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老父と娘の"ちょっといい時間"

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認知症の実父と娘の"ちょっといい時間"を綴ったエッセイ。介護の中には、幸せがいっぱいでした。
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2023年1月の記事一覧

お風呂、それは長い長い修行のような道のり②

お風呂、それは長い長い修行のような道のり②

※これは、「お風呂、それは長い長い修行のような道のり①」のつづきです。まだの方は、こちらからどうぞ↓

こうしてやっと、父の入浴がスタート。

服を脱いで裸になると、父は体を流し、粉末の入浴剤を風呂に投入。そして、まずはゆっくりお風呂につかる。

この時、身体が温まっていないと、いつも以上に長~く風呂につかってしまうか、さらにはそれでも温かいと感じられなくて、風呂の温度設定を「ピッ!」とあげてしま

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お風呂、それは長い長い修行のような道のり①

お風呂、それは長い長い修行のような道のり①

認知症になると、なかなかお風呂に入ってくれないという話をよく耳にするが、私の父は入浴好きで、妄想モードが激しい時以外は、基本的に、今も毎日入浴する。

けれど、昨年の夏あたりから、どうやら頻繁に、体の洗い方がわからなくなってきているらしいことに気がついた。

介護している友人の話を聞くと、認知症の進行がとても早い人も結構いるのだが、父の認知症の進行は比較的ゆっくりタイプ。

だから、それは突然そう

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笑顔で始まり、笑顔で終わる

笑顔で始まり、笑顔で終わる

昨日は
最低気温−12℃
最高気温−2℃

朝、起きた時の気温は−10℃くらいだったので、いつもより厚めの5本指ソックスを父に渡す。

暫くして、もう履いたかな?と見てみると…

あれ?まだ全然履いてない。
なんで💧?

見ると、片方を履いて脱いだようだ。

ああ、左右を間違えたのか、と思って見ていたが、

ちょうどその時、父が
「なんだこりゃ?」
と呟いた。

ん?
…あぁっ‼︎

私がうっか

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甘栗

甘栗

縄手通り商店街にある越中屋さん(フルーツ専門店)の天津甘栗、鉱泉せんべい、市田柿の干し柿、落花生。

わが家で、ほとんどお正月にしか買わない可能性が高い定番のお茶菓子です。

毎年、お正月に甘栗を剥いていると思い出すのが、私が幼い頃、両親が2人がかりでせっせと栗を剥き、小さい私が1人でパクパク食べていたと話しながら、クスクス笑う亡母の姿です。

今年のお正月も、早速、父の手が甘栗に伸びました。不器

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未来日記

未来日記

「今日は何日だや?」

そう言うと、認知症の父は、いつものように"三年日記"を開き、腕時計と新聞で今日の日付をチェック。

おっと。1月2日は新聞はお休みだと伝えなければ。

三年日記なので、1月2日のページには、2022年、2023年、2024年の枠があり、開かれた1月2日のページを覗き込んで見ると、2023年の日記は、おや?既に書かれた後のようです。

恐らく、去年の年明けは、認知度が低迷ぎみ

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初笑い

初笑い

父の食欲がない。

お正月2日目。その日もわが家は、お茶からスタート。父が甘栗を食べたそうにしたので、また数個の栗と落花生を剥き、父の器に入れてあげた。

その後、私はカウンターキッチン越しに家事をしながら、リビングの父の様子を見守る。

ところが、父は全く栗を食べようとしない。

暫くすると、少しお茶をすすり、そのままテレビを見る。でもやっぱり、栗には手をつけない。栗だけではない。ほかのお茶菓子

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