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iPhone 16 Proのコピーを考える。
今回の題材は、iPhone 16 Proのコピーです。iPhone 16eの発売が話題になっていますが、iPhone 16 Proと比較してみる方も多いのではないでしょうか。そこで、気になるコピーがあったので改善点を考えてみます。製品の紹介ページはこちらです。
コピーの確認
気になった日本語のコピーと、対応する英語のコピーは以下の通りです。Apple Intelligenceのために設計。
Build for Apple Intelligence.
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意図を考える
とても短い文章ですが、それでも原文の意図は必ず考えましょう。意図を探るにあたって、今回はちょっとした調査が必要です。
「Apple Intelligence」は固有名詞のようなので、これが何を意味するのか調べる必要があります。固有名詞の内容と正式な表記は、必ず確認しなくてはいけません。
Appleのオフィシャルサイトによると、Apple IntelligenceはAppleデバイスで使用できる人工知能(AI)機能とのこと。2024年10月28日からアメリカ英語で初公開され、2025年4月から日本語にも対応するようです。
iPhone 16 Proの発売は、その約1カ月前となる2024年9月20日。少し技術的な話になりますが、iPhone 16 ProはApple A18 Proチップを搭載しています。そして、このA18 Proが、Apple Intelligenceを機能させる上で最適なチップとなっています。
原文の意図が見えてきたでしょうか。iPhone 16 Proは、Apple Intelligenceを使うことを念頭に置いて開発されたデバイスだと言えそうです。そして、発売時点では、A18 Proが搭載されているのはiPhone 16 Proのみ。つまり、Apple Intelligenceをフル活用できるデバイスはiPhone 16 ProまたはiPhone 16 Pro Maxしかないということです。この点をセールスポイントとして、ユーザーに興味を持ってもらう。それが、このコピーの意図だと思われます。
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改善点
考える材料が出そろったところで、翻訳の改善点を探しましょう。
Apple Intelligenceのために設計。
Build for Apple Intelligence.
言うまでもなくドストレートの直訳ですね。いっそ清々しいくらいです。言っていることは分からなくはないのですが、原文の意図を反映できているでしょうか。ただ事実を述べているだけなので、これでは「あ、そうですか」と素通りされてしまいそうです。もっとユーザーに興味を持ってもらえるように、改善の余地がありそうです。
代案
上記を踏まえて、訳文がカラフルになるような代案を考えてみましょう。アンフェアにならないよう、既存訳の文字数に近くなるように代案を考えます。既存訳が全角換算で16文字なので、長すぎたり短すぎたりならないように代案を考えます。
Apple Intelligenceの真価を解き放つ
「真価」は物事の本当の値打ちや、物や人が持つ真の価値や能力を意味します。iPhone 16 Pro以外にもApple Intelligenceに対応しているデバイスはありますが、このAI機能に最も適したチップはiPhone 16 Proに搭載されたA18 Proです。Apple Intelligenceを最大限に楽しみたいなら、iPhone 16 Pro以外の選択肢はないと言う意図が伝わるのではと思います。
また、既存訳にあった句点を削除しました。原文にピリオドが入っているので既存訳にも句点があったのかもしれませんが、コピーとしてウェブサイトに掲載されると句点がない方が読みやすいと判断しました。文字数は、全角換算で17文字です。
「(デバイスが)Apple Intelligenceの真価を解き放つ」という形式なので、Apple Intelligence自体により焦点を当てる場合は次のような代案も考えられます。
Apple Intelligenceが真価を発揮
視点をユーザーに移すと、次のようなコピーも考えられます。
Apple Intelligenceの真価を体感
短いコピーの中でも、わずかな工夫で力点が変わることが分かると思います。
終わりに
今回は、文字数にもこだわって代案を考えてみました。コピーを作ったり翻訳したりする場合、掲載スペースの都合で文字数に制限があることがほとんどです。限られた文字数で最大の効果を発揮する文章を考えるのも、トランスクリエーションの楽しさです。他の訳文を思い付いた方は、Xのリポストやリプライでぜひ披露してください。それではまた!