trnk83

過去世やちょっと不思議なできごとを、掌編として書いています。

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最近の記事

さよならガーネット

 まさか。まさかね。 チャネリングセッションやクリスタルの販売を始めようとしている私は、ブログで仲よくなったメンバーと、初めましてのランチ会に参加した。  少し離れた土地へ向かうのに、今日のお供にとガーネットさんをポケットに忍ばせて、高速道路を飛ばしてそれはそれは楽しい時を過ごした。  楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕陽を見ながら帰途につく。興奮冷めやらぬ中、公式ラインを返したり楽しい気分のままその夜は終えた。  ふと、朝起きたときに、ラブラドライトとルチルクォーツのイ

    • 青いプレート石

      陽気な旅人 西の魔女からハーブの本やら何やら送られて来たときに、そっと紛れ込んできた青いプレート石。色も形も見慣れない、異質な風貌をしているが、魔女の海外の友人から送られてきた、旅好きな石だ。西からの旅も本人ならぬ、本石が希望してきたもので、旅好きというのも頷ける。  届いた当初は、私も慣れずに距離があった。が、サランラップに包まれて、我が家を望んで来てくれたのだから、せめて名前を覚えようと頑張っていた。けれども、見かけとは裏腹に掴みどころのない名前は、私にとっては難関だった

      • 石たちのキャンプ

        気まぐれな夜に  私は朝起きると、寝室の出窓で休んでいるクリスタルたちを眺め、「さて。今日は誰を連れて行こうかな」と、いくつかピックアップすることから始める。そのままリビングに連れていかれた石たちは、無造作にテーブルに置かれ、朝の諸々を見るともなしに見ているのも、いつもの光景だ。  食事の準備などをしていると、今日は出窓に残した青いプレート石が、どうしてもチラチラと脳裏に浮かぶ。ああそうか、今日は一緒に来たかったのだな。ちょうど娘が2階から降りてきたので、迎えに行ってもらっ

        • 水晶さん

          ある日のできごと とうとう、鉱石界の魔女である友と私、石と精霊たちによる、魔女学校のクリスタルコースが開校した。 それはまた後で話すとして、現代の魔女から、その準備のカードや本、おやつまで詰まった宝の小包みが届いた。  それを開けた瞬間、ワクワクが飛び出してきて、私は一瞬で魔法にかかってしまった。ひとつ手に取っては見終わる前にまた次に手をのばすという、心躍る状態だ。  その中にラップに包まれた鉱石があった。見慣れない、青と黒が混ざったプレート状のものだった。薄い側面には、ザラ

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        • かやの音
          8本

        記事

          青岩と白岩

          川の岩のお話 我が家から車を一時間ほど走らせたところに、とても立派な青い岩の河原がある。夏の暑い時期には、地元の若者が集まって、岩から清流に飛び込んだり泳いだりして遊ぶ姿も良い風物詩だ。  川底が見えるほどの清流に足を浸さなくても、その岩の上ををひょいひょいと超えて進んでみたり、その先にある怒涛の流れを眺めるのもまた良い。  もう何度通っただろうか。毎回新しい発見があり、新たな顔を見せる魅惑の河原。そのほとんどが青い岩なのだが、よく見ると青い巨岩に混じって、白の巨岩があっ

          青岩と白岩

          ローズクォーツと水晶③

          愛の調べ 「君の前世は何だったんだい?」何となく水晶に聞いてみた。すると、ギュッと身を縮め、硬い身体を更に固くし、重くなる。いったいどうしたのだろう。     「どこから来たんだい?」質問を変えると身構える固さが無くなり、ガンダムや宇宙戦艦ヤマトのような宇宙船の中のイメージを伝えてくる。 劇画調のイケメン宇宙人が2人。それを眺めていたんだね。  前世の重苦しい記憶は解除して、リラックスしてもらったところで、更に聞いてみる。 「どうして私のところに来てくれたの?」 する

          ローズクォーツと水晶③

          ローズクォーツと水晶②

          愛の結晶◈ローズクォーツ編    私の愛はローズクォーツでできている。  倒れた父の介護や仕事をどうサポートするかを話し合うために、義姉たちと話し合う日々だった。一時は生死を彷徨う状態だったが、思いの外回復し、今後の生活の場を決めるという大仕事が残る。  義姉はだらしのない兄にはよくできた奥さんで、彼女の気丈さで家庭が回っているようなものだ。私や実姉に対しても、はっきりテキパキと言動をおこす。情けない兄という負い目があるので、どうしても下手に出る私たち姉妹、そんな構図だ

          ローズクォーツと水晶②

          ローズクォーツと水晶①

           おしゃべりな水晶 縁あって、小さな丸いローズクォーツを手に入れた。よくある小石程度の研磨されたものだ。平べったい形の良いものと迷ったが、丸い形に親近感を覚え、決めた次第だ。  ころころと可愛らしい色と形で、光の反射で虹色が浮かぶ。光に透かして眺めてみたり、何となしにポケットに放り込んで、持ち歩いたりしてみる。これまで石に興味がなかった私にとって、初めての天然石である。  そんな小さな石との生活にも慣れた頃、片手に収まるくらいの水晶がやってきた。その水晶はゴツゴツとした四

          ローズクォーツと水晶①

          いにしえの魔女と魔女見習い、出会いのおはなし

           うふふ。小径に面した家の前で幼き少女が笑みをこぼす。彼女の名前はカーリン。石や動物、草花と話すことができる、不思議な少女だ。  道の脇にある、一休みにちょうど良い腰掛け石に声をかけられ、話をしている。 「さっきの旅人はこの僕に靴裏の泥をなすりつけて行ったんだ。こんな迷惑な話はありゃしない!」 カーリンはクスクス笑って、泥を落とす水を汲んできた。 「そんなに怒らなくても大丈夫。私がちゃんと落としてあげるよ。」水とモップで汚れを落とし、これで良いでしょうとひとつ撫でてやる。 そ

          いにしえの魔女と魔女見習い、出会いのおはなし