細心の注意を払って必死で舐め続けた。
その後、口内でイカれて、吐き出すことも許されず、飲み込むしかなかった。
精子独特の臭みと苦みが鼻腔と口腔内に広がる。
声を出さずに泣くしかない。
無力感と恐怖と絶望しかなかった。
その後また乱暴に身体中を弄られて、無理矢理足を広げさせられて、中に相手のものが入ってきた。
少しでも力を入れて抵抗しようものなら、平手打ちが飛んできた。
当然、濡れてなんかないから、痛くて堪らないし、奥にも入っていかない。
加害者は私の局部を舐めて無理に滑りを良くして、深く中に侵入してきた。
加害者はゴムをしてなくて、何度も中に出さないでって懇願した、無意味だと思いながら。
案の定中に出された、ケータイで動画を撮られながら。
人生初の中出しだった。
私の性的な初体験は、いつも不本意で無理矢理で理不尽だ。
その後は四つん這いにされて、後ろからも犯された。
私の髪の毛を掴んで、腰を押し付けるように振って、加害者はまた中に出した。
私が頭皮の痛みでうずくまり、動けないでいるうちに、加害者はタバコに火をつけて私の背中に2箇所、その火を押しつけられた。
熱さと痛みで叫んだ。
何のためにそんなことをしたのか、未だに分からないけど、手慣れた犯行から、相手が初めてのレイプでないことは分かったし、犯した相手に所有印を付けるような感覚、いきすぎたキスマークのようなおかしな性癖の持ち主だったのかもしれない。
ことが済んで満足したのか、私はカバンと共にボロボロになったワイシャツの上に制服、下着は上下身につけていない、そんな格好で外に放り出された。
車はサッサと発車した。
ナンバーなんて見る心の余裕はなかった。
大きな黒いワゴン車が遠のいていくのを、地べたにへたり込むように座ってぼんやり眺めてた。
「何でも言うこと聞くから殺さないで」って泣きながら何度も言ったけど、いっそ殺してくれた方が良かったと思った。
立ち上がるのにどれだけの時間を要したか分からない。
制服の前を掴んで押さえながら、何とか家に帰って、すぐお風呂場に向かった。
火傷で痛む背中を庇いながら、全身を洗った。
赤くなるくらい擦った。
汚れを少しでも落とそうと、とにかく随分長いことお風呂場にいた。
その後、また別の恐怖が襲ってきた。
妊娠していないだろうか、という恐怖。
次の日学校に行くふりをして隣の市の産婦人科に行って、緊急避妊薬をもらった。
先生は何か言いたげだったけど、何も聞かないでいてくれた。
それでも、万が一のことがあったらと思うと、生理が来るまで怖くて仕方なかった。
横たわれば背中の火傷が痛む、目を閉じれば鮮明に記憶が蘇る。
でも、誰にも相談なんて出来なかった。
彼氏に話したら、彼氏が自分の家に来させたことを後悔させてしまう、友達にもこんな重い話出来ない、親は論外、警察に言えば親に話がいってしまう、独りで抱え込むしかなかった。
どうしてあの時殺されなかったんだろうって、殺してくれなかったんだろうって思いながら。
今でも悩む。
私はこんな汚れた手でヘアメイクをしていていいのだろうかって。
人を綺麗にする資格があるのかって。
私の唯一の生き甲斐すら奪いかねない、15年経っても悩まされ続けてる性暴力の経験。
それが遠因になって当時の彼氏とは別れた。未だに秋になると悪夢やフラッシュバック、それに伴う過呼吸に悩まされる。大量の安定剤と眠剤は年中欠かせない。仕事は繁忙期なのに、常に寝不足で、タバコの臭いはフラッシュバックのトリガーになり、ヘビースモーカーで身体にタバコの臭いが染み付いてるお客様の対応をした後は吐くことも多々。
レイプは魂の殺人って言われてるけど、本当にそうだと思う。
自分の尊厳と自己肯定感を奪われ、いつまでも苦しみは消えない。
未だにこれだけ鮮明に、五感の全てで毎晩追体験して、魂を殺され続けてる。
それでも、この時期、元旦那や彼氏が支えてくれてきたから、何とか乗り越えて来れた。
その日は、24時間日が変わるまでそばにいてくれた。毎年ディズニーに連れて行ってくれて、楽しい日に変えてくれた。私が学校や仕事の時にはなるべく近くのカフェとかカラオケで何時間も待っていてくれて、終わったらすぐ会えるようにしてくれた。そうやって何年も工夫してくれて助けてくれたから、乗り越えられた。
それを「(今年は1人で)耐えてほしい」と言われた時の絶望感。
人に耐えてと言われて耐えられる程度のものなら、こんなに長いこと苦しんでなんかいない。多分きっと、私にとって何よりの地雷だった。
その日会えなくてもよかった、ただ心配してくれるだけでも救われたのに。気にかけてくれてる素振りが見えれば、まだこんなに絶望することはなかった。
大切な人だからこそ、どうか寄り添って、理解してほしい。そばにいてほしい。助けてほしい。そう願ったのはわがままだったの?
きっと今日も悪夢を見る。フラッシュバック起こして過呼吸になる。それが怖くて眠れない。だけど、眠らなければ仕事のパフォーマンスは下がる。
素直に助けてって、苦しいって泣ける場所がないよ。
嫌われるのが怖くて、仕事の邪魔になるのが嫌で、助けてって言えない。
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