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書評 ディケンズ「大いなる遺産」イラストエッセイ「読まずに死ねない本」039 20250226

 ぼくが若い頃、1980年代までぐらい、大勢の人が趣味で本を読んでいました。
 今では youtube、SNS、ゲーム、漫画、映画、配信、ストリーミングなど、たくさん楽しいことがあって、読書は廃れたと言っても良いかも知れません。
 ただ面白いことに、SNSのインフルエンサーたちは、しきりに「本を読め」って言いますよね。youtuber が「youtube ばっかり見てると頭が悪くなります。頭が良くなりたかったら本を読みなさい。」なんて。笑

 映画と原作の小説とどっちが面白いか論争(笑)というのがあって、原作の方が面白いという方が優勢みたいです。
 面白いですよね。ハリウッド映画は、素晴らしい俳優、SFX、豪華なセット、天才的な監督、美術担当、音楽担当が巨額のお金をかけて制作します。
 一方読書は、登場人物のデザイン、演出、情景のセットなんかも全部自分が頭の中でやる。その自分というのは天才でもなんでもない。
 それでも原作の小説の方が面白いなんて。

 読書は頭も良くなるし(笑)、面白いし、安くて手軽だし、最高の趣味だと思います。
 SNSのショート動画は、時間をただつぶすだけです。何にも残りません。集中力も損なわれるし、良いことは一つもありません。
 みなさん、本を読みましょう! 笑

 さて今日ご紹介するのは、ディケンズです。
 ディケンズは稀代のストーリーテラーですね。当時はエンターテイメントとして読まれていました。
 出てくる登場人物が個性的で面白い。花嫁衣裳を着たまま年老いてゆく婦人とか、「クリスマスキャロル」のドケチ、スクルージとか。いわゆる、「キャラが立って」います。
 ドストエフスキイの「虐げられし人々」に登場する少女ネリーは、ディケンズの「骨董屋」のネリーから着想を得たと言われています。
 登場人物がすごく魅力的なんですよね。
 そしてストーリーが波乱万丈で、伏線は必ず回収され、予定調和的にハッピーエンドになる。
 ここが、通俗的すぎて文学的ではないと批判されることもあります。
 あの人は実は○○だった!みたいなご都合主義も満載。笑
 そこがいいんですよね。
 そして時代の風俗の面白さです。ディケンズは、産業革命後のロンドンの風俗を克明に描いています。そこでは既に人間性の疎外が始まっており、労働者階級の悲惨がしっかり描かれています。もちろん、上流階級も描かれますが、そこには批判的なまなざしがあります。

 ディケンズの小説ははまると全て読みたくなります。
 「クリスマスキャロル」「二都物語」「オリバーツイスト」は定番です。「骨董屋」「荒涼館」も面白い。

 今日特におすすめするのが、「大いなる遺産」。
 長さも手ごろで、ディケンズの魅力がぎっしり詰まっていると思います。
 あらすじは、ピップという貧しい青年が大いなる遺産をもらってジェントルマンになってゆくというお話。けれども単純な成功物語ではなく、波乱万丈、悲恋もあり不思議な運命もあいまって、最後まで物語から目を離せません。
 映画もありますよ。比べてみても面白いと思います。どちらが先でも大丈夫です。きっと原作の圧勝という感想を持たれると思います。

オリジナルイラスト ディケンズの肖像


「大いなる遺産」のアマゾンへのリンクです。

映画はアマプラで見られます。


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