初笑い
父の食欲がない。
お正月2日目。その日もわが家は、お茶からスタート。父が甘栗を食べたそうにしたので、また数個の栗と落花生を剥き、父の器に入れてあげた。
その後、私はカウンターキッチン越しに家事をしながら、リビングの父の様子を見守る。
ところが、父は全く栗を食べようとしない。
暫くすると、少しお茶をすすり、そのままテレビを見る。でもやっぱり、栗には手をつけない。栗だけではない。ほかのお茶菓子も、全く食べようとしないのだ。
前日は、お節などをたくさん食べたので、少し食べ過ぎたのかな? そう思った。
結局、暫くしてもお菓子ひとつ手をつけず、しまいには、ゴロンとこたつで横になりはじめた。
ん?
確かに食べすぎているとは思うけれど、何も手をつけたくないほどではないと思うんだけど…
横にはなったものの、これといって具合が悪そうな様子は見られない。
んん??
家事を終えると、私もこたつに入ってお菓子を食べ始めた。すると、父は起き上がってこたつに座り直し、キョロキョロっと並んだお菓子を見たが、やっぱり食べようとしない。
「何にも食べたくないの?」
私が声をかけると、父はもう一度こたつの上をチラッと見まわしてから、普通の顔をして静かにこう答えた。
「入れ歯がねぇんだ」
🤣‼️
父の入れ歯は、就寝前に、私が父から回収して洗面所で洗浄液につけ、翌朝の朝食前に、洗ったものをこたつの上においてあげるのだ。
普段も、食パンをかじってみたら入れ歯がないことに気づき、コタツの上にも入れ歯が見当たらないと、無言のまま、あれ?ねぇなぁ…みたいな顔をしている父を見て「ごめんごめん。今、入れ歯もってくるね。笑」となるのだが、
今回は柔らかいパンではなく、しっかり噛まないといけない栗だったからか、噛む前から入れ歯がないことに気づいたのだろう。
こうして今年もまた、愉快な介護ライフがスタートした。
ちなみに、入れ歯を装着した父は、まだ食べるの?というくらい、栗もお菓子もた〜っぷりと堪能していましたとさ!笑
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