水晶さん
ある日のできごと
とうとう、鉱石界の魔女である友と私、石と精霊たちによる、魔女学校のクリスタルコースが開校した。
それはまた後で話すとして、現代の魔女から、その準備のカードや本、おやつまで詰まった宝の小包みが届いた。
それを開けた瞬間、ワクワクが飛び出してきて、私は一瞬で魔法にかかってしまった。ひとつ手に取っては見終わる前にまた次に手をのばすという、心躍る状態だ。
その中にラップに包まれた鉱石があった。見慣れない、青と黒が混ざったプレート状のものだった。薄い側面には、ザラメのようなザラザラしたものがついている。
名前は何だか忘れてしまったが、クリスタルの学びで一緒だった魔女の友人が、海外から送ってきてくれたものだったそうだ。
魔女が布団を干していると、自分もこの地の太陽を浴びたいと言うので、一緒に布団に乗せて干してやった。取り込んだ時に荷造りしているのが見えて、何やらモジモジしている。そこで魔女が「行きたい?」と尋ねると「うん。ラップにでも包んでくれ。」と注釈付きで答えたので、はるばる我が家まで旅をしてきたというわけだ。
我が家に到着した青いプレート石は、ぐるぐる巻のラップを外され息を吹き返した。息つく暇もなく、代るがわる家の者に触れられ、珍しいと眺められる。中娘がようこそと撫でた時には、新緑の黄緑色のイメージを返してくれたそうだ。
そんなことをしてから食事を済ませ、お風呂に入り、食卓を片付けずにうっかり子どもと共に寝てしまった。
翌朝、水晶おんじとローズクォーツのローズ女史たちを連れて、何気なくプレート石のところにポンと置いた。
すると、水晶おんじが青い石に何やら語りだした。
「はるばる遠くからやってきたのに、こんな散らかったところで過ごしたのかい。せっかく来たのに残念な経験をしたもんだね。」
それからやたらと視線を感じる。そこに散らかったネギとミョウガの欠片と私を見比べているようだった。
「あ〜はいはい!どうもすみませんでした。すぐに片付けますよー!」おんじ達を安全な場所に移し、さっさとテーブルを綺麗にした。
まさか、石に机が汚いと注意される日が来るとは思いもしなかった。私はテーブルを拭きながら、可笑しくて吹き出してしまった。
居住まいが整った頃には、おんじは今までの長旅の話を聞いていて、もうこちらになど構ってはいない。青いプレート石は、各地を旅するのが好きだったようだ。
水晶おんじは私にとって、なくてはならない存在だ。小言も言うが、こんなに愉快で頼もしい仲間はいない。青いプレート石も、そのうち語りだすだろう。彼の個性に触れるその日が待ち遠しくて仕方がない。
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